ソング・バッファー・オンライン〜新人アイドルの日常〜

古森きり

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お色気研修デート(3)

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 ドルオタ、去年の『トップ4』が身内の話をしている、その光景で大変な栄養がいただけている。
 というか、シンプルに顔面がよすぎる。
 
「上総先輩、朝科先輩、写真撮っていいですか」
「店内撮影禁止だからダメ」
「い、石動くんずるい! マイスイートに下の名前で呼ばれてる……!!」
「ウッゼェェェ……そんなの自分で他の目よ。っていうか、お前のことを呼び出したのはコレらに色気ってもんを教えるためにデートしてやってほしいからだからこれを機に距離詰めちゃえば?」
「なんですか? はい?」
 
 もうなにもわからない。
 なんて? デート?
 
「は? デート? ……え? 淳くんと……? そ、それは、合意の上で……?」
「お前はなにを言っているの?」
 
 わかりやすく狼狽えた朝科に、超真顔で聞き返す石動の図。
 そして一拍の間。
 こんな真面目に聞き返されるとは思っていなかったあさしな、しおしお、と肩を落とす。
 
「い、いや、だって綾城くんに『音無くんは未成年で学生だからね』って三回くらい釘を刺されていてね」
「ド正論の五寸釘打ち込まれてんじゃん」
「そうだよ! だからその、ほ、本当にいいの……? デートして、ご、合法?」
「うーーーーーーーん……合法かそうでないかは朝科次第じゃない?」
 
 結構悩んだうえで突き放しおった。
 淳にはんでデートが合法か非合法かの話になっているのかわからない。
 なお、松田と槇は早くも察した。
 
「あと二年我慢するから!」
「俺にそれを言われてもね。淳、食べ終わった?」
「あ、はい。ところで店外に出たら上総先輩と朝科先輩のツーショ撮ってもいいですか? 誰にも送らないと誓うので」
「店外ならいいし、明日以降ならSNSにあげてもいいよ。こういうのも話題作りになるだろうし」
「うわあ、ありがとうございます! さすが上総先輩! オタク心を手玉に取るのがお上手!!」
「なんか褒められている気がしないんだよなぁ……」
 
 東雲学院芸能科推しなら、卒業後もこの二人に交流があるという事実だけで白米が食える。
 それとはまた別で、二人の卒業後のファンが推しの交友関係を知って相手を調べて新境地に足を滑らせるきっかけにもなりえる。
 
「卒業後の上総先輩不足気味って言ってたから、桃花鳥とき先輩喜びますよ~」
「ごふっ!!」
「ぶっ!!」
「え?」
 
 ハーブティーを噴きかける石動と、お冷はコップに戻しかける朝科。
 だがそこはアイドル、本当に噴いたり戻したりはしていない。
 なにかまずいことを言ったか?
 
「え……なに、マイスイート、と……桃花鳥咲良ときさくらくんと仲良くなったの……? ま、まさか……?」
「え? ああ、まあ、はい。最近お茶会をしたりしましたよ。桃花鳥とき先輩もドルオタで、特に上総先輩のファンだそうで」
「ええええ!? あの子石動くんのファンだったの!?」
「そんなに驚かれます? まあ、俺も初めて聞いた時は驚きましたけれど……でも上総先輩のグッズ全部持ってましたよ。入学直後のデビュー当時からのファンで、上総先輩がいたから東雲学院芸能科受験したって」
「えええええええ!?」
 
 朝科、ガチで驚いている。
 そのまま口を開けて硬直しているほどに。
 一時期石動のガチストーカーと思われていたようなので、それで勘違いをされているのだろうか?
 
「あの子、石動くんのこと殺そうとしてたわけじゃないんだ?」
「てっきり実家関係の刺客かと思ってた……」
「ええ……? どういうことなんですか……?」
 
 顔を見合わせる朝科と石動。
 ストーカーと疑われているどころか暗殺者と思われていた、だと?
 だが二人の話を聞くと、物陰からものすごい鋭い眼光で睨み続けていたのでてっきり……とのこと。
 石動自身、実家からほぼ離反のような形で家出してきており、実際に家関係で柴薫しばかおるが本名まで偽って近くで監視していたので、そう思っていたらしい。
 
「石動くんが『多分実家が雇った暗殺者』とか言うし、『さすがにまさかぁ』とは思っていたけれど実際すっごく怖い顔でつきまとっていたから……」
「ご、誤解されやすいんですね、桃花鳥とき先輩……」
「でもそれはそれでキモいな」
「双眼鏡で見張られた時は自分のことじゃないのに怖かったもん。もう少し続いていたら先生にも相談しようと思っていたよね」
「俺だけならまだしもクラス全員に認知されて気味悪がられていたからな。俺のパフォーマンスが敵を作る方向性だったし、牽制の意味があるのかと……」
 
 誤解のされ方にもほどがある。
 本人に話したら落ち込みそうだ。
 というか、去年の三年B組の皆さんに『暗殺者』として認知されていたなんてさすがに可哀想に思う。
 
「あ、愛情表現が独特な子だったんだね」
「そ、そうですね。でも一応オタクらしく推しに認知されないように、頑張っていたって言ってましたから……一応本人は隠れてバレないようにしていた……つもりなんだと思います、よ……」
「あ……そ、そうなんだ。それで……アレ、だったんだ。なるほどね……。愛されていたんだね、石動くん」
「いや、キモイ」
 
 あまりにも一刀両断。
 桃花鳥ときが可哀想に思いながらもやはりストーキングはいけなかった。
 推しとの距離感は要注意だな、と改めて心に刻むドルオタ。

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