悪魔皇子達のイケニエ(番外スピンオフは別紙へ移動)

亜依流.@.@

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一章

106.猫語

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「待て、待て」


今回は思わず抱きとめてしまった。
ミチルは話してくれないから、何を考えているのか、何が嫌でどうして欲しいのかなんて全て分からない。
けれどもしかしたら、抱きしめられたりするのは嫌いじゃないのかもしれない。
それなら、これくらいは許してくれるだろうか。


「ミャッ」


小さいくせに、鼓動は飛び出してしまいそうなほど早足だ。
どこを取っても食ってしまいたいほど可愛い。
猫語でも学ぼうかなんて割と本気で考えそうになる。


「落ち着けって」


ミチルは突如大人しくなった。
猛獣の前で死んだ振りをする草食動物のようだ。
別にいじめたい訳では無いのに───こういう反応が、嗜虐心をくすぐるのだ。


「·····なぁ、お前」


ミチルを眺めていたアヴェルは、ふとひとつの可能性にたどり着いた。













完全に起きているじゃないか。

バレた。どうしよう?
このふたつを頭の中で行き来させる。

いつから起きていた?
相手はあのアヴェルだ。初めから起きていたら、今頃八つ裂きにされている。
ということは、目を覚ましたのはたった今だろう。


(だとしても、無理·····)


「·····なぁ、お前」


それにしても、なぜ彼は未だに自分を抱きしめたままなんだ?


「あー·····デリケートな日ってよ」


死刑宣告なら一思いに頼みたい。


「その、だから、アレだ」


彼は何故か言いにくそうに先をつかえさせて、親指の腹で頬を撫でてきた。


「生理なのか?」

「··········」


歯の生え変わりとか、生理とか。
·····アヴェルは、自分のことが女か子供に見えるというのだろうか?


「ほらお前、膣があるだろ?」

「ひゃうっ」


腰をホールドしていた手が下腹を押す。
相手は手持ち無沙汰という感じだが、大袈裟に声が出てしまった。


「悪い、痛かったか?」

「·····!」


手のひらは、さっきもムズムズしたお腹の下あたりを撫でさする。

初めて抱かれた日から、乱暴な言葉遣いやみんなの前での態度とは裏腹に、彼はこっちを気遣うような言動をする。


「そうならそうって言えよ。口付いてんだろうが」


ミチルは首を振った。
女性じゃないんだから、生理なんて来ない。


「じゃあ、なんなんだ?」


なんでこんなに知りたがるんだ?


「俺にはして欲しいこととか、ねえのかよ」


上体を起こしたアヴェルの上に乗っけられて、また腰を支えられる。
鋭い目付きは元々のようだ。瞳は黄金を溶かしたように神々しい。


(アヴェルにして欲しいこと?)


真面目に考えるが、驚くほど浮かばない。


「·····身体熱くねえか?」


そんなに体調が悪そうに見えるだろうか?
別に健康だ。
それでも、やはり触れられるのは心地よい。

(甘えても、怒らない·····?)

ミチルはアヴェルの胸元にそっとよりかかった。

考えてみれば、彼が自分に本気で嫌がることをしたのなんて、どのくらい初めの方だろう。
なんだかんだ世話を焼いてくれる。腕は肩を抱き、光っていた黄金は閉ざされた。


「·····仕方ないやつだな」


怒鳴り声とは程遠い、静かな呟きが落とされた。















  


翌朝は心地よく訪れた。
まどろみの中で小麦色の壁を見つける。硬いけれど暖かくて落ち着く。

この身体に抱き寄せられたまま、一晩ぐっすり眠ってしまった。


(なにもしなかった)


添い寝しただけだ。
こっちを気遣ってくれたのは明確だ。


そして自己嫌悪に襲われる。
なんだか体がほてって、密着したところを彼に擦り付けたりしてしまった。


『おい、いい加減にしろ』


昨深夜。
夢中になっていたら、背に添えられていた手がついに肩口を掴んだのだ。


『襲うぞ』


ぎらついた視線にドギマギして、その後は大人しく眠るしかなかった。

変態に変態だと思われた。
でも間違いない。お腹の中がムズムズしてから、ずっと淫らな気持ちに耐えていた。

あの時の自分は一体どんなつもりだったんだ。
アヴェルの方を見れない。
ミチルは彼に背を向け、赤くなったり青くなったりしていた。


「·····餌袋?」


ぼんやり目を覚ました男が欠伸を落とす。


「まだ寝てろ」


ポンポンと尻をたたかれる。
片手だけで両尻覆われてしまう大きさだ。

もどかしい気持ちでまた目を瞑る。

ぐー。
のどかな部屋に、突如腹の虫が長く響く。
ミチルは赤面した。










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