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新グループ(1)
しおりを挟む「ええと……?」
「どちらもSBO内で集計した数値です。去年の今頃の音無くん、声変わりで声が出なかったでしょう? SBOはうちも出資して開発したゲームなので、まあ、こういうこともやっていたんですよ」
「え……あ、そ……そうだったんですね」
SBOのゲームの中で、才能のある人間をこうして検出していた。
利用規約に『声や歌の再現精度を行うのを了承する』という項目もあるので法的にも問題ない。
規約、読んでいたつもりであんまり読んでいなかったかも、とこっそり肩を落とす。
「話を戻しますね。こういった数値を参考に、去年の音無くんの活動を見た結果うちの事務所に正式所属していただければと思っているのですが」
「え? ……え? あの、でも……事務所のレッスンとかほとんど出られなかったんですけれど……」
「君は東雲学院芸能科所属の学生でしょう? 本業が学生アイドルなのですから、そちらで成果を出している分評価するのは当然なのでは? それに芸能事務所はそういった学生アイドルの時の活動を見た上で事務所にスカウトするではありませんか」
「……確かに」
実際三年生たちは三年間の活動を携えて、芸能事務所のオーディションや面接に挑む。
淳の一年間を評価して、研修生から所属に昇格させる――と、社長が判断したのだ。
「もちろん、事務所側から音無くんに希望の仕事を振れているかは怪しいところなのですが」
「いえ、そんな! そもそもミュージカルって一人でやるものではありませんし……」
「今最新型の劇場を建設中なのと、ミュージカルの劇団を一つ買収中なのであと一年くらい待っていてほしいんですよね」
「…………」
なんか頭のおかしいことを言っていないだろうか、この人。
劇場を……なんて?
劇団を……買収って言った?
「て、手広くやるんですね……?」
「そうですね。手を回される前に回しておこうかと。まあ、卒業後はミュージカルも視野に入れつつ一晴と一緒に2.5次元で知名度と実績を上げてもいいですし」
「はあ……」
「まあ、その話はまた次の機会でゆっくりしたいと思うので最初の話に戻しますが」
「あ、はい」
数が社長の話を総合すると、去年の淳の活動が大変素晴らしかった。
特にIG夏の陣の、学生セミプロアイドル初の準優勝。
さらに例のBLネットドラマ。
原作者が大絶賛していたことがスタッフ経由で色々な番組や監督の耳に入っており、新企画のドラマや舞台、映画などの配役に選出され始めている。
まだ正式に事務所所属、ということになっているわけではないので、学院に全部ぶん投げているらしいのだが、学生だから安く買い叩けると思っていたのにスケジュールが厳しいからとシャットダウンされるらしい。
「うちの事務所でに正式所属、ということになれば出演料をケチるアホはよほどの世間知らずのみになりますから、あなたを守る意味でもいいかと思います。とはいえ、在学中なのであくまでも学生生活を優先していただいて構わないのですが――」
「もしかして、俺も綾城先輩のようにアイドルに、という話ですか?」
「はい。本当は今年のオーディションでいい子がいれば、と思っていたのですが……石動くんがうちの事務所に嫌々ながらも入ってきてくれたので、実力者が揃ってしまったんですよね。なら、もう稼働させた方が来年度に間に合うかなーと」
首を傾げる。
石動上総は確かにIG夏の陣で綾城珀、花崗ひまりに次ぐ『勇士隊』の君主として知名度は爆上がりした。
しかも“いい子”の星光騎士団と違い、破天荒さに一部の層から絶大な支持が集まっている。
綾城の次にグッズ完売したのは石動上総だった程度には、人気の高まりは卒業後も留まるところを知らない。
(ん、んん? っていうか、その話の流れって……!)
ギョッとした淳の表情に、春日社長が「察してくれました?」という感じの嬉しそうな笑顔。
正気かな、この人。
「え、えっ……!? 石動先輩と同じグループにされるんですか!? 俺が!?」
「『Blossom』は割と正統派な多面性があるグループ、というコンセプトなんですけど、次のグループは王道から外れたマルチスキル持ちのグループにするつもりなんですよね。あんまり集まらないレアキャラ的な?」
「あ……あんまり集まらない……!?」
ドウイウコトナノ。
春日社長の言ってることがわからなくて、混乱。
ドルオタの淳ですら一瞬理解に苦しむコンセプト。
さすが最先端の流行りを生み出す側、なに考えてるのかさっぱりわからない。
「音無くんなら知っていると思うんですけどね、松田春樹くん」
「松田……! 去年普通科から卒業した、元芸能科のゲーム好きアイドルですね!」
「はい。さっきも少し話しましたけれど、SBOの制作会社には春日芸能事務所が出資しているんです。松田くんはそのゲーム制作会社に面接に来たんですけど、面白そうだったのでうちでいただきました」
「え……え?」
ゲームが好き、という話はちゃんと覚えている。
松田春樹、19歳。元東雲学院芸能科のアイドルで、魔王軍に所属していたがいわゆる『蠱毒』に負けて一年生の夏休み明けには普通科に転科した。
朝科、檜野、雛森の元同期、ということだ。
彼のこともあり、淳は残った魔王軍の三人には辞めてほしくなくて推しうちわを振りに、あの時、あの定期ライブに行った――という経緯がある。
そんな松田が、春日芸能事務所に所属している!?
「松田先輩はゲームの制作に行きたかったのでは……? え? なんで芸能事務所……え?」
「一応本人とも面談して、ゆっくり話し合いをしたんですよ。とにかくゲームが好きらしいです。あとVtuberオタク」
「え!? そ、そうだったんですか!?」
「そうだったんですよ。で、Vtuberやりたい? って聞いたら目を輝かせてやりたい! って言ってたので彼はVtuberでデビューします」
「………………ぉ……え、あ……ほ、ほう……?」
混乱が止まるところを知らない。
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