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幼少期の章
パンも切れないクソゲー
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「ぜ、全員集合!」
「「はいQ様!」」
これは由々しき事態、というかもうそれを通り越して緊急事態だ。
キーンの誕生日パーティの時のアレとか、兄上たちが避暑地に昨日行ったとか。兄上が避暑地に行くまでの3日間はダダを捏ねておやすみからおはようまでピッタリくっつかれてたりしたとか。
そんなことはどうでもいい!
緊急事態だ!
窓を開けて庭師もおいでおいでと呼ぶとばたばた駆け寄ってきた。仕事中にごめんね。
使用人たちがばたばた廊下を走って来て、ものの数分で屋敷内の使用人が全員集合した。
い、いや呼んだのは確かに俺だけどみんなよく何の疑問も持たずに集まってくれたよね。ごめんねありがとう。
今、使用人全部で5人しかいないけど。
「さて。みんな仕事中にごめんね。緊急事態だから」
「Q様? どうなさったんですか?」
「殿下でも襲来なされるんですか? 今すぐ女装します?」
違うわい。
確かに珍しく今日は女装していないけれども。美少年であることに変わりはないし。キーンなら大丈夫だと思うぞあいつ気にしないと思うし。
いや、そんなことよりも。
「みんな正直に。正直に答えて。
料理出来る人挙手して」
シーン……。
沈黙だ。悲しいほどに沈黙だ。
使用人たちがメイドを見る。
メイドたちは顔を背けて庭師を見る。
庭師は可哀想なほど戸惑ってから俺を見た。
俺は顔を背けた。
「どーしよっかね……1ヶ月」
全員で顔を引き攣らせた。
これは本当に死活問題だ。
昨日、両親と兄上が避暑地に行った。毎年1ヶ月ほど家族水入らずで過ごすのだ。
避暑地の方の屋敷には別の使用人が居るので、いつもの屋敷の使用人たちは長期休暇が与えられる。夏休みみたいなもんだ。
使用人たちは実家に帰ったり家族で過ごしたりする。
此処に残っているのは独り身の暇な人たちの中でも特に暇な人達だけ。
まあ、仕事していたりしていなかったり自由にしてていい。特別手当とか出るらしいし。
去年は皆でお昼寝とかしたなぁ。
目の前のメイドが震えた声で挙手した。質問の方ですね。はいどうぞ。
「こ、コックはどうしたんです? 去年まで居たじゃないですか」
「毎年俺らの食事を支えてくれてた彼は今年に入ってから結婚したんだ」
「お、おめでたいです……ね……」
全員が複雑な顔をしながらおめでとうと言って拍手をした。ここにその言葉と拍手受け取る人いないから。本人にしてあげてね。
実は新婚のコックから1週間前に『僕が居なくても大丈夫ですか?』と聞かれてなんのこっちゃと思って『大丈夫だよ』と返した。何も察せなかった俺が一番悪い。
けれど、大丈夫じゃないという現状を踏まえても『俺らの食事の為に長期休暇を諦めてください』なんて言えるわけがない。
「みんな落ち着こう。一旦胸に手を置いて考えてみよう。さっきのはほら、ちょっとハードル高かったね。うん。
パンを切ったことがある時点で料理が出来るとカウントしよう。
料理出来る人は挙手して」
料理できます!と挙手するのはちょっとハードルが高い。
大したものは作れないけれど~な料理出来る人はこういうもので手を挙げたりはしないはず。
だから、こうしてハードルをめちゃくちゃ下げてあげることで……
「「……」」
びっくりするほどの静寂だった。
嘘じゃん。そんなことある?
みんなパン切ったことないの?
