悪役令嬢は南国で自給自足したい

夕日(夕日凪)

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みこちゃんと僕(サイトーサン視点)

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小麦色に焼けた肌、大きな黒い目、海に入りすぎて少しだけ茶色がかっている男の子のように短く切った黒い髪。
人目を惹く美人ではないけれどよく見ると整った顔の表情がくるくると沢山変わるのを見るのが好きだ。

――――みこちゃんは、とても可愛い。

「ねぇユウ君。宿題見せて~!!」

今日も彼女は僕の机にべったりと頬を付けるようにして上目遣いにお願いしてくる。
彼女は成績は良いのだけれど少し抜けていて、忘れ物が多いのだ。
宿題をちゃんとやっているくせに忘れてくるなんておバカな子だなと思う。

「みこちゃん、ダメだよ?僕が見せちゃうと忘れ物癖が治らないでしょ?」

最終的には見せてあげる事になるのは分かっているのだけど、少し意地悪を言ってみる。
するとみこちゃんはぷくっと頬を膨らませた。
僕は可愛いなぁ、なんて思いながら膨らんだ頬を指で突いた。

「ユウ君ユウ君ユウ君~~!!お願い!本当にお願いっ!!今からまた自分で解いても間に合わないのー!!」

みこちゃんは僕の側にやってくるとぎゅうぎゅうと抱き着きながらお願いしてくる。
――――みこちゃん、年頃の男にそれはその……あまりに無防備といいますかね?
みこちゃんが変な男に騙されていつの間にか付き合っているなんて事にならないか僕は心配だよ?
まぁ……みこちゃんがこんなだから僕らは周囲に付き合ってると思われてて、彼女に想いを寄せている男も告白してきたりはしないんだけど。
みこちゃんは彼氏が欲しいなんて言う割にそういうところは無頓着なんだから。
……僕には都合がいいんだけどね。

「みこちゃん。次は忘れない?」
「絶対に忘れません!!」

みこちゃんはぱっと顔を上げると、目をキラキラと輝かせた。
しょうがないな、なんて言いながら僕は満更でもない気持ちで彼女にノートを貸すのだ。

みこちゃんに……告白したいと何度も考えていた。
でも僕はひょろがりの勉強だけが取り柄のもやしっ子で……もっと自分に自信を持てるようになってからじゃないと無理だなって……。
そう思っているうちに……高校を卒業してしまい、僕は東京の大学へ進学し、みこちゃんは離島で暮らす事になった。
大学に入ってからはみこちゃんにかっこいいって言って貰いたくてお洒落も頑張ったし、元から好きだった料理の腕も更に磨いた。
勉強も勿論頑張って……少しずつ自分に自信が持てるようになった。
もうすぐ長期休暇だ……みこちゃんのところへ行って、今度こそ告白をしよう。
そう思って彼女が住む離島に向かった僕が聞いたのは……。

――――漁に出たまま彼女が帰らない。そのまま一週間が経ってしまった。

彼女のご両親が泣きながら、僕にそう告げた絶望的な言葉だった。
ふらふらとしながら浜辺に向かう……ひょっこりとみこちゃんが現れるような気がして。

『ユウ君!びっくりしたぁ?』

なんて言いながらその辺の岩場から出てくるんじゃないかって……そんな事を考えながら、浜辺に座って海を眺めていた。
青空はどんどん夕暮れに染まり、夜の帳が訪れる頃に……僕は、ようやく声を上げて泣いた。

みこちゃん、好きだよ。本当に好きなんだ。
次に会えたらちゃんと言うから……神様がいるなら……また君に会わせて。


――――そんな願いが叶ったのか。
急に放り出された異世界で数年が経った頃……。

「ビアンカ・シュラットと申しますわ。サイトーサン様」

際立って美しい容貌、湖面の色の瞳に、銀糸の髪。
小首を傾げながらそう言う、みこちゃんとは全く似ていない異国の少女。
その顔に何故かみこちゃんの面影が重なって……。
みこちゃんだ、とすぐに確信できた。

「……みこちゃん?」

そう訊ねると彼女は大きく目を見開き、唇を小さく開いて。

「斉藤、優吾……?ユウ君?」

数年ぶりに、僕の名前を呼んでくれた。


「僕もルミナティ魔法学園に行こうかなぁ……」

彼女達が帰って一人になった研究室で僕は呟く。
年齢的に生徒としては無理があるから……教師枠で潜り込めないだろうか。
……彼女の側にはあの男がいるけれど……しかもみこちゃんも満更じゃない感じだったけど。
だけどせっかくまた出会えたのだし。まだもう少し、あがいてもいいんじゃないかな?
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