悪魔皇子達のイケニエ

亜依流.@.@

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二章

re.《187》悪魔

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「·····───」


真っ白な頭で呆然としていたら、不意に視界が開けた。
ハッとして見上げ、青い男と視線が絡み合う。
冷ややかな美形は今ではもう自分を落ち着かせる相手のものだ。

シワひとつないスーツに手を伸ばした。

鋭い目元は軽く見開かれ、迷うことなくこちらを抱きしめる。
ミチルは彼にしがみつきながら嗚咽を繰り返した。

思い出せない大切な思い出が悲しい。
どんなに強く抱きしめられても、何かが無くなったと思い知った。

泣き疲れて眠り、翌日が暮れる頃目を覚ました。

まぶたが重たい。
まだ疲労の残る身体を快楽に預ける頃、なにが悲しかったのかすら分からなくなって、ただ鳴きながら涙を流していた。





部屋には悲痛な喘ぎ声が重なる。
ヨハネスの能力ではミチルのコントロールが上手くいかなくなった。
またあの魔法薬が投与されてから、ミチルの身体には鮮やかな傷が増えた。

  あと、ほんのたった数ヶ月。
神として数え切れないほどの年月を過ごした自分にとっては、ほんの刹那の瞬間の激痛だ。

全てが理想通りになる。
ミチルはルシフェルを忘れ、前のようにコロコロと笑うようになる。
苗床として最適のコンディションも手に入り、まさに理想は現実と成るだろう。

それはミチルにとっても、最も幸せな結果だろうか。


『ずっと会いたかった。』


───愛する人を忘れ、生涯会う事ができない事が、最も幸せであるはずがない。

それは、この自分すら、何よりも恐れていた"無"に還ることではなかったか。
だから今もここで、本来あるべき姿を逸脱し、この自分は存在することを望んでいる。

愛を知って、この悪魔は悪魔ではなくなった。
力を剥奪され、貪欲な支配欲は全てミチルの幸せを祈る想いへと変化した。

権力からも開放された、ただの1人の悪魔として生まれ変わることが出来た。
極悪非道な悪魔皇帝とは思えない、臆病で潔白な愛を知ったのだ。


「力を失って、悪魔としての本能すら弱まったのだろうか」


或いはこれは、愛という力を手に入れた証だろうか。

   ルビーはやつれた寝顔の獣人をじっと見つめていた。

いつまでもこうしているわけには行かないようだ。


「───起きろ」














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