俺もないけども。
確かにうちは3食まかない付きだけども。いや生まれた時からうちで働いている訳じゃないんだから今までどうやって生きてきたのみんな。
「みんなここに来るまでどうやって生きてきたの?」
「私は何もかも丸齧りしてました」
「姉が結婚してからここに就職したので……ちなみに姉からは絶対に台所に入るなと言われてましたね」
男性陣も同じような内容だった。
休日でも俺らの分のついででご飯が出るらしい。この家職場環境優良じゃん……。
「ちなみにQ様は」
「天は二物を与えず。俺はこの可愛らしい顔面以外天に与えられなかったようだ」
前世、料理なんて作った記憶ほぼほぼない。
炊飯器からご飯をよそって納豆をかけるか卵を割るくらいしかした記憶が無い。調理実習の記憶は砂糖と塩を間違えた班員により不味い料理を食べた衝撃でそれ以外記憶が残ってない。
「そうですね、Q様は今日も可愛らしい」
うん。俺は今日も可愛い。
「コック、作り置きとかしてくれてないかな」
「1ヶ月の作り置き六人分をどうやって保存しておくって言うんですか」
れ、冷凍庫とか?
ああでもこの世界は冷凍庫が無いんだった。クソゲーくん、この世界の文明発達させておいてくれよ。
「あのぉ、街で出来合いの物を買えばいいのでは……?」
「「「!!」」」
その手があったか!
「流石庭師! よし、それじゃあ早速……」
街。
街に行くには、馬車だ。
そう。馬車なのだ。
「みんな正直に。正直に答えて。
馬車運転出来る人挙手して」
さっきと同じ光景を見た。
「……お前らさっきから何してんだ?」
お通夜のような静けさの中で、さっきと違う声が。おおっとこれは
「! キーン様って神様か何かでしたっけ?」
鴨がネギしょって来た!
「やめろ。俺を持て囃すな。……なんだお前髪減った?」
「女装してないだけです」
キーン様が複雑そうな顔をした。言わんとすることは分かる。すっぴんなのに顔が可愛すぎるって言うんだろ。
仕方ないだろ可愛いく生まれたんだから。
「キーン様はいつからここに?」
「集合したとこからだ。誰からも出迎えも何もなく、使用人たちが廊下を走ってたから何かあるんだろうなと思ってな」
仮にも王族が来たのに誰も出迎えないって大丈夫じゃないと思うしそれを許すのもどうかと思うけど、いいか。
そもそもこの人何しに来たん?って感じだし。
「それならもう分かってますよね、お願いですから操縦者ごと馬車を貸してください」
「ほーん? それで料理を買って乗り切るって? 食材なら魔法使えばいいが、料理に保存魔法かけても1ヶ月は持たねぇだろ?」
あ。
「キーン様……3日に1回くらい遊びに来たりしません?」
「俺を通わせる方向に行くのか。こんなこと言いたくはねぇが、仮にも第2王子だぞ? 暇じゃねぇんだよな~」
週に1回用もないのに来てるくせに??3日に1回は無理だと?
週一も三一も変わんねえだろ。
「そんなまどろっこしいことするより、いい案があるぞ?
お前が1ヶ月、うちにくれば良い」
キーンがニヤリと悪い顔をして俺を指さした。
うち……?うちって、王城じゃん。は?馬鹿なの?
そんな気軽に家に呼ぶなよお前王族だぞ?
「……え、嫌ですけど」
「お前の使用人たちは休暇中なんだろ? ここの使用人たちも各々好きに過ごせるようにサポートもしてやろう」
確かにその方が使用人達にとってはいいんだろうな。
いいんだろうけど嫌だな。普通に嫌だ。
「……キーン様のことでしょうから何かしら要求があるのでしょう? それによります」
「あるわけないだろ。何でもかんでも疑うなって。お前の兄じゃあるまいし。
婚約者候補が食に困っているから手助けしたいというのは普通だろ?」
胡散臭い。絶対何かある。
「兄上は嫌味なことしますけど根本が脳筋なのでもっと直球です」
「知るか」
ん。兄上?
