旦那様は獣 〜比喩でなく〜

一 千之助

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 三人の過去との遭遇

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「懐かしいな。ショーンも、よく泣いていたっけ」

「ああ、可愛かった。壊れちゃうって真っ赤な顔でな。その後、しっかり可愛がって精を出してやるのが楽しかったよ」

 赤裸々な思い出を暴露され、頭に湯気をたてる末っ子様。

「おま……っ! チイの前で言う事ないだろーっ! 俺はチイの夫になったんだぞっ!」

「何も恥ずかしがることはない。素直に可愛がられただけじゃないか。俺達を受け入れられるよう頑張るショーンは健気だったぞ? 慣らしを放りだしてぶち込みたいくらいにな」

「そうそう。今はお前が可愛がる側だ。先妻として、しっかり教えてやれよ」

 むーっとへの字口でむくれるショーンだが、先輩というヒューの言葉に気を良くし、未だ泣いている千里を優しく抱きしめた。

「辛いね。最初はすごく痛いから。でも、すぐに慣れるよ? もっと太いのが欲しくて堪らなくなる。でも、いきなり突っ込んだら千里のお尻は壊れちゃうからさ。少しずつ慣らしているんだよ。頑張って?」

 慰めているようで慰めになっていないショーンの話に、千里は思わず涙が引っ込んだ。ショーン本人が至極真面目なだけに滑稽だ。
 そんな彼女の脳裏も知らず、ショーンは千里を抱き上げて膝に乗せると泣き腫らした彼女の目元を舐めた。

「俺達の世界では、抱かれる側は妻と呼ばれる。自分用の雌を調教して子供を産ませるんだ。身体の相性の良い個体は体液を舐めたら分かるの。甘く感じるから。ああ…… チイもだね。涙すら甘いや」

 ふふっと笑うショーンを信じられない眼差しで見つめて無言な千里。

「俺が兄さん達に引き取られたのは十歳のころだったかな。獣人は十二歳で一端な働き手でね。草食や雑食の獣人は、その前に洗礼を受けるんだよ。肉食の番になれるかどうか。相性の良い個体が見つかれば、肉食の獣人が大切に育ててくれるんで、誰もが望まれるのを祈っていたよ」

 肉食獣が主体のオウチでは、身体の相性に重きをおく。肉食獣同士だと争いが起きるからだ。どちらも相手を支配しようと殺気立ち、血で血を洗う惨劇に発展しかねない。
 だから昔は、無力で庇護を必要とする草食獣や雑食獣が慰み者になった。幼いうちから調教し、肉食獣に従う従順な奴隷として。
 圧倒的に女の少ない世界だ。多くのケダモノの相手をさせられ疲弊し、散らされるか弱い子供達。そうこうするうちに草食獣や雑食獣らもみるみる数を減らしていく。
 これに危機感を覚えた教会が産まれた子ども達を慮り、十歳の洗礼と十二歳まで性的対象にしてはならないと制定した。
 前述したように獣人は身体の相性が重要。己の支配下にした者を愛し慈しむ傾向が強い。カニバリズムに発展するくらい、深く執着する。
 そういった良い関係が結ばれるよう、洗礼で子ども達にキスをさせ、相性の良い肉食獣の下に送るのだ。
 子供が生まれにくい獣人らの中でも、相性の良い個体は受胎しやすい。少しでも子孫を増やしたいオウチの苦肉の策。
 個別に子供を持たせず一族で管理するのだって、草食や雑食の子が親に性的暴力を振るわれないようにである。
 ケダモノの本能が強い獣人は、我が子であろうとも番った。むしろ眼に入れても痛くない最愛だ。その執着たるや凄まじいもので、支配欲はあっても憐憫の情など存在しない。
 そんな食うか食われるかな殺伐とした獣人の本能を抑えるには、卵のうちに子供を取り上げるしかないのだ。

 結果、今のように気の合う者同士が兄弟として暮らしたり、子供を産ませるための草食や雑食を妻として引き取るシステムが出来上がった。
 自分の子供を産める大切な個体だ。誰もが愛情深く慈しみ、己を受け入れる雌になるよう調教する。

 管理と合理性のみで出来上がったオウチのシステム。過去の教会関係者らが必死に努力した忍耐の賜物だった。

「最初は辛かったけどね、俺も。でも兄さん達は優しくて…… 調教に痛がって泣く俺を、ずっと抱きしめてくれてた。いつも気持ち好くしてくれて、俺も痛みを我慢できたよ」

 いかにも嬉しそうなショーンの顔。

 ……いや、それって児童虐待でしょ? 私のお尻、ズキズキして……… 慣らされてる? 私、慣らされてるの? 今っ?!

 愕然とする千里をよそに、ショーンの手が彼女の尻に捩じ込まれた玩具に触れた。くるくると撫でる指に背筋を震わせる千里。

「もう三番目の玩具だから。あと二つ。それを咥え込めるようになれば、千里は兄さん達のモノも入るようになるよ。……ああ、愉しみだねぇ。みんなで睦もう?」

 なんの疑問も恐れもなく、彼は満面の笑みで千里を抱きしめた。彼女の思考が凍りついているとも知らずに。

 ……は? ラウル達のモノを受け入れるって。お尻にっ?! はああーーっ?!

 知識として、そういったプレイがあることを千里は知っていた。だが、まさか、それが己の身に降りかかろうとは。

 思わず固まった彼女を困惑げに見つめるショーン。
 そんな二人に苦笑し、ラウルとヒューがショーンの手を取って立たせる。
 ギラつく本性を垣間見せる二人に、千里の本能がけたたましい警鐘を鳴らしていた。
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