アイムキャット❕~異世界キャット驚く漫遊記~

ma-no

文字の大きさ
274 / 755
第十章 王様編其の一 猫の王様誕生

272 視察団の編成にゃ~

しおりを挟む

 コリスにもたれて寝ていると、地響きが聞こえて来て、わし達は飛び起きる事となった。

「モフモフ~。あさ~?」

 いい気持ちで寝ておったのに、うるさいのう。コリスの言う通り朝焼けか? いや、太陽は山に落ちて行っているから夕焼けじゃ。寝過ぎた~!

「シラタマさん! この音は……」
「シラタマ殿に、さっそく仕事ニャー!」
「まったく……起きるとするにゃ。よっこいにゃ」

 リータとメイバイの声に応え、わしは立ち上がって背伸びをしてから探知魔法を使う。だが、使うまでもなく、白くて大きな塊がわし達に向かって来ているのが目に入る。

 シユウが走っておるのか? その前に誰かが走っておるな。いまにも追い付かれそうじゃし助けに行くか。


 わしはリータ達に行って来ると告げると、肉体強化魔法を使って飛ぶように移動する。そして、シユウの目の前に立つと手を広げ、念話で制止を促す。

「止まれ!!」

 わしがいきなり目の前に現れたので、シユウは急ブレーキを掛けるが、止まりきれず、頭を前に体当たりをする。
 わしは両手を前に構え、シユウの頭突きを受け止めると、土魔法で作った足場で耐える。するとシユウはピタリと止まる事となった。

「シラタマ王! 大丈夫!?」
「にゃ? シェンメイ??」

 わしが振り向くと、シェンメイが斧を構えて走って来た。

「あ~。シェンメイ。矛を収めてくれにゃ」
「でも!!」
「この牛はわしの街の仲間にゃ。危険はないから大丈夫にゃ」
「うそ……」

 わしの発言に、シェンメイは今まで気を張っていたのか、へなへなと座り込んだ。シェンメイも心配だが、シユウもかなりの衝撃で止まったので、先に無事を確認する。

「シユウ! 大丈夫か?」
「あ、ああ。これぐらいなんともない」
「ホッ。それはよかった。でも、なんで人間を追いかけていたんじゃ?」
「壁を飛び越えて来たから、悪い者が入り込んだのかと追っていたんだ」
「おお! それはありがとうな。でも今度から人間は、攻撃して来ない限り追わなくていいぞ」
「そうなのか? まぁお前が言うなら従おう。それじゃあ、俺は巣に帰るな」
「あ! ちょい待ち。口を開けろ」

 わしは振り返って大口を開けるシユウの口に、ドーナツ五個を投げ込む。

「うまい!」
「あはは。お駄賃じゃ。ありがとな~」

 わしが礼を言って手を振って見送ると、シユウは満足した顔で帰って行った。その姿を見送ってから、座っているシェンメイに手を差し出して起き上がらせる。

「シェンメイも大丈夫にゃ?」
「え、ええ。でも、あんな化け物を飼っているなら、先に言って欲しかったわ」
「あ……そうだにゃ。みんにゃが来る前に、一度連絡を入れておくにゃ。さて、用件は街で聞くから、シェンメイもついて来るにゃ」
「わかったわ」

 と言って、二人でリータ達の元へ走る。シェンメイも足が速いので、すぐに辿り着いた。すると……

「うわ! 今度は厄災リスがいる!!」

 シェンメイはコリスを見ると、また驚いた声をあげる。

「それは母親のほうにゃ。この子はコリスと言って、わしが預かっているにゃ」
「もう何がなんだか……」

 シェンメイは、混乱してへたりこんでしまった。街には少し離れているので、二号車を取り出して皆を乗り込ませる。
 ちなみにコリスは大きいので、屋根に乗ってもらった。一匹では寂しがるかと思ったが、初めて乗るので、楽しそうに「ホロッホロッ」と言っている。


 車をノロノロと走らせていると、シェンメイが聞いてもいないのに、驚いていた理由を話して来る。
 どうやら、巨大な壁とお堀を見て驚き、壁に登ったら畑に驚き、街に入ると巨大な白い牛に驚き、現在も驚き中らしい。
 興奮してうるさいので、ひとまずリータとメイバイに説明を頼んでみる。