兄上が避暑中、キーン様も当然一人というわけで。
これが普通の10歳なら寂しいからだとかそういう事なんだろうなと納得してたけれど。キーン様だ。
……もしかして。
いや、流石に存在を意識しすぎかもしれないな、とは思う。
思うんだが……そういえばキーン様が此処に来る理由はとある人からの視線から逃れるためだったよな。
「……ルエリア様ですか?」
「ヴァーー!!! その名を出すな!!! 出るだろ!! 奴がよォ!!!」
「出ませんよ落ち着いてください」
どうどうと落ち着かせてソファに座らせると、メイドがタイミングよく紅茶を差し出していた。流石うちのメイド。
それにしてもわかりやすく取り乱したな。
普段兄上という壁もとい戦友的な存在が居たけど。
今の期間は壁になってくれる人も、視線を受け続ける辛さを共有する人も居ないからか。
「あの人なんなんだろうな本当に。本当に。誕生日以降酷くなってる気がするんだ」
紅茶を一口飲んで落ち着いたかと思ったらいつものように頭を抱えだしたキーンを眺める。
大変そうだなぁ。
……そういえば。
誕生日パーティの薔薇園事変。
あの後、俺の事を殴って連れ出してくれる人なんか当然居なかったので普通に少しだけ会話したのだ。
『……弟の誕生日は……どう祝うものだ……?』と言う相談をされたので『祝いたいというそのお気持ちが最も大切なので、おめでとうの一言だけでも十分かと思いますよ』と答えた。
下手なこと言って実践されたらキーンが死ぬだろうなということで、一言で終わるアドバイスをした。
良いことしたなぁと思っていたけれど。どうやら全く上手くいっていないところか……
キーンの眉間のシワが酷いことになっている。
これは俺のせいなんだろうか。俺も悪いんだろうか。6:4の4くらい俺が悪い気がしなくもない。
はあ。
使用人たちを見やると、お好きにどうぞとばかりに頭を振られた。
だよな。仕方ない。
「……キーン様、お言葉に甘えさせていただきます」
「ありがとう。お前ならそう言ってくれると思っていた」
「ただ、帰ってきた時。兄上を宥めるのはキーン様がしてくださいね」
「無理だろ」
「骨は拾います」
それにしても。まさか一言も会話が出来ていないとは……
うちの兄弟とそっちの兄弟足して2で割っとく?
こうして俺は1ヶ月ほど王城で過ごすことになった。
王城で仕事する機会なんてないからということで結局使用人たちみんなが一緒に来てくれたし。
食に困らずに済むから良かったと思うことにした。
兄上が帰ってきてからのことは暫く考えないことにする。
「「はいQ様!」」
これは由々しき事態、というかもうそれを通り越して緊急事態だ。
キーンの誕生日パーティの時のアレとか、兄上たちが避暑地に昨日行ったとか。兄上が避暑地に行くまでの3日間はダダを捏ねておやすみからおはようまでピッタリくっつかれてたりしたとか。
そんなことはどうでもいい!
緊急事態だ!
窓を開けて庭師もおいでおいでと呼ぶとばたばた駆け寄ってきた。仕事中にごめんね。
使用人たちがばたばた廊下を走って来て、ものの数分で屋敷内の使用人が全員集合した。
い、いや呼んだのは確かに俺だけどみんなよく何の疑問も持たずに集まってくれたよね。ごめんねありがとう。
今、使用人全部で5人しかいないけど。
「さて。みんな仕事中にごめんね。緊急事態だから」
「Q様? どうなさったんですか?」
「殿下でも襲来なされるんですか? 今すぐ女装します?」
違うわい。
確かに珍しく今日は女装していないけれども。美少年であることに変わりはないし。キーンなら大丈夫だと思うぞあいつ気にしないと思うし。
いや、そんなことよりも。
「みんな正直に。正直に答えて。
料理出来る人挙手して」
シーン……。
沈黙だ。悲しいほどに沈黙だ。
使用人たちがメイドを見る。
メイドたちは顔を背けて庭師を見る。
庭師は可哀想なほど戸惑ってから俺を見た。
俺は顔を背けた。
「どーしよっかね……1ヶ月」
全員で顔を引き攣らせた。
これは本当に死活問題だ。
昨日、両親と兄上が避暑地に行った。毎年1ヶ月ほど家族水入らずで過ごすのだ。
避暑地の方の屋敷には別の使用人が居るので、いつもの屋敷の使用人たちは長期休暇が与えられる。夏休みみたいなもんだ。
使用人たちは実家に帰ったり家族で過ごしたりする。
此処に残っているのは独り身の暇な人たちの中でも特に暇な人達だけ。
