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番外編 カールの恋煩い1
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「エルザさんってルドルフさんと結婚するのかなぁ」
「ブッ」
カールは突拍子もないグリの言葉に、口に含んだ酒を吹いていた。
モンフォール伯爵は家門を継げず、かといって剣術があまり得意ではない為騎士団にも入れなかった男爵家の三男の自分を拾ってくれた心優しい人でもある。
――目に付いた放っておけない者を拾ってしまう性分はさすがに直して欲しいけどな。
災害後、領民の中で身寄りも働き口もないという者達の数は数百人にものぼった。災害後から二・三年は瓦礫の片付けや街の復興、道路の完備に畑の再興などやる事が山積みだった。グリもそんな風に居付いてしまった平民のうちの一人だった。
「もう汚いって! そんなにびっくりする事かよおじさん」
「俺の心はまだ若い!」
「それ十分おじさんじゃん」
「第一その口効き方はなんだ。伯爵に言い付けるぞ!」
「なんだよそれ、恰好悪ぃ」
軽口を叩きながら文句を言っているグリは、真夜中だというのに目の前に置かれた羊肉の串焼きを大口で頬張っている。
「……やっぱ若さかぁ?」
カールはその隣りに申し訳程度に添えてあるトマト串に手を伸ばした。
馬を走らせ急いで王都に来たのには理由がある。フェリックス六歳の誕生日会が開催されるからだった。しかし真夜中に着いてしまった為、宿を取ってもよかったが金を切り詰める生活に慣れてしまい、王都の宿は割高という事もあって払う気にはなれなかった。
「前に仲間から聞いた話だけど、エルザさんはルドルフさんとよく出掛けたりしているみたいなんだよな」
「出掛けるってどこに? っていうかルドルフさんって俺より年上だぞ」
「え、年下だよ。それなのにあの仕事っぷり! 俺でも惚れちゃうよなぁ」
カールは手に串を握ったまま動かなくなってしまった。
「……あれで年下だったの? オールバックのあの見た目で? 侯爵家の執事をこなせちゃうの?」
「そうっすね。あれれ、もしかして戦う前から戦意喪失って感じ? 俺はエルザさんを幸せにしてくれるならどっちでもいいけどね」
「そもそもなんで俺がルドルフさんとエルザを取り合う事になってんだ?」
「それじゃあエルザさんが他の誰かと結婚してもいいって事?」
「そりゃエルザの意志が重要だし。俺は別に何も……」
なぜかしどろもどろになってしまった時、後ろから柔らかい物が後頭部に当たった。
「男二人だけでいるなんて、もしかしてあんた達ソッチ?」
頭の上に話し始めたのは、酒場で色を売る仕事をしている女性だった。
「やめてくれよ! ただの同僚だって」
「だったらあたしと部屋に行かない? 別に三人でもいいんだけど、コレは弾んでね」
しかし何故かグリは顔を凍りつかせて固まっていた。後ろにあるのは店の入口。不思議に思って女性と一緒に後ろを振り返った時だった。
「……野宿でもしているのかと思ったけれど、そんな心配はいらなかったみたいね」
頭からマントを被ったエルザは口元だけを微笑ませていた。
「どうしてここに」
「朝方までやっている酒場なんてここくらいだもの」
「ち、違くて、今帰っても皆を起こすだけだからさ!」
なぜか言い訳のようになってしまい、後ろにいる女性の事は吹っ飛んでいた。
「朝になってもお酒の臭いが残っていたら許さないから。それと! その髭と髪もどうにかしてきて。いいわね!」
「はいッ!」
訓練の時のような声を出すと、エルザは酒屋を出ていってしまった。
「もしかして奥さん怒っちゃった?」
カールは我に帰ると店を飛び出した。
「カール会計は! まさか俺?」
どんどん進んでいくエルザに声を掛けた。
「危ないから一緒に帰ろう!」
しかし、掴んだ手は信じられない程に強い力で振り払われた。
「結構です!!」
「……エルザ? エルザ!」
