牧場日和

金森 怜香

文字の大きさ
上 下
5 / 6

香りの家

しおりを挟む
ゆったりと花畑を歩いた先に、目的の売店があった。
とてもこじんまりとした家のようなデザインの売店である。
真奈は売店の中に足を踏み入れた。


「いらっしゃいませ~!」
スタッフの明るい声が出迎えてくれる。
「こんにちは」
真奈は笑顔で返事を返した。

店の中を見てみると、先ほどの小屋と同様、頭上にはドライフラワーが吊るされていた。
こちらの方が、ドライフラワーとしては完成品に近いのだろう。

店の中をゆっくり物色し、お目当ての物を探す。
「わぁ、これ可愛いなぁ」
そう言って手を伸ばしたものは、押し花のしおり。
形も色もそれぞれ違う。
恐らく、まきの郷の植物を乾燥させたうえで作られたようだ。


「うーん、こっちも捨てがたい……」
もう一つは、ステンドグラスをモチーフとしたしおり。
こちらも、花々がデザインされている。

元々、真奈は読書が好きな性分でもある。
その為、しおりはいつも悩んでしまう。

「しおりはどっちかお迎えすることにして、他の……、わぁ、このラベンダーの束可愛い!」
ドライフラワーとなっていた、小さなラベンダーの束。
真奈は迷うことなくそれを小さいかごに入れた。
「部屋に飾ったら、ラベンダーの良い香りが堪能できそう」

ラベンダーの花の部分だけを干し乾かしたタイプのポプリもあった。
真奈はそれもひとつかごに入れた。
「ローズペタル、バラの花びらの物もあるんだ……、じゃあ、これとラベンダー組み合わせておいても良いかも!」
真奈はさらにローズペタルも入れた。

結局、悩みに悩んだしおりは……
「押し花のにしよう! ステンドグラスはまた次の機会にしよう」
押し花の、それも紅葉が封入されているしおりを手に取った。
なぜだか、ややオレンジがかった赤い紅葉のものが妙に心惹かれた。


さらに、手作りでポプリを作れるというコーナーを見つける。
「面白そう……!」
真奈はレジで、手作りポプリを作ってみたい、と申し出た。


「でしたら、ポプリを作っていただいてから一緒にお会計しましょう」
「お願いします。」
「瓶はそちらにいくつかデザインのものがございますので、お好きなものをお選びください」

真奈はそう言われて、瓶の置いてある棚を見た。
「結構種類があるんですね……。悩んじゃう!」
そういうと、スタッフは笑った。
「そうですね。やはりここでも悩まれる方は多くいらっしゃいます」
「部屋に飾るとなると、どうしても悩んでしまいますね」
「ええ、時間がかかっても構いませんから、納得いただける瓶をお選びいただけたら幸いです。やはり、お客様が喜んでくれるのが第一ですから」
「そうですね……。あ……、これ可愛い」
真奈が手に取ったのは……!

卵に耳が付いたようなデザインの小瓶だった。
「ウサギの卵です」
スタッフは明るく答えた。
しおりを挟む

処理中です...