悪魔皇子達のイケニエ(番外スピンオフは別紙へ移動)

亜依流.@.@

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一章

52.出会い

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ミチルが自分に発情した。

随分前から感じていた熱っぽい視線だ。
今まで無視していたはずなのに───食べてくれと言わんばかりの甘い臭いに、理性はいとも容易く揺らいだ。

性的なことをするにはまだまだ未熟そうな身体。
純粋無垢な瞳が濡れ、自分だけに熱い視線を向け、彼はベットの上で悶々とする。
下品な媚薬をまき散らし、強者を誘惑して生きのびる、下賎な生き物だ。


小さな身体が熟れて散る様子はたまらなかった。
歯止めも効かず杭を打ち込み、その身体の中に己を刻みつけることに夢中になった。

何者をも跪かせることが出来る自分が、欲望に操られたのだ。

(──違う)

あの哀れな生き物が欲したから、慈悲を与えてやったのだ。

操られたのではない。
この自分が、操り、好きに弄んだのだ。

獣人ごときに振り回されるなどあってはならない。
誰よりも優位に立ってこそ、この座は自分に相応しい。
そうでなければ·····─────。

どちらが上かを思い知らせる必要がある。

(あの卑しい獣人を、躾なければ)

















──────────────











揺すれば音を鳴らす玩具と変わらない。

震える足先に力を込めて絶頂する。
何度も注がれる欲望は熱く、どこまでも冷たかった。









「··········っ!」


目を覚ましたミチルは、勢い余ってベットから転げ落ちた。


「·····ぁ·····っ、」


下半身が重たい。
早朝、彼が自分を置き去りにして出ていったことは覚えている。


"──穢らわしい、出来損ないの獸人が·····"


自分を苛んだ言葉の数々が、古い録音機を流したみたいに、どこからともなく聞こえてくる。


"臭ってくるじゃないか"


(におい·····)


早く彼の部屋から出なければ。
シャツだけを羽織った姿で床を這ってすすみ、ノブに手を伸ばして立ち上がる。

廊下の先を進んだ。
どうか、誰にも見つかりませんように。
けれどジェロンだったら偶然角から出てきたりしてくれないかなんて情けなく願っていると、とうとう膝から力が抜けてしまった。


「はぁ·····ぁ·····」


昨日の恐ろしい男は、ダリアなのか?

何度も打ち付けられた熱。
締め付けるほど痛みを持って、性欲を吐き出すための穴としか認識されていないと分かった。
優しい微笑みを見せたのとおなじ美貌には心底嫌悪を滲ませ、あの声が自分を罵倒した。


"俺はお前が大嫌いなんだ"


「うぅ··········」


涙が視界を遮る。
ミチルはその場にしゃがみこんだきり動けなくなった。
期待なんかして馬鹿みたいだ。
このまま消えて、いなくなってしまいたい。

ふと人の気配を感じた。
顔を上げた先に、ちょうど突き当りから男が姿を現した。
ぼやけた視界でも分かるほど背が高く、スタイルの良い人物だ。彼は1度立ち止まり、すぐに大股でこちらへ近づいてきた。


「どうしましたか?」


片膝を着いた相手が手を伸ばしてくる。
落ち着いた男の声。
出会った頃のダリアと重なった。

そしてハッと我に返る。


「あ·····」


相手を見上げたミチルは言葉を無くした。

その時の表情を誰かに見られたとするなら、まさに"神"でも見たような、とでも例えるだろう。

目元は神経質に切れあがり、眉鼻は一筆に書いたように滑らかな彫を描く。
涼し気な白銀の髪に、薔薇を閉じ込めたような赤い双眸。まばたきする瞬間にこちらの意識が吸い込まれそうだ。
ミチルは口を半開きにして相手を凝視していた。


「君·····どこか怪我を?」

「ひっ」


恐ろしさを感じるほど靱やかな美貌だった。


「ニァ」


ミチルは口元を抑えた。

(どうしよう)

シャツ1枚で廊下の端にしゃがみこんで、情けなく涙を流している。目の前には見知らぬ紳士がいて、こっちを真摯に見つめている。
何が何だか訳が分からない。


「失礼」


次の瞬間、相手は軽々とミチルを抱き上げた。


「ヒック」


心臓が縮み上がって、涙と一緒に引き攣りまで起きはじめる。

逃げないとと思うのに、身体に力が入らない。
男はミチルを抱き上げたまま歩き始めた。

彼のシャツが涙に濡れる。頬を掠めた金具は真珠のように輝いて、とても触れて良い代物では無さそうだ。

服装はラフだが、使用人ではなさそうだ。
部屋の場所を聞かれたが言葉を紡ぐことが叶わなかった。


「ううんと、どうしようかな」


見下ろしてきたルビーと目が合う。
彼からはなんだかいい香りがした。


「ん?」

「ミャ」







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