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〖第三十八話〗
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澄んだ夜空には、いくつもの星が散りばめられていた。
桃源郷のような庭に向けられた碧眼は、しかしそれよりも遠くを見据えているように見える。
『イヴァン様から手紙が来るだけでも、嬉しいの…』
思い出した幼い声に、ステファンはため息をついた。
イヴァンが、彼女を大事に思っていないことは知っていたのだ。
"あんな出来事"になると知らなければ、彼女さえ騙せれば良い──そう思っていた。
『イヴァン様には、充分良くしてもらってるから·····これ以上何かを望むなんて出来ません』
ネロが言った言葉は、あの頃のように黙認することは出来なかった。
彼のイヴァンに対する想いなどはどうでも良いのだ。
大切なのはイヴァンにとってネロが大きな存在となる事。それが、長年待ち望んだ復讐を果たすための鍵となる。
だというのに、なぜあの無邪気な笑顔が頭から離れないのだろうか。
ネロの言葉が、何度も脳内を反芻する。
ステファンは乾いた舌打ちを落とした。
────────────────
イヴァンは数日間の休暇をとった。
休暇中はひたすらネロを愛でた。
今までの二十数年間、一度も求めたことのなかった他人の温もりだ。
細く柔らかな身体は、力で押さえつければ壊れてしまいそうだ。イヴァンはゆっくりと彼の身体を暴いていった。
「ん、ふ·····っ」
口いっぱいに男根を咥え込む小さな唇。初めこそ舌先で竿を舐めていたが、数分後には、ネロは必死にそれをしゃぶっていた。
こちらを気持ちよくさせようと必死らしい。
健気な様子が可愛くて、しかしそんな姿に底なく彼が欲しくなる。
「もっと奥まで·····咥えられるか?」
ネロはこくこくと頷いた。
「んぅ·····っ」
精一杯口内へ押し込もうとするが、ネロのやり方では自分のペニスを全て銜え込むことは出来ないだろう。
「無理するな」
そう告げた声は、普段よりもずっと優しい。
彼の期待に応えたい。ネロは不甲斐なくて、涙を浮かべた。
「イヴァンさま·····」
イヴァンは目を見開いた。
よほど苦しかったのだろうか。
「どうし····」
「どうしたら、いいですか?」
彼の命令が聞けない奴隷など、捨てられてしまう。
喉奥が切ない。ネロは助けを求めるように彼を見上げた。
「イヴァンさまの、口にすると、喉の奥がきゅうってして····」
唇から唾液がこぼれる。
「切なくて、もっと奥·····」
ネロは口をとざした。
なんだか、とてもいけない事を告げてしまった気がする。よく分からない『やってしまった感』を察知してイヴァンを見上げる。
彼はこちらを凝視していた。
「つまり·····どうして欲しいんだ?」
不意をつかれたような表情も素敵だ。禍々しい雄と対比するように、美しい顔が近づいてくる。
身体は、ますます切なさを増すようだった。
「僕の口も、あの、お好きなように····」
とろけきった口内を開いて、ネロはそれを再び咥えこんだ。
来たばかりの頃は、他人と交じわうことさえ知らなかったネロ。そんな彼にはしたない言葉を言わせているのは、紛れもなくこの自分だ。
イヴァンは次の瞬間、ネロの頭を亀頭ヘ押し付けた。
「ん"·····っ♡」
苦しげな喘ぎ声が聞こえる。
イヴァンは慌てて両手を放した。膝の辺りに、ぬるい噴射を感じた。
真っ赤な顔が、呆然とペニスを見つめている。ネロはフェラチオをされながら、潮を吹いたようだった。
「あっ···♡?」
目の前に火花が散っている。ネロは熱い呼吸を繰り返した。
イヴァンに、自分の思いは届かない。この想いは叶わない。
それでも、自分を味わい性欲を発散する彼に喜んでしまう。
今だけの温もりでも構わないなんて、嘘だ。本当はこの欲望を、ずっと自分だけに向けて欲しい。
(そんなこと、あるわけが無いのに····)
腰を引き寄せられる。
ネロの身体は、イヴァンの手の形に歪んだ。
「あ·····はぁ·····♡イヴァ、さま·····──ひゃんっ♡」
熱い舌が胸の突起に吸い着く。
ネロは爛れた声を漏らした。
薄い皮は、手加減しなければ傷をつけてしまいそうだ。
「ネロ·····」
「あ·····ン·····」
イヴァンは何度もネロの最奥を貫いた。
「はぁ♡あ♡あっ♡ぁ♡」
続けて欲を吐き出された孔は気泡を立て、下品な水温をこぼす。
腹がいっぱいになると、大きな手のひらがネロの下腹を撫でた。
「ここで、精一杯俺を締め付けているのだと思うと·····」
冷ややかな雰囲気を放つ男の顔は、心做しか高揚している。
ゴクリと唾液を飲み込んだネロを仰ぎ見て、イヴァンは滅多に見せない笑みをのぞかせた。
「それさえも愛おしい」
彼は自分の想いを知っていながら、こうして甘く嬲り様子を見て楽しんでいるのかもしれない。
彼の言動一つ一つに気が狂いそうな奴隷を見て、遊んでいるのではないだろうか。
(それでも·····)
『愛おしい』
「あ·····~~~っ♡」
拒否権などない。奥を抉った男根に絡みつき、ネロは快楽の波に呑まれた。
長い間熱い鉄を打ち込まれていれば、体に限界が来るのは当たり前だ。
次の日身動きが取れぬほど体が痛む事態に、ネロはしばらくイヴァンへ近よろうとしなかったという。
翌日の昼下がりのことだった。
こっちへ来いというセシルに、ネロは嫌だと言いながら後ずさった。
しかし、もう片方の足は鎖によって繋がれ、既に逃げることは不可能だ。
「私を信じて、身を委ねてください。決して嫌がることはしませんから」
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