「ですから、諦めてください」
「シラタマ殿のやる事に、考えちゃダメって言ったニャー」

 説明は軽くして、あとは諦めさせようとしていた。まぁ諦めたほうが、早く楽になれるからいいや。

 街に入るとここでも車をノロノロ走らし、シェルターに向かう。わしの街では車は周知されているので騒がれる事はない。白と黒の猫やリスや牛よりも、ショックが少ないのだろう。
 シェルターに到着すると、夕食会議に参加する。皆にシェンメイの紹介をし、報告を聞きながら肉を頬張る。そうして報告を聞き終えたら、シェンメイが何やら尋ねて来た。

「あなたって王様よね?」
「いまさらなんにゃ?」
「なんで住人と同じように、外で同じ物を食べているの?」
「にゃ? 変かにゃ?」
「変よ……え? あたしが変なの?」

 シェンメイが不思議そうな顔で質問するので、わしは他の者に話を振って納得させようとする。

「ヨキは変だと思わないにゃ~?」
「そう言えば、すっごく変です! 普通、王様はこんな所で食べないと思います!」
「ほらね」
「ケンフは変だと思わないにゃ~?」
「えっと……ワフン!」
「にゃんて言ったにゃ~!」
「変だって」
「ノエミが、にゃんでわかるにゃ~!」
「だって私も変だと思うもん。王様と食事なんて、普通できないわよ」

 誰もわしの味方をしてくれない中、シェンメイは勝ち誇った顔でわしを見る。

「ほら~。みんな変って言ってるわよ」
「そ、そんにゃ事ないにゃ! 猫が立って歩いて喋っているより変じゃないにゃ~!!」
「「「「「たしかに……」」」」」
「全員、すぐ納得しにゃいで~~~!」

 わしの発言で、皆、わしが猫である事を思い出し、王の食卓はどうでもよくなったみたいだ。

「自分でも変だと思っていたのね……」
「リータ~、メイバ~イ。ノエミがイジメるにゃ~」
「そんな事を言うからですよ」
「自業自得ニャー」
「そんにゃ~~~」

 リータとメイバイに見捨てられたわしは、ねながら肉を頬張る。その姿を見た二人は、苦笑いで撫でてくる。いちおうは慰めてくれているようなので、ゴロゴロ言っておく。
 そうして二人に撫でられていると、大事な話があった事を思い出したので、皆に話を切り出す。


「さてと、今日は大事な発表があるにゃ」

 わしの発言に、皆、食べながらだが、注目してくれる。

「街の発展にわしが力を使うのは、ここまでにゃ」
「「「「「え……」」」」」

 この発言には、さすがに皆、食事の手が止まった。

「ヨキ。まだわしの力が必要にゃ?」
「えっと……はい」
「そうかにゃ? ヨキはよくやってくれているから、次のジャガイモの収穫も、上手くいくんじゃないかにゃ?」
「収穫は問題無いけど……」
「にゃ~? ヨキなら大丈夫にゃ。もちろん全てをヨキ一人でやらせないにゃ。会議の時に議題をあげてくれたら、にゃんらかの対策を考えるから安心してにゃ」
「……それなら」

 農業担当のヨキは自信が無さそうだが、わしの発言を肯定してくれた。

「ケンフも、壁とシユウが居るから、街は安全だと思うにゃろ?」
「そうですね……シユウ殿クラスが来ない限り、安全だと思います」
「そんにゃのめったに居ないにゃ。もしもの場合は連絡をくれたらすぐに助けに行くにゃ。ほら、わしの力はいらないにゃ」

 防衛担当のケンフもあっさり肯定するが、ワンヂェンが待ったを掛ける。

「水はどうするにゃ?」
「この街にはお堀が三重もあるにゃ。その水を使えば、しばらく持つにゃろ? それにワンヂェンが、雨水をいっぱい集めてくれたから飲み水も大丈夫にゃ」
「本当にシラタマの力は必要にゃいかも……」
「どうしようもにゃい事があれば、わしが手を貸すにゃ。これからは自分達で考え、頑張って、それでも出来ない事にしか手を貸したくないにゃ。そうしにゃいと、街の者が自立できないからにゃ」

