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本編2
モブ令嬢と第二王子は出奔する6
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「えーっと……シャルル様?」
体に積もった雪を払い落としながら怒った顔のシャルル王子に声をかけると、眉間の皺が一層深くなった。彼はどうしてこんなに怒っているのかしら。
原因がわからなくて私は困惑してしまう。だって『影』のお二人に護身術を教えていただいていただけだし。
……いつの間にかソルジャーになるための修行みたいになっていたけど。これを毎日やったら私はきっと強くなれるわね。
「ひえっ!」
小さく怯えた声を上げたのはドロシアさんだ。コレットさんも真っ青な顔になって震えながら地面に視線を落としている。小さな体のシャルル王子に歴戦の戦士であろうお二人が怯えている光景はなんだか不思議だ。
彼は目の前に立つとその小さな両手でそっと私の手を握った。外の冷気ですっかり冷えてかじかんだ手に彼の高い体温は心地よくて。思わず頬をゆるませてしまうのだけれどシャルル王子は怖いお顔のままだった。
「なにをしている、と聞いているんだ。アリエル」
彼はそう言うとピンク色の唇を尖らせながら上目遣いに見つめてくる。
「お二人に頼んで護身術を教えてもらっていたんです。一人でいる時に暗殺者に襲われたら困りますし!」
「……ドロシア、コレット。話は後で聞く」
「「はい! シャルル王子!」」
シャルル王子の言葉にドロシアさんとコレットさんは慌てて頭を下げた。ちょっと、二人はなにも悪くないのに!
「シャルル様、お二人はなにも悪く……」
「アリエルは私と来い」
「シャルル様!?」
私の手を取ると彼は私たちが寝室として使っている部屋へとどんどん歩いて行く。小さな後ろ姿からは本気の怒りが伝わってきて、私は不安な気持ちになってしまった。
……護身術を習おうとするのはそんなにいけないことだったんだろうか。でも私だってなにもできずに殺されるのは嫌だ。
……そしてそれ以上に彼の負担になるのが嫌だった。
私は、ただでもシャルル王子にご迷惑をかけている。私が身分ある美しい人だったら、王妃様も私を受け入れてくれていたはずだ。そしてシャルル王子に王妃様との仲違いと出奔なんてさせなかった。フィリップ王子にこんなにお世話になることもなかった。
挙句の果てには命を狙われ、シャルル王子にこれからまた大きな心労をかけてしまうのだろう。だったらその負担を減らすために、私自身が強くなればいいと思うのは……間違いなんだろうか。
握られた手をぎゅっと握ると彼も握り返してくれたので少しほっとする。
……シャルル王子が、好きだわ。
その手の温もりを感じながらしみじみとそう思う。
「シャルル様……好きです」
思わず口から零れた言葉に、彼からの返事はなかった。
そのまま無言で手を引かれ寝室に辿り着くと、シャルル王子は振り返り……泣きそうな表情で私を強く抱きしめた。
私の肩口に額を押しつけ無言でぎゅうぎゅうと抱きつく彼の背中を撫でると、小さく震えているのがわかった。私からも抱きしめて彼の言葉を待つ。しばらくそうしていると彼はようやく口を開いた。
「……私はそんなに、君から見て頼りないだろうか」
「いいえ!? 頼りにしてますよ!」
驚きに目を瞠りながら彼を見つめると潤んだ金色の瞳でじっと見つめられる。
頼りないなんて……そんなことあるはずない。彼は王都にいた頃は私に無遠慮に向けられる悪意からできる限り守ってくれた。今も体の負担にもなるだろう高位魔法の結界を屋敷に張って私の身を守ってくれている。不安を溶かすような優しい言葉も毎日くれる。それに私がどれだけ救われているか。そんな彼が頼りにならないわけがないのだ。
「君には私のせいで苦労ばかりさせている。だからこれ以上君に負担はかけたくないんだ。君のことは私が絶対に守るから、無理はしないでくれないか?」