まあ、仕事していたりしていなかったり自由にしてていい。特別手当とか出るらしいし。
去年は皆でお昼寝とかしたなぁ。
目の前のメイドが震えた声で挙手した。質問の方ですね。はいどうぞ。
「こ、コックはどうしたんです? 去年まで居たじゃないですか」
「毎年俺らの食事を支えてくれてた彼は今年に入ってから結婚したんだ」
「お、おめでたいです……ね……」
全員が複雑な顔をしながらおめでとうと言って拍手をした。ここにその言葉と拍手受け取る人いないから。本人にしてあげてね。
実は新婚のコックから1週間前に『僕が居なくても大丈夫ですか?』と聞かれてなんのこっちゃと思って『大丈夫だよ』と返した。何も察せなかった俺が一番悪い。
けれど、大丈夫じゃないという現状を踏まえても『俺らの食事の為に長期休暇を諦めてください』なんて言えるわけがない。
「みんな落ち着こう。一旦胸に手を置いて考えてみよう。さっきのはほら、ちょっとハードル高かったね。うん。
パンを切ったことがある時点で料理が出来るとカウントしよう。
料理出来る人は挙手して」
料理できます!と挙手するのはちょっとハードルが高い。
大したものは作れないけれど~な料理出来る人はこういうもので手を挙げたりはしないはず。
だから、こうしてハードルをめちゃくちゃ下げてあげることで……
「「……」」
びっくりするほどの静寂だった。
嘘じゃん。そんなことある?
みんなパン切ったことないの?
俺もないけども。
確かにうちは3食まかない付きだけども。いや生まれた時からうちで働いている訳じゃないんだから今までどうやって生きてきたのみんな。
「みんなここに来るまでどうやって生きてきたの?」
「私は何もかも丸齧りしてました」
「姉が結婚してからここに就職したので……ちなみに姉からは絶対に台所に入るなと言われてましたね」
男性陣も同じような内容だった。
休日でも俺らの分のついででご飯が出るらしい。この家職場環境優良じゃん……。
「ちなみにQ様は」
「天は二物を与えず。俺はこの可愛らしい顔面以外天に与えられなかったようだ」
前世、料理なんて作った記憶ほぼほぼない。
炊飯器からご飯をよそって納豆をかけるか卵を割るくらいしかした記憶が無い。調理実習の記憶は砂糖と塩を間違えた班員により不味い料理を食べた衝撃でそれ以外記憶が残ってない。
「そうですね、Q様は今日も可愛らしい」
うん。俺は今日も可愛い。
「コック、作り置きとかしてくれてないかな」
「1ヶ月の作り置き六人分をどうやって保存しておくって言うんですか」
れ、冷凍庫とか?
ああでもこの世界は冷凍庫が無いんだった。クソゲーくん、この世界の文明発達させておいてくれよ。
「あのぉ、街で出来合いの物を買えばいいのでは……?」
「「「!!」」」
その手があったか!
「流石庭師! よし、それじゃあ早速……」
街。
街に行くには、馬車だ。
そう。馬車なのだ。
「みんな正直に。正直に答えて。
馬車運転出来る人挙手して」
さっきと同じ光景を見た。
「……お前らさっきから何してんだ?」
お通夜のような静けさの中で、さっきと違う声が。おおっとこれは
「! キーン様って神様か何かでしたっけ?」
鴨がネギしょって来た!
「やめろ。俺を持て囃すな。……なんだお前髪減った?」
「女装してないだけです」
キーン様が複雑そうな顔をした。言わんとすることは分かる。すっぴんなのに顔が可愛すぎるって言うんだろ。
仕方ないだろ可愛いく生まれたんだから。
「キーン様はいつからここに?」
「集合したとこからだ。誰からも出迎えも何もなく、使用人たちが廊下を走ってたから何かあるんだろうなと思ってな」
仮にも王族が来たのに誰も出迎えないって大丈夫じゃないと思うしそれを許すのもどうかと思うけど、いいか。
そもそもこの人何しに来たん?って感じだし。
「それならもう分かってますよね、お願いですから操縦者ごと馬車を貸してください」
「ほーん? それで料理を買って乗り切るって? 食材なら魔法使えばいいが、料理に保存魔法かけても1ヶ月は持たねぇだろ?」
あ。
「キーン様……3日に1回くらい遊びに来たりしません?」
「俺を通わせる方向に行くのか。こんなこと言いたくはねぇが、仮にも第2王子だぞ? 暇じゃねぇんだよな~」
週に1回用もないのに来てるくせに??3日に1回は無理だと?
