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ウソツキ6(非エロ)
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3対3の少数戦──マラークは確かにそう口にした。
つい先ほどまで、わずかにもこの一連の会話に興味すら持っていなかったはずが、たった一言でマラークはその存在感を示した。
大きく両腕を開いて、ケントとハーヴェイの肩へもたれ掛かっているマラーク。
ケントたちは驚きのあまり口を開いてその顔を凝視している──八重歯を見せ、機嫌が良さそうに笑みを浮かべるマラークの横顔を。
突拍子もないマラークの言葉に当事者のケントですら困惑していたが、肩をつかむマラークの手からは、不思議と手の温かみと力強さを感じた。
そんなマラークに相対するように、ルヴィはマラークの言葉にも眉のひとつ動かさずに冷静に言葉を返した。
「まったくもって理解ができんな」
「あ?」
「ケントの望みは矜持(きょうじ)を持って受け入れよう。だがおまえの提案まで受け入れる道理はない」
「提案だ?ハッまだそんな寝ぼけた事をぬかしてやがんのか?」
「──なに?」
「さっきから黙って聞いてりゃ御託並べて矜持だ?道理だ?くせぇもくせぇ。いつからここはお行儀のいい騎士団になったァ?」
「おいマラーク!さすがに言いすぎ──」
マラークの言葉に反応したレックスだが、その言葉をさえぎるようにルヴィは黙って手のひらをレックスへと向けた。
レックスが言葉をのみ込むと、ルヴィは再び口を開く。
「──提案でないなら、なんだというんだ」
「んなもんひとつしかねぇだろうが。賭けだ」
「賭けだと?バカバカしい。おまえは何をいって──」
「ずいぶん慎重になったのはベイガーの野郎に吹き込まれたからかァ?」
その言葉が逆鱗(げきりん)に触れたのかルヴィは目を見開き、広い椅子に置いていた刀を手に取ると、抜刀と同時にマラークへと突き刺そうとした。
──その刃はマラークの目と鼻の先で寸止めされたが、刃を突き付けられたマラークは、まばたきどころか微動だにせずルヴィをただにらみ返している。
そんな殺伐とした2人を、ハラハラと目を見開きながらケントとハーヴェイは隣で成り行きを見守った。
「なにがいいたい?」
「テメェは傭兵かってことだルヴィ」
マラークの脈略のない言葉を、ケントたちは到底理解できなかった。
ルヴィの刀先はマラークに向けられたまま──そしてその場にいた誰もが言葉を発しないまま、ただ音のない時間だけが過ぎていく。
マラークは時折、本人にしかわからない本質をエグるように言葉を吐き捨てる。
この問答をレックスやハーヴェイは、ただの煽り言葉だと思っているからか、ただただ息をのむように困惑した表情をしている。
しかし、マラークがはき捨てた言葉には、何か──強い何かがあるとよぎったケントは、ふと横目で後方へと視界を当てた。
窓際に背をもたれながら腕を組んで立っているグリフ。
いつもヘラヘラしてるグリフが、この時ばかりは口こそ笑っていてもすべてを見透かすような目をしていた。
──きっと、だいじな事なのだろう。ケントはそう思った。
ルヴィという女性が傭兵団の団長になったいきさつも、マラークという利己的で一匹狼のような男が傭兵団という群れに属してる理由も、ケントは知らない。
その理由を知る機会は果たしてくるのだろうか?