我に返ると心配そうに覗き込むカトリーヌの姿があった。カトリーヌは現在妊娠九ヶ月。
「すみません、考え事をしておりました。大分形になりましたね」
日除け付きのテラスから周囲を一望した。
「お昼には誕生会を始められるわ」
誕生日を迎える孫の為にと、父親は梯子に登って庭の木々に飾りとおもちゃを吊り下げている。梯子の下では庭師が右往左往していた。
「でもお義父様は残念だったわ。外せない会議があるそうよ」
「それは残念でしたね」
「出席してくださったらフェリックスも喜んだのに。でも朝一番に誕生日の贈り物をして下さったから、きっとあともう少しじゃないかしら」
「あと少しですか?」
「そうよ、あと少し。きっと一緒にテーブルを囲める日が来ると思うの」
「そう仰るのならそうなのだと思います」
カトリーヌが嬉しそうに頷いた瞬間、玄関の方から大きな声が聞こえてくる。一気に賑わい始めた視線の先には、片手はアルベルトとしっかり手を握り、もう片方には贈り物で貰った訓練用の剣を誇らしげに持ったフェリックスが入って来た所だった。その後ろには顔が見えない程に高い箱を持ったカールが慎重に下へ置こうとした所で、フェリックスに叱られていた。
「そこじゃ駄目! エルザの所に持って行って!」
剣の先を動かしながらカールに指示を出すフェリックスに思わず苦笑いを浮かべていると、カールは箱をテラスまで運び、ようやく視界を塞いでいた物を手放した。
「それにしても凄いケーキですね。食べごたえがありそうだなぁ!」
「一人で食べちゃ駄目だよ! 皆で食べるの!」
そう言いながらカトリーヌの膝に抱き付くフェリックスは、もうすっかり少年の顔をしていた。アルベルトも隣りに座ると、そっと腰を引き寄せてきた。
「お疲れさまでした。フェリックスとの買い物は疲れたでしょう? それにしても凄い数の本ね」
「これは僕が読んであげる本で、これはお母様が読んであげる本。それでこれはお父様が読んであげる本!」
「凄いわ。きっとこの子はフェリックスのおかげでうんと頭が良くなるわね」
そう言って小さな手が膨らんだお腹を優しく撫でた。
「へへッ。あのね、ケーキのおじさんとお姉ちゃんも来てくれるって」
「良かったわね。でもやっぱりお店を締めるなんて悪いわ」
「今日は持ち帰り用のみにするから二人がいなくても問題ないらしい。その分も購入すると言ったら断られたよ」
「ふふ、一人占めする訳にはいかないものね。でもお店を開けているなら安心したわ。それにしても二人共」
カトリーヌの声にびくりとしたカールとエルザは、不自然な程に離れている距離で身構えた。
「喧嘩をしたのなら仲直りしていらっしゃい」
「喧嘩じゃありません! カールが変なのはいつもの事ですよ」
「勝手に誤解しているからだろ! 俺は別にあの人を……」
「カール、子供の前よ」
カールが気まずそうに下を見ると、フェリックスがまんまるの瞳でカールをじっと見つめていた。
「……向こうを手伝ってきます」
トボトボと離れていくカールの背中を見ながら、エルザは小さな溜息を吐いた。
「お疲れさまでした。エルザさん」
「ルドルフさん! お疲れさまでした。皆様楽しそうでしたね」
テーブルの上の食器を重ねながら今日の事を思い出していると、ルドルフは小さく笑った。
「あなたがずっと側におられたから、フェリックス様はあれほどお優しいお方に育ったのでしょう」
「恐れ多いです! カトリーヌ様とアルベルト様が愛情を注がれた結果ですよ」
するとルドルフは動かしていた手を止め、じっとエルザを見つめた。
「私はちゃんと知っています。あなたは奥様が傍におられない間もフェリックス様から片時も離れず、ずっと大事に育てられていました」
涙が浮かんでいく。確かにフェリックスへの愛情ならカトリーヌの次にあるという自負がある。エルザは言葉に詰まってしまった。
「すみません、泣かせるつもりはなかったのですが」
「なんだか今日は幸せ過ぎて駄目ですね」