週一も三一も変わんねえだろ。
「そんなまどろっこしいことするより、いい案があるぞ?
お前が1ヶ月、うちにくれば良い」
キーンがニヤリと悪い顔をして俺を指さした。
うち……?うちって、王城じゃん。は?馬鹿なの?
そんな気軽に家に呼ぶなよお前王族だぞ?
「……え、嫌ですけど」
「お前の使用人たちは休暇中なんだろ? ここの使用人たちも各々好きに過ごせるようにサポートもしてやろう」
確かにその方が使用人達にとってはいいんだろうな。
いいんだろうけど嫌だな。普通に嫌だ。
「……キーン様のことでしょうから何かしら要求があるのでしょう? それによります」
「あるわけないだろ。何でもかんでも疑うなって。お前の兄じゃあるまいし。
婚約者候補が食に困っているから手助けしたいというのは普通だろ?」
胡散臭い。絶対何かある。
「兄上は嫌味なことしますけど根本が脳筋なのでもっと直球です」
「知るか」
ん。兄上?
兄上が避暑中、キーン様も当然一人というわけで。
これが普通の10歳なら寂しいからだとかそういう事なんだろうなと納得してたけれど。キーン様だ。
……もしかして。
いや、流石に存在を意識しすぎかもしれないな、とは思う。
思うんだが……そういえばキーン様が此処に来る理由はとある人からの視線から逃れるためだったよな。
「……ルエリア様ですか?」
「ヴァーー!!! その名を出すな!!! 出るだろ!! 奴がよォ!!!」
「出ませんよ落ち着いてください」
どうどうと落ち着かせてソファに座らせると、メイドがタイミングよく紅茶を差し出していた。流石うちのメイド。
それにしてもわかりやすく取り乱したな。
普段兄上という壁もとい戦友的な存在が居たけど。
今の期間は壁になってくれる人も、視線を受け続ける辛さを共有する人も居ないからか。
「あの人なんなんだろうな本当に。本当に。誕生日以降酷くなってる気がするんだ」
紅茶を一口飲んで落ち着いたかと思ったらいつものように頭を抱えだしたキーンを眺める。
大変そうだなぁ。
……そういえば。
誕生日パーティの薔薇園事変。
あの後、俺の事を殴って連れ出してくれる人なんか当然居なかったので普通に少しだけ会話したのだ。
『……弟の誕生日は……どう祝うものだ……?』と言う相談をされたので『祝いたいというそのお気持ちが最も大切なので、おめでとうの一言だけでも十分かと思いますよ』と答えた。
下手なこと言って実践されたらキーンが死ぬだろうなということで、一言で終わるアドバイスをした。
良いことしたなぁと思っていたけれど。どうやら全く上手くいっていないところか……
キーンの眉間のシワが酷いことになっている。
これは俺のせいなんだろうか。俺も悪いんだろうか。6:4の4くらい俺が悪い気がしなくもない。
はあ。
使用人たちを見やると、お好きにどうぞとばかりに頭を振られた。
だよな。仕方ない。
「……キーン様、お言葉に甘えさせていただきます」
「ありがとう。お前ならそう言ってくれると思っていた」
「ただ、帰ってきた時。兄上を宥めるのはキーン様がしてくださいね」
「無理だろ」
「骨は拾います」
それにしても。まさか一言も会話が出来ていないとは……
うちの兄弟とそっちの兄弟足して2で割っとく?
こうして俺は1ヶ月ほど王城で過ごすことになった。
王城で仕事する機会なんてないからということで結局使用人たちみんなが一緒に来てくれたし。
食に困らずに済むから良かったと思うことにした。
兄上が帰ってきてからのことは暫く考えないことにする。
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