ケントが思っているよりも、この2人の関係はずっと複雑で、いびつなものなのだろうか。
互いに沈黙を続けるマラークの目を見ながら、ルヴィはふと昔の記憶が頭によぎる。
森で降り続く雨の中、鮮やかなファイアレッド色の髪色をした少女が、何かにおびえるように大柄な男の裾をつかんでいる。
まるで親子のような大柄な男とその少女の視線の先は、1人の人間へと向けられていた。
はるか前方では、しかばねと化した死者の亡骸がそこら中に転がっている。
その亡骸をただの物だと思っているのか、さびた剣を片手に、しかばねの上で何かを物色している黒髪の少年。
少年の顔にはかなりの生々しい血痕が付着しており、それが死者からふき出した血で、しかばねたちが帰らぬ者となった原因は少年の仕業だというのは一目瞭然だった。
降り続く雨と死者の血が混じり、血の海と呼べるほど赤い水たまりがそこらかしこにできていた──無残な光景。
黒髪の少年は少女と男の存在に気づいた。
少年は小さく舌打ちをしながらゆっくりと立ち上がり、右手につかんでいるさびた剣を肩に乗せ、その瞳で少女たちを見た。
少年にとっては今のこの状況がなんてこともない日常の出来事。
そう思わせるほど、少年の目は冷たく濁っていた。降り注ぐ雨の音が、彼の日常的な心情だと思わせるほどに──
ルヴィの古い記憶にある少年の顔が、目の前にいるマラークの顔と重なる。
人相(にんそう)こそ少年よりも悪くはなっているが、少なからずあの冷たい目の濁りが消えている。
そしてなによりあの時に見ていた少年は、たった一人で孤独に立っていたが、今ルヴィの前にいるマラークは、自身の体の重みをケントとハーヴェイに乗せている。
窓からわずかにこぼれた逆光が3人を後ろから照らし、ルヴィには少しそれがまぶしく見えた。
「──ケント」
「──はい」
「おまえはどう読む?」
「は?えっと……」
ケントは自信がなさそうに答えようとしたが、一度言いかけた言葉をのみ込み、再びルヴィへと言い放った。
「だいじなことなんだと思います」
「──そうか」
ルヴィは緊張を解くかのように息をはくと、刀をサヤに納め、再びその席についた。
「いいだろう、その賭けにのってやる。後悔してもしらんぞ」
「上等だ」
「3対3の少隊戦だったな。──都合がいい。この場にいるのもちょうど6人だ。ケント、マラーク、ハーヴェイ。こちらはわたしとレックス、そしてグリフ──」
「やだねぇ、俺はやらんぞ」
「──は?」
後方にいたグリフが水を差すように少隊戦への参加を拒んだ。
「青春真っただ中の若者をいじめるなんて、俺にはできんよ」
「待てよグリフ、それなら俺だって戦闘は得意じゃないんだぞ?」
「おいおい、考えてもみろよ……相手は見習いが2人。ならレックスとフェイあたりでも十分に釣りがでるだろう?それに力押しタイプの前衛3人のどこが少隊戦──って話だよなぁ団長」
「まったく……どいつもこいつも……わかった。あとでわたしからフェイに話しておく。われわれが勝った場合、その日をもってケントとハーヴェイは退団、マラークは以降わたしの部下として命令を必ず守れ」
ケントだけでなく、ハーヴェイも退団。そしてマラーク──それは、これまである程度の自由を許していたマラークに、首輪をはめるという事。
事実上、マラークという男に生き方を変えろと強要するという意味でもある。
それがケントやハーヴェイに課せられた事よりも、強いデメリットの提示だという事を、ある一人を除いて全員が理解していた。
「ええっ俺もっスか!?」
そう、ここまで沈黙を保っていたハーヴェイだけがまるで現状を理解していなかった。
「クソ犬はオマケだがな」
「オマケってなんスか!オマケって!オマケどころか損してるッスよ!」
ここにきてハーヴェイもいつもの元気が戻って来たようだ。
殺伐としていたはずの空気がいつの間にか柔らかくなり、ルヴィと3人の話し合いはそのまま続けられた。
