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一章
146.地獄の果てまで
しおりを挟む玩具でも餌袋でも、もうなんだっていいや。
きっと怖いだろうけど、最悪食べられてしまったって構わない。
彼らは人間界の家族のように、自分をまるで存在しない者のように扱ったりしない。
しつこく虐めて、逃げようとすれば追いかけてくる。ある者は「地獄まで一緒だ」と、呪いの言葉を囁いた。
恐ろしい反面安堵しているのだから、自分もなかなか異常者なのだろう。
(あれ?)
ベットを飛び降りたミチルは、床の上に光るものを見つけた。
直径1センチ程度の宝石玉だ。
拾い上げて眺めたミチルは、これでもかというほど目を見開く。
見覚えがある。
マゼンタ色のカフスボタン───これはダリアのものだ。
(ダリアが来てた?)
いつの間に?
掃除が入っていない時だから、きっと昨日の夜中だ。
全然気が付かなかった。
ダリアが会いに来ていたんだ。
ミチルは部屋を飛び出した。
ダリアにこれを届けに行こう。走り出す前から鼓動は弾んでいた。
昨日の約束を覚えていて、会いに来てくれたのかもしれない。
そうだったらとても嬉しいし、仮に忘れられていたとしてもなにか用事があったから自分の元へ来たのだ。
自分に会いに来た彼の形跡。愛しくて、そしてとても嬉しくて、今すぐに会いたくてたまらなくなった。
(ダリアに会いたい)
仕方ない奴だと叱られてしまうだろうか。
(もう、良い子はやめる)
怒られてばっかりで褒められなくてもいい。
黙れと言われても彼の名前を呼ぶし、好きだと言いたい。
彼だって勝手に会いに来たんだ。
全てそれで解決するんじゃないか?
ぴょんぴょんと階段を駆け上がり、彼の書斎まで一心に進む。
自分自身を塞ぐレンズが外れれば、新しい世界を見に行くような気分だった。
(みんなに、会いたい·····)
扉の前にたどり着いたミチルは足を止めた。
ほんの少し隙間が空いている。中からはかすかに話し声が聞こえてきた。
扉の隙間からそっと部屋の中を覗いてみる。
執務室にはダリア、ヨハネス、アヴェル、そして壁によりかかったハインツェがいた。
勢揃いだ。
確か初めて彼らを見た時もこうだった。
あの時は恐怖と緊張ではりさけそうな思いで、扉の向こうを覗き込んだのだ。
思い出して笑いかけ、慌てて口を閉じる。
入室するタイミングが見つからないし、もう少し様子を見てみよう。
「あいつを売るんだな」
「···············?」
ニコニコしていたミチルは、聞こえてきたセリフに聞き耳をたてた。
何かを話し終えたダリアに被せて問うたのはアヴェルだ。
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