 わしの言葉に、皆、黙って考え込む。その沈黙の中、リータとメイバイが口を開く。

「シラタマさんは、これから村の救済を早急に行うから、皆さんを頼っているのです」
「街だけなら、シラタマ殿でも手が回るニャ。でも、国全土を潤すには、手が足りないニャー」
「だから、皆さんの力を、シラタマ王に貸してください!」
「皆さん。シラタマ王を支えてくださいニャー!」

 二人はそう言うと、立ち上がってお辞儀をする。すると皆も立ち上がり、賛成するが如く、拍手を送る。
 わしはと言うと、肉をムシャムシャしながら青ざめていた。

 救済を早急に行うじゃと? 国全土を潤すじゃと? えっと……これって、いまより忙しくなるのでは? 村を回りながらのんびりしようと思っていたんじゃけど……
 各街には各々頑張ってもらって、わしは隠居生活を満喫しようと思っていたんじゃけど……。ひとまず拍手は恥ずかしいから、座ってもらうか。


 わしは全員に座るようにうながし、この話もうやむやにする。そして再燃する前に、別の話を切り出す。

「それでシェンメイは、にゃんでここに来たにゃ?」
「あ、そうだったわね。即位式で忙しいだろうから、セイボク様から手伝うように派遣されたの」
「いや。質素にやるつもりだから特には忙しくないにゃ。それにシェンメイって、にゃにが出来るにゃ?」
「えっ……戦う事が出来るわ!」

 あんのジジイ! 即位式と関係ない奴を派遣してどうするんじゃ! まったく、耄碌もうろくしやがって……

「そうだにゃ~……シェンメイには村の視察に付き合ってもらおうかにゃ? リータとメイバイだけじゃ、わしが王様と言っても信じてもらえないだろうしにゃ」
「「「「「………」」」」」

 そんな生温い目で見なくても、わかっているわ! 猫じゃもん。王様に見えるか!!

「ゴホン! ケンフにもついて来て欲しいんにゃけど、行けそうかにゃ?」
「はっ!」
「いや、質問しているんにゃ。中の警備をジンリーに任せるとして、外の狩り組はどうするにゃ?」
「それも問題ありません。便利屋をしていた者が居ますので、彼に任せれば危険なく、人員を使ってくれるでしょう」
「便利屋にゃ?」

 わしが質問すると、メイバイが答えてくれる。

「狩りや雑用で生計を立てる、東の国のハンターギルドみたいなものニャ」
「ああ。メイバイがそんにゃこと言ってたにゃ。それって、まだ機能しているのかにゃ?」
「私はわからないニャー」
「ケンフ?」
「戦争の際に、全て兵として集められたので、便利屋は散り散りになっているでしょうね」
「にゃるほど……その人も食事会議に入れようにゃ。あとで声を掛けてくれにゃ。ケンフが抜けていいかは、話を聞いてから考えるにゃ」
「はっ!」
「あとは、ついて来たい人は居るかにゃ?」

 わしの質問に手を上げたのは、ワンヂェンとノエミとコリス。どうやら仕事をサボれると思って手を上げたみたいだ。
 自分の仕事は他の者に押し付けるから大丈夫と言われても拒否する。だが、目を潤ませて抱きついて来たので、一度連れて行く事となった。
 コリスはノリで手を上げただけだったけど、目を離すと何をやらかすかわからないので連れて行くしかない。


 こうして視察団も編成され、今日もゴロゴロ言わされて眠るわしであった。
しおりを挟む
感想 962

あなたにおすすめの小説

異世界もふもふ食堂〜僕と爺ちゃんと魔法使い仔カピバラの味噌スローライフ〜

山いい奈
ファンタジー
味噌蔵の跡継ぎで修行中の相葉壱。 息抜きに動物園に行った時、仔カピバラに噛まれ、気付けば見知らぬ場所にいた。 壱を連れて来た仔カピバラに付いて行くと、着いた先は食堂で、そこには10年前に行方不明になった祖父、茂造がいた。 茂造は言う。「ここはいわゆる異世界なのじゃ」と。 そして、「この食堂を継いで欲しいんじゃ」と。 明かされる村の成り立ち。そして村人たちの公然の秘め事。 しかし壱は徐々にそれに慣れ親しんで行く。 仔カピバラのサユリのチート魔法に助けられながら、味噌などの和食などを作る壱。 そして一癖も二癖もある食堂の従業員やコンシャリド村の人たちが繰り広げる、騒がしくもスローな日々のお話です。

