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巻き付く舌との遭遇
しおりを挟む「……痛いよぅぅ。……抜いて?」
どれだけたっても薄れない酷い異物感。
痛みも続いており、ラウルに抱かれながら千里は懇願する。
その切ない眼差しが胸に突き刺さるラウルだが、少し前までの千里を思えば心を鬼にする他ない。
「……スライムが君をイきっぱなしにするとは知らなかったんだ。あんな状態が続けばチイは死んでしまうぞ? 君は獣人よりずっと弱いだろう? 最初は痛いけど慣れるから。我慢しような?」
宥めすかすように、ちゅっちゅとキスの雨を降らせ、ラウルは千里の唇に舌を差し込む。ぬるっと入り込んだ舌が、彼女の口内を舐め回してその奥深くまで潜っていった。
人間と違う長い舌。肉が薄いくせにびらびらと長いラウル舌は、彼女の厚ぼったい舌に絡まり、巻き付き、その根本が痺れるほど吸い上げた。
「んぅ……、ふあ…っ、ん……んん」
思わず嘔吐くほど喉の奥まで舐められ、喉元に感じるラウルの舌先。自身で触れたこともないような最奥をピチャピチャ擽る彼の舌技で、千里は身体が熱くなり朦朧とする。
「ずっるっ! 俺も、俺もっ!」
蕩けた顔の千里に口を寄せ、ショーンも長い舌を彼女の唇に潜り込ませた。
甘く淫らに踊る複数の舌先。獣人ならではだろう。身体の大きな彼等の舌は長く幅広で、二枚も入れられると千里の顎が外れそうになる。限界まで開かせた薄い唇の中を思う存分愉しむ二人。
器用に巻き付く舌が、千里の舌をがんじがらめにし、その締付けに千里は驚いた。
どーゆー構造っ?! ちょ……っ!
そんな彼女を余所に、千里を酸欠にするくらい愉しんでいた兩人が、みるみる目を見開いていく。
「んむ……っ? んんっ!」
「……甘い? ……な?」
「おう…… これって……」
眼を細めて貪る二人の強靭な舌。それを無理やり喉の奥まで呑み込まされ、酷く嘔吐きながら歪に蠢く千里の喉。白く滑らかな肌をなぞり、そこに感じる己の舌先にラウルの眼が酷薄な光を浮かべる。
体液を甘く感じるのは身体の相性が良い証拠。高確率で子供をなせる個体だ。
前述したとおり、卵の核となるスライムは己を守るために精を殺す粘液を纏うので、なかなか受精に至らない。
数をこなして粘液の殺菌力を上回る精を注ぎ、無理やり受精させる他ない獣人らの営み。
そんな中、相性の良い者同士ならその殺菌力を弱められる。お互いの出す分泌物がその受精を助けるのだ。
そういった個体にマーキングし、己の所有物とする行為を番うという。本能が選んだ最上の個体。
動物としての意識がそうさせるのだろう。己の遺伝子を残したい雄の支配欲が。
はあ……っと甘ったるい吐息を漏らし、二人は奇跡的に手に入れた最上の獲物に眼が眩む。
「……俺達の番にしよう。可愛い可愛いチイ。ずっと大切にするからな?」
「じゃあ、マーキングだね。しっかり歯をたてて刻まないとなぁ」
「……ほどほどにしとけよ? チイは弱い。スライムにすら殺されそうだったんだ。本気で抱いたら死ぬぞ?」
「そのへんはショーンに頼もう。まずはショーンで発散してから抱けば、俺等にも余裕が出る」
じっと肉食獣の兄らに見つめられ、ショーンは思わず天を仰いだ。
兄達の性欲発散は末っ子であるショーンの管轄。抱かれる者としてショーンを引き取り調教してきた彼らに、末っ子は逆らえない。
恋愛的な意味でなく、親愛的な繋がり。二人の子供を宿すために育てられたショーンは、当たり前に二人の妻だ。
それがオウチの世界の常識。恋心などという熱病は存在せず、所有するモノを守るという縄張り意識が顕著な世界。
強者に囲われ、守られ、丁寧に慈しまれたショーンが、兄達を受け入れるのは当然のこと。ただ、愛されすぎて子を授かれなかった不運を除けば、世間一般の幸せな兄弟そのものである。
「俺がチイを可愛がれるくらいの体力は残してくれよぉ?」
不貞腐れる末っ子に微笑み、ラウルとヒューは頷く。
「もちろんだ。むしろ、お前の筆降ろしだろう? 他の奴に突っ込ませたくはないが、チイならやらせてやるよ」
「そうだな。我が家の妻だし、浮気にはならん」
獣人は独占欲が強い。自分達の子供を授かるために育ててきたショーンが、他の男に突っ込むのも突っ込まれるのも許さない。そんなことになるくらいなら、二人は文字通りショーンを食べてしまうだろう。カニバリズム的な意味で。
それだけ肉食獣の支配欲は強いのだ。その番となる草食獣や雑食獣らには御愁傷様である。
「だいたい兄さん達はしつこいしヤり過ぎなんだよっ! おかげで受精しても流れちまうんだろうがっ!」
ぷんぷん怒る末っ子から、兄達はそっと眼を逸らす。
受精したばかりな卵は脆く、続けて酷い無体を働くと壊れてしまうのだ。普通ならば問題はない。スライムの核が卵子に変わり、その身体を母体に寄生させるまでの数時間。その間だけ無茶をしなくば受精卵が定着する。
……が、ラウルらの精力は絶倫で、一晩に何度もショーンの中へ精を注ぐ。それこそ毎夜のようにイきっぱなしな末っ子様。
満腹になるほど精をぶち込まれて失神するのも日常で、溢れ出した生温かい白濁液の中に、無惨なスライムの残骸を見る毎日だった。
「受胎スライムを殺すとか。どんだけだよっ!!」
返す言葉もなく眼を泳がせ、ヒューがぷんすかむくれたショーンを抱きしめる。
「すまん。分かっているが、お前が乱れているのを目の前にしたら止まらないんだよ」
ちゅうっと口づけながら末っ子の頭を撫でるヒューを苦笑いで見つめ、ラウルも小さく頷いた。
「そうだな。どれだけぶち込んでも足りない。それだけ俺達はお前が可愛いんだ」
情欲に染まった二人の瞳。発情は生き物の本能である。それに獣人は抗えない。番と定めたショーンに対する執着も半端ない。
「これからは千里がいるんだ。お前の負担も減るし、ひょっとしたら、お前にも子供が出来るかもしれんぞ?」
「女は卵じゃなく子供を産むんだそうだ。俺達の子供だぞ? 楽しみだな」
満面の笑みな兄達のセリフに、ショーンは思わず毒気を抜かれ千里を見下ろす。泣きつかれた彼女はいつの間にか眠っていた。
そうか。女は卵じゃなく子供を産むんだ…… うわあ、どんなんだろっ?!
わくわく顔を煌めかせる末っ子に眼を細め、ラウルとヒューも眠る千里を見守った。
獰猛な肉食獣らの檻に自ら飛び込んだとも知らない千里。だが、これが実は英断だったのだと、後に彼女は思い知らされるのである。
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