彼は悲しそうな顔で首を傾げた。綺麗な形の額にキスをすると金色の瞳が猫のように細まる。
「心の底からシャルル様を頼りにしてます。……けれど。私、強くなりたいんです。シャルル様が私に負担をかけたくないと思っているのと同じで、私も貴方の負担を減らしたいんです」
「君を守ることが負担だなんて、あるはずないのに!」
「私もシャルル様と一緒にいるための苦労は苦労だなんて思ってませんよ?」
シャルル王子は唇を尖らせながらじっと私を見つめた。その白いかんばせに浮かぶ表情は少し困ったような、でもなんだか嬉しそうなものだった。
「……アリエルを選んで本当によかった。私は幸せ者だ」
彼は嬉しそうに笑ってまたぎゅっと私を抱きしめる。どうしてそんなことを思ってくれたのかはわからないけど、嬉しいなぁ。私もシャルル王子と一緒で幸せだ。だってこんなに大事にされている。
「――くちっ」
我慢していたくしゃみが口から漏れた。ええ、私今ずぶ濡れなんですよね。靴の中までびしょびしょで足先はしもやけになりそうだ。
「アリエル、湯を沸かそう。すまないな冷えているのに立ち話をさせてしまって」
彼は申し訳なさげにそう言うと寝室から続きになっている浴室に私を連れて行き、猫足のバスタブにお湯を張り始めた。魔石と呼ばれる魔力を込めた石を取りつけた蛇口からはコックを捻るだけで適温のお湯が流れ出す。
昔のヨーロッパのように使用人がお湯を沸かして一生懸命溜めてという工程がないのは本当に便利でありがたい。
「シャルル様も一緒に入るんですか?」
体から濡れそぼった服を落としながら彼にそう訊ねる。布はずしりと重そうな音を立てながら浴室の床に落ちた。思っていたよりもびしょびしょだったんだなぁ。風邪をひかないといいけれど。
それにしても……毎日抱き合っているので彼の前で裸になることへの抵抗感がどんどん薄れてきているような気がする。ちょっとは恥ずかしがった方が喜ばれるのかな。この辺りは考慮すべきことかもしれない。体しか取り柄がない私だから、彼に飽きられないための努力はちゃんとしないと。
「もちろん一緒に……」
「あっ。でもお兄様がいらっしゃってますし、別々に入った方がいいですかね」
「一緒に入る!」
シャルル王子は急いで言うと頬を膨らませながら服を脱ぎ始めた。
「先ほどの話の続きもしなければならないしな。戦闘狂のあの二人に習うなんて危ないことをしなくても、護身術くらい私に習えばいいんだ」
……あのお二人は戦闘狂なのか。そんな人たちに鍛えられたら本当に強くなれそうだなぁ。戦える令嬢、かっこいいと思います。悪くない、悪くないぞ……!
「……ダメだぞ、アリエル」
ジト目でシャルル王子に見られて私は頭に浮かんだ考えを慌てて振り払った。
体に積もった雪を払い落としながら怒った顔のシャルル王子に声をかけると、眉間の皺が一層深くなった。彼はどうしてこんなに怒っているのかしら。
原因がわからなくて私は困惑してしまう。だって『影』のお二人に護身術を教えていただいていただけだし。
……いつの間にかソルジャーになるための修行みたいになっていたけど。これを毎日やったら私はきっと強くなれるわね。
「ひえっ!」
小さく怯えた声を上げたのはドロシアさんだ。コレットさんも真っ青な顔になって震えながら地面に視線を落としている。小さな体のシャルル王子に歴戦の戦士であろうお二人が怯えている光景はなんだか不思議だ。
彼は目の前に立つとその小さな両手でそっと私の手を握った。外の冷気ですっかり冷えてかじかんだ手に彼の高い体温は心地よくて。思わず頬をゆるませてしまうのだけれどシャルル王子は怖いお顔のままだった。
「なにをしている、と聞いているんだ。アリエル」
彼はそう言うとピンク色の唇を尖らせながら上目遣いに見つめてくる。
「お二人に頼んで護身術を教えてもらっていたんです。一人でいる時に暗殺者に襲われたら困りますし!」
「……ドロシア、コレット。話は後で聞く」
「「はい! シャルル王子!」」
シャルル王子の言葉にドロシアさんとコレットさんは慌てて頭を下げた。ちょっと、二人はなにも悪くないのに!