狼の子 ~教えてもらった常識はかなり古い!?~

一片
ファンタジー
バイト帰りに何かに引っ張られた俺は、次の瞬間突然山の中に放り出された。 しかも体をピクリとも動かせない様な瀕死の状態でだ。 流石に諦めかけていたのだけど、そんな俺を白い狼が救ってくれた。 その狼は天狼という神獣で、今俺がいるのは今までいた世界とは異なる世界だという。 右も左も分からないどころか、右も左も向けなかった俺は天狼さんに魔法で癒され、ついでに色々な知識を教えてもらう。 この世界の事、生き延び方、戦う術、そして魔法。 数年後、俺は天狼さんの庇護下から離れ新しい世界へと飛び出した。 元の世界に戻ることは無理かもしれない……でも両親に連絡くらいはしておきたい。 根拠は特にないけど、魔法がある世界なんだし……連絡くらいは出来るよね? そんな些細な目標と、天狼さん以外の神獣様へとお使いを頼まれた俺はこの世界を東奔西走することになる。 色々な仲間に出会い、ダンジョンや遺跡を探索したり、何故か謎の組織の陰謀を防いだり……。 ……これは、現代では失われた強大な魔法を使い、小さな目標とお使いの為に大陸をまたにかける小市民の冒険譚!

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう
ファンタジー
 異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。  いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。  その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~

あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。 彼は気づいたら異世界にいた。 その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。 科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。

男爵家の厄介者は賢者と呼ばれる

暇野無学
ファンタジー
魔法もスキルも授からなかったが、他人の魔法は俺のもの。な~んちゃって。 授けの儀で授かったのは魔法やスキルじゃなかった。神父様には読めなかったが、俺には馴染みの文字だが魔法とは違う。転移した世界は優しくない世界、殺される前に授かったものを利用して逃げ出す算段をする。魔法でないものを利用して魔法を使い熟し、やがては無敵の魔法使いになる。

生贄にされた少年。故郷を離れてゆるりと暮らす。

水定ゆう
ファンタジー
 村の仕来りで生贄にされた少年、天月・オボロナ。魔物が蠢く危険な森で死を覚悟した天月は、三人の異形の者たちに命を救われる。  異形の者たちの弟子となった天月は、数年後故郷を離れ、魔物による被害と魔法の溢れる町でバイトをしながら冒険者活動を続けていた。  そこで待ち受けるのは数々の陰謀や危険な魔物たち。  生贄として魔物に捧げられた少年は、冒険者活動を続けながらゆるりと日常を満喫する!  ※とりあえず、一時完結いたしました。  今後は、短編や別タイトルで続けていくと思いますが、今回はここまで。  その際は、ぜひ読んでいただけると幸いです。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

目立ちたくない召喚勇者の、スローライフな(こっそり)恩返し

gari@七柚カリン
ファンタジー
 突然、異世界の村に転移したカズキは、村長父娘に保護された。  知らない間に脳内に寄生していた自称大魔法使いから、自分が召喚勇者であることを知るが、庶民の彼は勇者として生きるつもりはない。  正体がバレないようギルドには登録せず一般人としてひっそり生活を始めたら、固有スキル『蚊奪取』で得た規格外の能力と(この世界の)常識に疎い行動で逆に目立ったり、村長の娘と徐々に親しくなったり。  過疎化に悩む村の窮状を知り、恩返しのために温泉を開発すると見事大当たり! でも、その弊害で恩人父娘が窮地に陥ってしまう。  一方、とある国では、召喚した勇者(カズキ)の捜索が密かに行われていた。  父娘と村を守るため、武闘大会に出場しよう!  地域限定土産の開発や冒険者ギルドの誘致等々、召喚勇者の村おこしは、従魔や息子(?)や役人や騎士や冒険者も加わり順調に進んでいたが……  ついに、居場所が特定されて大ピンチ!!  どうする? どうなる? 召喚勇者。  ※ 基本は主人公視点。時折、第三者視点が入ります。  

処理中です...