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一章
182.爆発寸前の不満
しおりを挟む服を脱いだ時の発狂なんて、威嚇にしてはあまりにも可憐だ。
たまらない。逃げ出しそうな姿もまとめて抱きしめたいなんて冒涜にもなり得る感想を、すんでのところで脳内のみにとどめる。
どうやら新しい主は本気で嫌がっているようだ。
数日前、こちらがいそいそと服を着るのを、彼はどこか安堵したように睨みつけていた。
「·····僕のことが嫌いですか?」
できるだけ悲壮的に項垂れてみせるが、相手は速攻で首を縦に振る。そしてそんな姿さえ愛らしい。非常に困った事態だ。
「悲しいです」
俯いてしばらくしていたら、視線の端の裸足が僅かにこちらへ向いた。
パッと見上げると、ピンクは逃げるように目をそらす。
まさか、罪悪感を抱かせてしまったらしい。
角が上がってしまいそうな口元を抑える。
愛らしくて目が離せない。
触れたくてたまらない手先が無意識に彼に向くが、これ以上近づけば、また嫌われてしまう。
レイモンドは彼の前に跪いた。
「どんな事でも、なんなりと仰ってくださいね」
えっちなことなら尚大歓迎だ。
触れることが目的で手を取ろうとするが、ふいと逃げられる。
やっと口を開いたミチルは一言、
「出てって」
と。
数日間彼の世話をし、通いつめた結果がこれだ。
薄い唇が結ばれるのを見届け、レイモンドは今度こそ自身の胸元を押さえつけた。
レイモンド・アダムス。偉大な支配者の直属の手下であり、天界の宮殿の管理人。
·····実の所、この幼声に拒絶されることすら快感である。
一方、懲りないレイモンドに、ミチルは抱えた不満が爆発しそうだった。
ルシフェルは、正式な結婚前に仕事を片付けるから3日間城を開けると言ったきり、戻ってこない。
今日でちょうど3日目だが、予定通り会いに来てくれるかは不明だ。なんでも、式のあとの数日間に執務を入れないためだという。
結婚のとり直しをして、翌日からまたなにか外せない用事があるのだろうか。
───いや、彼は多忙だから仕方ない。
こちらが不安にならないようにと説明してくれたのに、未だ不満を抱くなんて女々しすぎる。
そんなことよりも今はここにいるレイモンドをどうにかすべきだ。
「どんな事でも、なんなりと仰ってくださいね」。後に続く言葉は「聞くだけで叶えてやるわけじゃないけど」という感じだろうか。
こっちのことをバカにして、喜んでいるに違いない。
それだけじゃない。
朝食に出されたのは少し苦い飲み物と、味の薄いおじやみたいな料理。もう3日もこんなのが続いていて、おなかいっぱいになるまで食べさせられるのだ。
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