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一章
109.たくさん
しおりを挟む「·····っ·····」
分厚いぬめりが唇をひと舐めする。
一緒に舌も舐められてしまう。引っ込めようとしたら唇の間からそれが入ってきて、ゆっくりと口内を忍び始めた。
「ぁ·····んぅ·····」
甘い味がする。
咄嗟に首を振る。ちゅぽ、と弱い音を残して唇が離れていった。
「食べる?」
そんなことよりもっとほかに言うことがある気がする。
「も、い、いらない·····」
いるって言ったら、またキスされてしまいそうだ。
ヨハネスの狙いは部屋に連れてくることだったらしい。
だとしたらこんなにスムーズに獲物を誘い込める例は他に無いだろう。
綺麗な顔をして全く侮れない。
長い指がシャツのボタンを解いてゆく。
乳頭が覗くと、シャツをぬがせる行為を中断して、両手がそれぞれ左右を啄み始めた。
「ぁ·····っ」
爪先がくすぐるように先端を掻く。
薄ピンクの突起が主張を強める。体を揺すっても髪へキスを落とされるだけだ。
耳元で濡れた吐息が聞こえた。
(おしりに、当たってる)
なにがとは言わないが、完全に出来上がっている。
天使のような顔からは想像もつかないような凶器を思い出して、心臓が早足になってゆく。
抵抗する理由もないけれど、じっとしているのも恥ずかしい。
どんな仕草も余さず観察されているのがわかる。器用な指先が乳頭だけをこねているうちに、熱くなった皮膚が感度を上げてゆく。
「ぁ·····、ッ·····♡」
ミチルは唇を噛み締めた。
「うさぎちゃん、だめ」
「ゃン·····っ」
上唇に落ちたキスに咎められる。
口元は直ぐに緩んで心細い音をあげ始めた。
しっぽと耳が飛び出たのを合図に、視界が大きくぶれた。
「·····ッ」
ベットに押し倒されて体が沈む。目の前には、シャツのボタンをいくつか開けた胸元。すぐに陰におおわれて、柔らかい舌が口の中を駆け回る。
ヌルヌルの生物みたいだ。
「ん、ぅ·····♡」
どうしたら舌先がこんな動きをするのかは謎だ。力の入らなくなった身体から丁寧に服が剥かれてゆく。
「ん、ん·····♡」
彼の手は余すことなく、滑るように肌を撫でる。
易しくてもどかしい心地だ。
そっと唇が離れた頃、全身に微熱が滞っていた。
「ぁ·····ッ·····あかり、消して·····」
部屋の明かりもベットライトも最大だ。
電気は来る前からこうこうと着いていた。
「だめ」
「·····?」
穏やかな笑みはミチルの要望を却下した。
表情と返事が一致していない。さっきまで乳頭をしつこく弄っていた指先が耳を撫でくすぐる。
「"して欲しいこと"だけ、教えて」
(·····してほしいこと?)
影の中で湖が揺らめく。
うっとりしてしまうほど美しいシアンの瞳だ。
見つめあっていた視線が俯いて、首元へ埋められる。
「·····ッ·····」
首筋へ数回、鎖骨、その少し下へとリップ音が移動する。
胸に触れるかと思った唇はピタリと動きを止めた。
「ぁ·····ッ♡」
突起はピンと立ち上がっている。あと1センチくらいで彼に触れて貰えそうなのに叶わない。
「そこ、も、なめて·····っ」
「·····そこ?」
「·····っ」
いじわるだ。
言わなくてもわかっているくせに。
「·····ちくび·····さわって·····」
薄桃の突起が熱い。
はやく、と、3文字を喉元で飲み込む。
恥ずかしさに震える様子を見て、彼は恍惚と微笑んだ。
「たくさんしてあげるね」
「·····ちくび·····さわって·····」
幼い声があられもない願い事をして、縋るような視線を送る。
こんな姿を他の人にも見せたんだ。
劣等感に飲まれそうな一方で、目の前の光景に、ほかのことを考える余裕すら奪われてゆく。
例えば節々が赤くなった身体。
口付けにとろけて唾液をこぼしていることにも気が付かない口元。
早く触って欲しくて腫れた胸の突起、薄い腹のすじ、その下にある幼児のような局部に、たっぷり濡れた蕾。
全部まとめて口に詰め込みたいほど可愛いのだ。
だから他の人にしたよりも、ずっと恥ずかしくて、自分以外には言えないような願い事を言わせたくなる。
「たくさんしてあげるね」
敏感な獣耳にはできるだけ優しく話しかけて、そっと乳頭に吸い付く。
視界の端で、赤らんだ足先がピンと伸びる。
必死に声を殺していたミチルは、1分もしないうちにニャアニャアと甘えた鳴き声を上げ始めた。
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