「今晩少しだけお付き合い頂けませんか? 実はエルザに会いたいとせがまれておりまして」
「もちろんです! 着替える時間はありますか?」
「せっかく街に行くのですから、少しおしゃれをして行きましょうか」
ルドルフは感じていた視線が離れたのを横目で見ると、小さく微笑んだ。
「ブッ」
カールは突拍子もないグリの言葉に、口に含んだ酒を吹いていた。
モンフォール伯爵は家門を継げず、かといって剣術があまり得意ではない為騎士団にも入れなかった男爵家の三男の自分を拾ってくれた心優しい人でもある。
――目に付いた放っておけない者を拾ってしまう性分はさすがに直して欲しいけどな。
災害後、領民の中で身寄りも働き口もないという者達の数は数百人にものぼった。災害後から二・三年は瓦礫の片付けや街の復興、道路の完備に畑の再興などやる事が山積みだった。グリもそんな風に居付いてしまった平民のうちの一人だった。
「もう汚いって! そんなにびっくりする事かよおじさん」
「俺の心はまだ若い!」
「それ十分おじさんじゃん」
「第一その口効き方はなんだ。伯爵に言い付けるぞ!」
「なんだよそれ、恰好悪ぃ」
軽口を叩きながら文句を言っているグリは、真夜中だというのに目の前に置かれた羊肉の串焼きを大口で頬張っている。
「……やっぱ若さかぁ?」
カールはその隣りに申し訳程度に添えてあるトマト串に手を伸ばした。
馬を走らせ急いで王都に来たのには理由がある。フェリックス六歳の誕生日会が開催されるからだった。しかし真夜中に着いてしまった為、宿を取ってもよかったが金を切り詰める生活に慣れてしまい、王都の宿は割高という事もあって払う気にはなれなかった。
「前に仲間から聞いた話だけど、エルザさんはルドルフさんとよく出掛けたりしているみたいなんだよな」
「出掛けるってどこに? っていうかルドルフさんって俺より年上だぞ」
「え、年下だよ。それなのにあの仕事っぷり! 俺でも惚れちゃうよなぁ」
カールは手に串を握ったまま動かなくなってしまった。
「……あれで年下だったの? オールバックのあの見た目で? 侯爵家の執事をこなせちゃうの?」
「そうっすね。あれれ、もしかして戦う前から戦意喪失って感じ? 俺はエルザさんを幸せにしてくれるならどっちでもいいけどね」
「そもそもなんで俺がルドルフさんとエルザを取り合う事になってんだ?」
「それじゃあエルザさんが他の誰かと結婚してもいいって事?」
「そりゃエルザの意志が重要だし。俺は別に何も……」
なぜかしどろもどろになってしまった時、後ろから柔らかい物が後頭部に当たった。
「男二人だけでいるなんて、もしかしてあんた達ソッチ?」
頭の上に話し始めたのは、酒場で色を売る仕事をしている女性だった。
「やめてくれよ! ただの同僚だって」
「だったらあたしと部屋に行かない? 別に三人でもいいんだけど、コレは弾んでね」
しかし何故かグリは顔を凍りつかせて固まっていた。後ろにあるのは店の入口。不思議に思って女性と一緒に後ろを振り返った時だった。
「……野宿でもしているのかと思ったけれど、そんな心配はいらなかったみたいね」
頭からマントを被ったエルザは口元だけを微笑ませていた。
「どうしてここに」
「朝方までやっている酒場なんてここくらいだもの」
「ち、違くて、今帰っても皆を起こすだけだからさ!」
なぜか言い訳のようになってしまい、後ろにいる女性の事は吹っ飛んでいた。
「朝になってもお酒の臭いが残っていたら許さないから。それと! その髭と髪もどうにかしてきて。いいわね!」
「はいッ!」
訓練の時のような声を出すと、エルザは酒屋を出ていってしまった。
「もしかして奥さん怒っちゃった?」
カールは我に帰ると店を飛び出した。
「カール会計は! まさか俺?」
どんどん進んでいくエルザに声を掛けた。
「危ないから一緒に帰ろう!」
しかし、掴んだ手は信じられない程に強い力で振り払われた。
「結構です!!」
「……エルザ? エルザ!」
