悪魔皇子達のイケニエ

亜依流.@.@

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二章

re.《186》彼

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桃色の瞳は、それにしてはキラキラと輝いている。

(綺麗な人だ)

まだ幼くて、それも獣人の、着飾ってすらいない相手に持つ感想としては、とても変な物だった。

その肌に触れたことを、彼は覚えているだろうか。


「ミチル様は体調が優れません」


甲へ口付けてすぐ、前を遮られる。
一応の儀式は成功だ。
レイモンドに体を支えられているミチルは一言も発さない。
エバンはそっと体を起こし、


「·····この様な姿でミチル様の玉眼を汚したこと、どうかお許し下さい」


先程とは打って変わった台詞を述べた。

我が"唯一"の主──ルシフェルの伴侶であり、彼に愛された相手。
ミチルから漂うマナに触れ、エバンは新しい使命を与えられたことを知った。






「お呼びとあればこのエダン、何処へでも参上いたします」


久方ぶりに自身の脚で立ち上がったミチルは、なんだか見た事のある男前をぼうっと見上げた。

薬の投与は必要がなくなったらしい。
おかげで身体の自由は利くが、そんなことよりも拭えない心配事があった。

ぬいぐるみが話さなくなったのだ。


「お食事はミチル様の好きなものをご用意しましたよ」


他のことなんてどうでもいい。
ベットの中へ潜り込んで、ひたすらそれにすがる。

この部屋の中が自分の世界だ。
それが可哀想なことだとでもいいたげなグレーの瞳も知ったことでは無い。


「·····?」


くの字のぬいぐるみは怒っているようにも見える。

名前を呼びかけて戸惑う。
これを抱きしめるとき、思い描いといたはずの夢が思い浮かばないのだ。
──コレは、いつから自分といっしょにいたっけ?


「ぁ··········」


鈍い頭痛に襲われる。
とめどなく溢れる涙を拭いながら、一心に自分を叱責する。

今、一瞬でも自分は、"彼"のことを忘れていた。

輝く白銀の髪。
瞳は透き通ったルビー色。
しかしどこまでも冷たい色にも見えて、情熱的な真紅だ。
それで。

それで───。


(彼の名前は、なんだっけ·····?)


遠くで、扉の開く音と、人の気配がする。


(·····あれ·····?)












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