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【16話】鉄分多め
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朝食は前回同様鉄分の多いメニューが運ばれてきた。
「教室で待っているよう言ったはずですが?」
守ってもらわなければ困る、と、部屋に来たロイは、早々に千秋を叱った。
「だってさ·····」
昨日のことを説明しようとするが、相手は鼻からこちらの弁解を聞く気は無いようだ。
「言い訳は必要ありません、言われたことを守ってください」
昨夜の恥虐からちょうど10時間が経過した今日、先程の言葉を繰り返すロイに、千秋はとうとう押し黙った。
「分かりましたか?」
形ばかりに口角を上げた彼の目は笑っていない。
鬼畜どもめ。
脳内で文句を垂れながら、ロイに続き廊下を進む。
体が鈍く痛かった。誤魔化すように手すりをつかみながら階段をおり、1階にたどり着いた時、通り過ぎてゆくメイドたちが、不意に廊下の端に留まり、揃って頭を下げ始めた。
「·····?」
腰の前で手を添え、恭しく頭を垂れている。
イスラム教の礼拝のようなものだろうか。
「あれ?」
気付くと、隣にいたはずのロイがいない。
「ロイ?」
皆と同じように道の端へ移動したロイは、千秋を振り返ると、早足でこちらへと戻ってきた。
薄灰色の手が千秋の腕を掴む。
「千秋さんも、彼らと同じようにしてください」
せっかくだが、ついおととい神に裏切られたばかりだ。
よって自分は無宗教主義である。拒否すると、ロイは呆れたような顔をし、千秋の頭を無理やり下げさせた。
ことごとく横暴だ。
抗議しようとした時、大理石の廊下に高い足音が響いた。
千秋は視線だけを持ち上げた。
廊下の突き当たりから姿を現したのは、制服に身を包んだユランだ。
はためくローブがまるで王様のマントのようだ。
召使い達が揃って頭を下げる道の中央を、彼は当たり前の如く進んでゆく。
目を奪われていた千秋は、彼とバッチリ視線が絡み合った。
げ、と叫びかける。
対するユランの視線はあっさり外された。
こちらのことなど全く気にもとめないような態度だ。
千秋は呆然と彼の背を見送った。
「私達も行きましょう」
ロイが先を進む。
馬車に乗り込むと、窓の向こうの景色がゆっくりと流れ出した。
今日も今日とてあの恐ろしい学園にゆく。昨日は庇われたが──。
外を呆然と眺めながら、ふとジュリオを思い出す。
近寄り難い雰囲気とは裏腹に、彼は親切な青年だった。
「·····ねえロイ、ジュリオって吸血鬼なんだよね?どうしてヴィゼル寮にいるの?」
ヴィゼルは、中間高位層から高位層、つまり混血のヴァンパイアの生徒が入る寮だ。
では、ジュリオはなぜヴィゼル寮に分類されているのだろうか。
ロイの眉間が微かにひそめられた。
「···チアキさん、物事を口にする時はくれぐれも注意して発言してください」
また叱られてしまったが、気になるのだから仕方ないじゃないか。
「血筋や身分が関わるような話は、控えるように。今後どうしても気になる場合は、私にだけ聞いてください」
ロイは呆れた様子を隠すことなくため息をついた。
確かに、迂闊だったかもしれない。
「ジュリオ・フォン・ノワール·····最も古いヴァンパイア一族の跡継ぎです。ジュリオはその一人息子だった後継と魔物の娼婦との子供です」
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