我に返ると心配そうに覗き込むカトリーヌの姿があった。カトリーヌは現在妊娠九ヶ月。
「すみません、考え事をしておりました。大分形になりましたね」
日除け付きのテラスから周囲を一望した。
「お昼には誕生会を始められるわ」
誕生日を迎える孫の為にと、父親は梯子に登って庭の木々に飾りとおもちゃを吊り下げている。梯子の下では庭師が右往左往していた。
「でもお義父様は残念だったわ。外せない会議があるそうよ」
「それは残念でしたね」
「出席してくださったらフェリックスも喜んだのに。でも朝一番に誕生日の贈り物をして下さったから、きっとあともう少しじゃないかしら」
「あと少しですか?」
「そうよ、あと少し。きっと一緒にテーブルを囲める日が来ると思うの」
「そう仰るのならそうなのだと思います」
カトリーヌが嬉しそうに頷いた瞬間、玄関の方から大きな声が聞こえてくる。一気に賑わい始めた視線の先には、片手はアルベルトとしっかり手を握り、もう片方には贈り物で貰った訓練用の剣を誇らしげに持ったフェリックスが入って来た所だった。その後ろには顔が見えない程に高い箱を持ったカールが慎重に下へ置こうとした所で、フェリックスに叱られていた。
「そこじゃ駄目! エルザの所に持って行って!」
剣の先を動かしながらカールに指示を出すフェリックスに思わず苦笑いを浮かべていると、カールは箱をテラスまで運び、ようやく視界を塞いでいた物を手放した。
「それにしても凄いケーキですね。食べごたえがありそうだなぁ!」
「一人で食べちゃ駄目だよ! 皆で食べるの!」
そう言いながらカトリーヌの膝に抱き付くフェリックスは、もうすっかり少年の顔をしていた。アルベルトも隣りに座ると、そっと腰を引き寄せてきた。
「お疲れさまでした。フェリックスとの買い物は疲れたでしょう? それにしても凄い数の本ね」
「これは僕が読んであげる本で、これはお母様が読んであげる本。それでこれはお父様が読んであげる本!」
「凄いわ。きっとこの子はフェリックスのおかげでうんと頭が良くなるわね」
そう言って小さな手が膨らんだお腹を優しく撫でた。
「へへッ。あのね、ケーキのおじさんとお姉ちゃんも来てくれるって」
「良かったわね。でもやっぱりお店を締めるなんて悪いわ」
「今日は持ち帰り用のみにするから二人がいなくても問題ないらしい。その分も購入すると言ったら断られたよ」
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「喧嘩じゃありません! カールが変なのはいつもの事ですよ」
「勝手に誤解しているからだろ! 俺は別にあの人を……」
「カール、子供の前よ」
カールが気まずそうに下を見ると、フェリックスがまんまるの瞳でカールをじっと見つめていた。
「……向こうを手伝ってきます」
トボトボと離れていくカールの背中を見ながら、エルザは小さな溜息を吐いた。
「お疲れさまでした。エルザさん」
「ルドルフさん! お疲れさまでした。皆様楽しそうでしたね」
テーブルの上の食器を重ねながら今日の事を思い出していると、ルドルフは小さく笑った。
「あなたがずっと側におられたから、フェリックス様はあれほどお優しいお方に育ったのでしょう」
「恐れ多いです! カトリーヌ様とアルベルト様が愛情を注がれた結果ですよ」
するとルドルフは動かしていた手を止め、じっとエルザを見つめた。
「私はちゃんと知っています。あなたは奥様が傍におられない間もフェリックス様から片時も離れず、ずっと大事に育てられていました」
涙が浮かんでいく。確かにフェリックスへの愛情ならカトリーヌの次にあるという自負がある。エルザは言葉に詰まってしまった。
「すみません、泣かせるつもりはなかったのですが」
「なんだか今日は幸せ過ぎて駄目ですね」
「今晩少しだけお付き合い頂けませんか? 実はエルザに会いたいとせがまれておりまして」
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