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二章
re.《188》幻
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「起きろ」
片頬に嫌な刺激が繰り返される。
寝返りを打とうとしたら、さっきまでより強く振動が広がる。
びっくりして目を覚ましたら、真っ白な世界が広がっていた。
摩訶不思議な世界。
しかしこの空間に、見覚えがある。
ミチルはむくりと体を起こした。
驚くことに、気怠さは全くなかった。
そして、ここは夢の中だと気がついた。
「·····なんで·····」
隣に座って、こっちをのぞきこんでいる男に罵倒を浴びせたくなる。
今更なぜと。
頬が熱い。物理的にだ。
あの大きな手が、こっちの頬を叩いていたらしい。
ミチルは大袈裟に両手でそこを押さえつけた。
「ずっと待ってたのに」
近いうちに会いに行くって言ったじゃないか。
思わず飛び出した不満に、翳りのある美青年は鼻先で笑った。
「久しぶりに言葉を交わすからか。痛くもないのに頬を庇って同情を買おうとしているこざかしさも、健気で可愛らしく見える」
「ふてぶてしいヤツめ」とこちらをからかうのは、随分親しげな皮肉だ。
実際、彼はずっと自分のそばにいたのだと言う。
あのぬいぐるみを通して話していたのは自分だと打ち明ける男に、ミチルは限界まで破顔した。
ずっと怖かった。
アレが話さなくなってからはずっと、幻を見ていたと思っていた。
或いは可哀想なものを見るような眼差しを向けられる度。頭がおかしくなったと罵られる度。
サタンはずっと自分のそばにいた。
泣きそうな顔をプライドもなくまた覗き込まれる。
もういいや。
今更こんな顔を隠したって、彼には全部見られてる。
よく聞けと、彼は言った。
「そろそろ別れの時が来たようだ」
「··········?」
相手の白いシャツがたなびくのを眺めながら、ミチルはそっと首を傾げた。
清々しい風だ。
いつの間にか草原には白いつぼみが散っている。
セリフとはとても似合わない、馨しい風景だった。
真っ赤な瞳が遠くを眺める。
彼はポツポツと続きを吐露し始めた。
人は代償と引き換えに悪魔と契約をするという。
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