「シャルル様、お二人はなにも悪く……」
「アリエルは私と来い」
「シャルル様!?」
私の手を取ると彼は私たちが寝室として使っている部屋へとどんどん歩いて行く。小さな後ろ姿からは本気の怒りが伝わってきて、私は不安な気持ちになってしまった。
……護身術を習おうとするのはそんなにいけないことだったんだろうか。でも私だってなにもできずに殺されるのは嫌だ。
……そしてそれ以上に彼の負担になるのが嫌だった。
私は、ただでもシャルル王子にご迷惑をかけている。私が身分ある美しい人だったら、王妃様も私を受け入れてくれていたはずだ。そしてシャルル王子に王妃様との仲違いと出奔なんてさせなかった。フィリップ王子にこんなにお世話になることもなかった。
挙句の果てには命を狙われ、シャルル王子にこれからまた大きな心労をかけてしまうのだろう。だったらその負担を減らすために、私自身が強くなればいいと思うのは……間違いなんだろうか。
握られた手をぎゅっと握ると彼も握り返してくれたので少しほっとする。
……シャルル王子が、好きだわ。
その手の温もりを感じながらしみじみとそう思う。
「シャルル様……好きです」
思わず口から零れた言葉に、彼からの返事はなかった。
そのまま無言で手を引かれ寝室に辿り着くと、シャルル王子は振り返り……泣きそうな表情で私を強く抱きしめた。
私の肩口に額を押しつけ無言でぎゅうぎゅうと抱きつく彼の背中を撫でると、小さく震えているのがわかった。私からも抱きしめて彼の言葉を待つ。しばらくそうしていると彼はようやく口を開いた。
「……私はそんなに、君から見て頼りないだろうか」
「いいえ!? 頼りにしてますよ!」
驚きに目を瞠りながら彼を見つめると潤んだ金色の瞳でじっと見つめられる。
頼りないなんて……そんなことあるはずない。彼は王都にいた頃は私に無遠慮に向けられる悪意からできる限り守ってくれた。今も体の負担にもなるだろう高位魔法の結界を屋敷に張って私の身を守ってくれている。不安を溶かすような優しい言葉も毎日くれる。それに私がどれだけ救われているか。そんな彼が頼りにならないわけがないのだ。
「君には私のせいで苦労ばかりさせている。だからこれ以上君に負担はかけたくないんだ。君のことは私が絶対に守るから、無理はしないでくれないか?」
彼は悲しそうな顔で首を傾げた。綺麗な形の額にキスをすると金色の瞳が猫のように細まる。
「心の底からシャルル様を頼りにしてます。……けれど。私、強くなりたいんです。シャルル様が私に負担をかけたくないと思っているのと同じで、私も貴方の負担を減らしたいんです」
「君を守ることが負担だなんて、あるはずないのに!」
「私もシャルル様と一緒にいるための苦労は苦労だなんて思ってませんよ?」
シャルル王子は唇を尖らせながらじっと私を見つめた。その白いかんばせに浮かぶ表情は少し困ったような、でもなんだか嬉しそうなものだった。
「……アリエルを選んで本当によかった。私は幸せ者だ」
彼は嬉しそうに笑ってまたぎゅっと私を抱きしめる。どうしてそんなことを思ってくれたのかはわからないけど、嬉しいなぁ。私もシャルル王子と一緒で幸せだ。だってこんなに大事にされている。
「――くちっ」
我慢していたくしゃみが口から漏れた。ええ、私今ずぶ濡れなんですよね。靴の中までびしょびしょで足先はしもやけになりそうだ。
「アリエル、湯を沸かそう。すまないな冷えているのに立ち話をさせてしまって」
彼は申し訳なさげにそう言うと寝室から続きになっている浴室に私を連れて行き、猫足のバスタブにお湯を張り始めた。魔石と呼ばれる魔力を込めた石を取りつけた蛇口からはコックを捻るだけで適温のお湯が流れ出す。
昔のヨーロッパのように使用人がお湯を沸かして一生懸命溜めてという工程がないのは本当に便利でありがたい。
「シャルル様も一緒に入るんですか?」
体から濡れそぼった服を落としながら彼にそう訊ねる。布はずしりと重そうな音を立てながら浴室の床に落ちた。思っていたよりもびしょびしょだったんだなぁ。風邪をひかないといいけれど。
それにしても……毎日抱き合っているので彼の前で裸になることへの抵抗感がどんどん薄れてきているような気がする。ちょっとは恥ずかしがった方が喜ばれるのかな。この辺りは考慮すべきことかもしれない。体しか取り柄がない私だから、彼に飽きられないための努力はちゃんとしないと。
「もちろん一緒に……」
「あっ。でもお兄様がいらっしゃってますし、別々に入った方がいいですかね」
「一緒に入る!」
シャルル王子は急いで言うと頬を膨らませながら服を脱ぎ始めた。
「先ほどの話の続きもしなければならないしな。戦闘狂のあの二人に習うなんて危ないことをしなくても、護身術くらい私に習えばいいんだ」
……あのお二人は戦闘狂なのか。そんな人たちに鍛えられたら本当に強くなれそうだなぁ。戦える令嬢、かっこいいと思います。悪くない、悪くないぞ……!
「……ダメだぞ、アリエル」
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