小隊戦の日取り、細かいルールの取り決めを話し終え、尋問のような空気から始まった時間は終わりをむかえた。
「──わかりました。ではこれで失礼します」
「……ほんとにやるんスねぇ……」
「いい加減覚悟を決めろ。クソ犬」
ケントがルヴィに頭を下げると、3人は外に出るため扉へと向かっていった。
ケントたちが扉から出ていく中、ルヴィが一番後ろにいたマラークに問いかけた。
「マラーク、ひとつだけ答えろ」
「あ?」
「なぜそこまでケントの肩を持つ?」
「さぁな。テメェらが勝ったら教えてやるよ」
マラークは顔を向けることもせず、中指を立てながら外に出ていった。
「ヘッヘッヘ……青春してるねぇウチの若造たちは」
「少しだけ羨ましいな。わたしにもあんな仲間がいれば、また違った景色が見えたのかもしれんな」
どこか寂しげに笑いながらルヴィが外を眺めていると、外からさきほど出ていったはずのハーヴェイの声が民家の中まで届く。
「どどどどどどうするんスか!?なんか作戦でもあるんすよね!?ねぇ!?」
「あぁ?知るか」
「ええぇ……勝算とかあるんじゃ……」
「んなもんあるか。バカかおまえは」
「バカって……」
「……」
ルヴィのセンチメンタルな気分は、わずかな時間で消えていった。
*
──民家の外に出たケントたち3人はゆっくりと歩きながら、わずかにオレンジがかった空の下を歩いている。
「大将はテメェだ、相棒。おまえが決めろ」
「えぇ……どうするんスかケントさん……ってケントさん?」
首をかしげながらケントを見つめるハーヴェイ。
下を向きながらケントは黙って考えていた。
なぜ、マラークは自分自身を賭けの対象にしてまであんな提案をしかけたのか。
ケントを助けるため?ルヴィに伝えたいことがあったから?勝算があったから?
そのどれもが違和感となり、ひとつの結論へとたどり着いた。
(たぶん、本当にマラークは勝算なんて考えてない気がする。……きっと理由は──)
「──マラーク」
「あ?」
「楽しむんだよな?」
「へっわかってんじゃねぇか」
「……訓練だけは、今まで通り付き合ってくれよ」
人生をかけた大ばくち。
日の沈みかける夕焼けに向かうように、マラークは1人でゆっくりと去っていった。
顔を見せることもなく、ただヒラヒラと手を揺らしながら。
つい先ほどまで、わずかにもこの一連の会話に興味すら持っていなかったはずが、たった一言でマラークはその存在感を示した。
大きく両腕を開いて、ケントとハーヴェイの肩へもたれ掛かっているマラーク。
ケントたちは驚きのあまり口を開いてその顔を凝視している──八重歯を見せ、機嫌が良さそうに笑みを浮かべるマラークの横顔を。
突拍子もないマラークの言葉に当事者のケントですら困惑していたが、肩をつかむマラークの手からは、不思議と手の温かみと力強さを感じた。
そんなマラークに相対するように、ルヴィはマラークの言葉にも眉のひとつ動かさずに冷静に言葉を返した。
「まったくもって理解ができんな」
「あ?」
「ケントの望みは矜持(きょうじ)を持って受け入れよう。だがおまえの提案まで受け入れる道理はない」
「提案だ?ハッまだそんな寝ぼけた事をぬかしてやがんのか?」
「──なに?」
「さっきから黙って聞いてりゃ御託並べて矜持だ?道理だ?くせぇもくせぇ。いつからここはお行儀のいい騎士団になったァ?」
「おいマラーク!さすがに言いすぎ──」
マラークの言葉に反応したレックスだが、その言葉をさえぎるようにルヴィは黙って手のひらをレックスへと向けた。
レックスが言葉をのみ込むと、ルヴィは再び口を開く。
「──提案でないなら、なんだというんだ」
「んなもんひとつしかねぇだろうが。賭けだ」
「賭けだと?バカバカしい。おまえは何をいって──」
「ずいぶん慎重になったのはベイガーの野郎に吹き込まれたからかァ?」
その言葉が逆鱗(げきりん)に触れたのかルヴィは目を見開き、広い椅子に置いていた刀を手に取ると、抜刀と同時にマラークへと突き刺そうとした。
──その刃はマラークの目と鼻の先で寸止めされたが、刃を突き付けられたマラークは、まばたきどころか微動だにせずルヴィをただにらみ返している。
そんな殺伐とした2人を、ハラハラと目を見開きながらケントとハーヴェイは隣で成り行きを見守った。
「なにがいいたい?」
「テメェは傭兵かってことだルヴィ」
マラークの脈略のない言葉を、ケントたちは到底理解できなかった。
ルヴィの刀先はマラークに向けられたまま──そしてその場にいた誰もが言葉を発しないまま、ただ音のない時間だけが過ぎていく。
マラークは時折、本人にしかわからない本質をエグるように言葉を吐き捨てる。
この問答をレックスやハーヴェイは、ただの煽り言葉だと思っているからか、ただただ息をのむように困惑した表情をしている。
しかし、マラークがはき捨てた言葉には、何か──強い何かがあるとよぎったケントは、ふと横目で後方へと視界を当てた。
窓際に背をもたれながら腕を組んで立っているグリフ。
いつもヘラヘラしてるグリフが、この時ばかりは口こそ笑っていてもすべてを見透かすような目をしていた。
──きっと、だいじな事なのだろう。ケントはそう思った。
ルヴィという女性が傭兵団の団長になったいきさつも、マラークという利己的で一匹狼のような男が傭兵団という群れに属してる理由も、ケントは知らない。
その理由を知る機会は果たしてくるのだろうか?
ケントが思っているよりも、この2人の関係はずっと複雑で、いびつなものなのだろうか。
互いに沈黙を続けるマラークの目を見ながら、ルヴィはふと昔の記憶が頭によぎる。
森で降り続く雨の中、鮮やかなファイアレッド色の髪色をした少女が、何かにおびえるように大柄な男の裾をつかんでいる。
まるで親子のような大柄な男とその少女の視線の先は、1人の人間へと向けられていた。
はるか前方では、しかばねと化した死者の亡骸がそこら中に転がっている。
その亡骸をただの物だと思っているのか、さびた剣を片手に、しかばねの上で何かを物色している黒髪の少年。
少年の顔にはかなりの生々しい血痕が付着しており、それが死者からふき出した血で、しかばねたちが帰らぬ者となった原因は少年の仕業だというのは一目瞭然だった。
降り続く雨と死者の血が混じり、血の海と呼べるほど赤い水たまりがそこらかしこにできていた──無残な光景。
黒髪の少年は少女と男の存在に気づいた。
少年は小さく舌打ちをしながらゆっくりと立ち上がり、右手につかんでいるさびた剣を肩に乗せ、その瞳で少女たちを見た。
少年にとっては今のこの状況がなんてこともない日常の出来事。
そう思わせるほど、少年の目は冷たく濁っていた。降り注ぐ雨の音が、彼の日常的な心情だと思わせるほどに──
ルヴィの古い記憶にある少年の顔が、目の前にいるマラークの顔と重なる。
人相(にんそう)こそ少年よりも悪くはなっているが、少なからずあの冷たい目の濁りが消えている。
そしてなによりあの時に見ていた少年は、たった一人で孤独に立っていたが、今ルヴィの前にいるマラークは、自身の体の重みをケントとハーヴェイに乗せている。
窓からわずかにこぼれた逆光が3人を後ろから照らし、ルヴィには少しそれがまぶしく見えた。
「──ケント」
「──はい」
「おまえはどう読む?」
「は?えっと……」
ケントは自信がなさそうに答えようとしたが、一度言いかけた言葉をのみ込み、再びルヴィへと言い放った。
「だいじなことなんだと思います」
「──そうか」
ルヴィは緊張を解くかのように息をはくと、刀をサヤに納め、再びその席についた。
「いいだろう、その賭けにのってやる。後悔してもしらんぞ」
「上等だ」
「3対3の少隊戦だったな。──都合がいい。この場にいるのもちょうど6人だ。ケント、マラーク、ハーヴェイ。こちらはわたしとレックス、そしてグリフ──」
「やだねぇ、俺はやらんぞ」
「──は?」
後方にいたグリフが水を差すように少隊戦への参加を拒んだ。
「青春真っただ中の若者をいじめるなんて、俺にはできんよ」
「待てよグリフ、それなら俺だって戦闘は得意じゃないんだぞ?」
「おいおい、考えてもみろよ……相手は見習いが2人。ならレックスとフェイあたりでも十分に釣りがでるだろう?それに力押しタイプの前衛3人のどこが少隊戦──って話だよなぁ団長」
「まったく……どいつもこいつも……わかった。あとでわたしからフェイに話しておく。われわれが勝った場合、その日をもってケントとハーヴェイは退団、マラークは以降わたしの部下として命令を必ず守れ」
ケントだけでなく、ハーヴェイも退団。そしてマラーク──それは、これまである程度の自由を許していたマラークに、首輪をはめるという事。
事実上、マラークという男に生き方を変えろと強要するという意味でもある。
それがケントやハーヴェイに課せられた事よりも、強いデメリットの提示だという事を、ある一人を除いて全員が理解していた。
「ええっ俺もっスか!?」
そう、ここまで沈黙を保っていたハーヴェイだけがまるで現状を理解していなかった。
「クソ犬はオマケだがな」
「オマケってなんスか!オマケって!オマケどころか損してるッスよ!」
ここにきてハーヴェイもいつもの元気が戻って来たようだ。
殺伐としていたはずの空気がいつの間にか柔らかくなり、ルヴィと3人の話し合いはそのまま続けられた。
小隊戦の日取り、細かいルールの取り決めを話し終え、尋問のような空気から始まった時間は終わりをむかえた。
「──わかりました。ではこれで失礼します」
「……ほんとにやるんスねぇ……」
「いい加減覚悟を決めろ。クソ犬」
ケントがルヴィに頭を下げると、3人は外に出るため扉へと向かっていった。
ケントたちが扉から出ていく中、ルヴィが一番後ろにいたマラークに問いかけた。
「マラーク、ひとつだけ答えろ」
「あ?」
「なぜそこまでケントの肩を持つ?」
「さぁな。テメェらが勝ったら教えてやるよ」
マラークは顔を向けることもせず、中指を立てながら外に出ていった。
「ヘッヘッヘ……青春してるねぇウチの若造たちは」
「少しだけ羨ましいな。わたしにもあんな仲間がいれば、また違った景色が見えたのかもしれんな」
どこか寂しげに笑いながらルヴィが外を眺めていると、外からさきほど出ていったはずのハーヴェイの声が民家の中まで届く。
「どどどどどどうするんスか!?なんか作戦でもあるんすよね!?ねぇ!?」
「あぁ?知るか」
「ええぇ……勝算とかあるんじゃ……」
「んなもんあるか。バカかおまえは」
「バカって……」
「……」
ルヴィのセンチメンタルな気分は、わずかな時間で消えていった。
*
──民家の外に出たケントたち3人はゆっくりと歩きながら、わずかにオレンジがかった空の下を歩いている。
「大将はテメェだ、相棒。おまえが決めろ」
「えぇ……どうするんスかケントさん……ってケントさん?」
首をかしげながらケントを見つめるハーヴェイ。
下を向きながらケントは黙って考えていた。
なぜ、マラークは自分自身を賭けの対象にしてまであんな提案をしかけたのか。
ケントを助けるため?ルヴィに伝えたいことがあったから?勝算があったから?
そのどれもが違和感となり、ひとつの結論へとたどり着いた。
(たぶん、本当にマラークは勝算なんて考えてない気がする。……きっと理由は──)
「──マラーク」
「あ?」
「楽しむんだよな?」
「へっわかってんじゃねぇか」
「……訓練だけは、今まで通り付き合ってくれよ」
人生をかけた大ばくち。
日の沈みかける夕焼けに向かうように、マラークは1人でゆっくりと去っていった。
顔を見せることもなく、ただヒラヒラと手を揺らしながら。
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