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執事は落ち込む(マクシミリアン視点)
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パラディスコ王国のユウゴ・サイトーサン伯爵がお嬢様が前世より懇意にしている男だった……。
その事実に、私の心は震えた。
彼と話す時お嬢様は、誰と話しているときよりも自然体で、楽しそうで。
お嬢様は私より彼と深い関係にあるのだと……嫉妬で胸を掻きむしりそうになった。
『恋人ではない』
と、お嬢様から真っ向から否定されたのもかなり心に堪えた。
お嬢様に否定された事自体が……というよりも卒業まで待つと格好つけて言ったものの私の心には余裕なんて欠片も無かったのだと改めて思い知らされたからだ。
お嬢様は美しい、外見だけじゃなくて内面もだ。
だから沢山の人々を惹きつけ、魅了する。
前世のお嬢様もとても素敵な人だったのだろう……サイトーサン伯爵のような魅力ある男を惹きつけていたのだから。
サイトーサン伯爵は美しい男で、彼女と前世から親しく、その上彼女が駆け落ちに求める条件全てに合致している。
お嬢様に彼を選ぶと言われてしまったら……私にはどうする事も出来ない、そう思い絶望した。
『私の方が好いております』なんて情けなく取り縋ったら優しいお嬢様は私と居てくれるのかもしれない。
だけどそれはあまりにエゴが過ぎるし、想い想われる関係でお嬢様と過ごしたいのだ。
(彼女は私じゃなくても大丈夫なのだろう)
……その事実はあまりに重く、私の心を曇らせた。
(私には、お嬢様しか考えられないのに)
心の中で独白し、自分自身に対して失笑した。
……我ながら、重たいし情けないと思ってしまう。
お嬢様が私じゃないとダメだと思えるような、そんな何かを得られるように頑張らなければならない……。
漠然としすぎている目標に眩暈を覚えて思わず遠い目になった。
「マクシミリアン」
サイトーサン伯爵の元から別邸に戻り、お嬢様のお部屋でお茶の準備をしていると。
お嬢様が私の名前を呼びながら駆け寄ってきた。
「なんです?お嬢様」
「マクシミリアン……元気、ない?」
彼女は胸の前で白い小さな手を組み、心配そうな顔でこちらを見つめてくる。
……なんてお可愛らしいのだろう。
ああ、それにしても。隠しているつもりだったのに……気落ちが顔に出ていたとは。
「……お嬢様とサイトーサン伯爵の関係に、つい嫉妬をしてしまいました。そしてお嬢様が彼を選んでしまったら、私には勝ち目がないと思い落ち込みました」
情けなさにお嬢様から目を逸らしつつも、息を吐いて正直に言う。
嘘をついて虚勢を張っても仕方ないと思ったのだ。
するとお嬢様は、大きく目を見開いて頬を染めた。
「……マクシミリアン。くっ……推しがあざと可愛いわ……」
お嬢様が何かを呟きながら両手で顔を覆って身悶えしている。
お加減がどこか悪いのだろうか、心配だ。
そう思いお嬢様に声をかけようとすると……お嬢様は顔を赤くしながら私に向かって両手を差し出してきた。
「……お嬢様?」
「マクシミリアン。ユウ君とは確かに仲良しだけど、ハグや唇以外へのキスを許可しているのは貴方だけよ?」
そう言ってお嬢様は、こてん、と可愛く首を傾げた。
…………天使か。お嬢様は天使なのか。
お誘いに甘えて小さな体に腕を回しぎゅっと抱きしめると、お嬢様はくすぐったそうに小さく笑いながら胸に顔を押し当ててきた。
腕の中に閉じ込めたお嬢様からは、ふわり、と優しい花の香りが漂ってくる……女性の強い香水は苦手なのだがお嬢様のものは上品で控えめでとても良い香りだと思う。
「元気を出してね?マクシミリアン」
腕の中の彼女が顔を上げて、可愛い顔で上目遣いにそう言うものだから。
――――思わず唇にキスをしてしまいそうになり、気合いで踏みとどまってその額に唇を落とした。
その事実に、私の心は震えた。
彼と話す時お嬢様は、誰と話しているときよりも自然体で、楽しそうで。
お嬢様は私より彼と深い関係にあるのだと……嫉妬で胸を掻きむしりそうになった。
『恋人ではない』
と、お嬢様から真っ向から否定されたのもかなり心に堪えた。
お嬢様に否定された事自体が……というよりも卒業まで待つと格好つけて言ったものの私の心には余裕なんて欠片も無かったのだと改めて思い知らされたからだ。
お嬢様は美しい、外見だけじゃなくて内面もだ。
だから沢山の人々を惹きつけ、魅了する。
前世のお嬢様もとても素敵な人だったのだろう……サイトーサン伯爵のような魅力ある男を惹きつけていたのだから。
サイトーサン伯爵は美しい男で、彼女と前世から親しく、その上彼女が駆け落ちに求める条件全てに合致している。
お嬢様に彼を選ぶと言われてしまったら……私にはどうする事も出来ない、そう思い絶望した。
『私の方が好いております』なんて情けなく取り縋ったら優しいお嬢様は私と居てくれるのかもしれない。
だけどそれはあまりにエゴが過ぎるし、想い想われる関係でお嬢様と過ごしたいのだ。
(彼女は私じゃなくても大丈夫なのだろう)
……その事実はあまりに重く、私の心を曇らせた。
(私には、お嬢様しか考えられないのに)
心の中で独白し、自分自身に対して失笑した。
……我ながら、重たいし情けないと思ってしまう。
お嬢様が私じゃないとダメだと思えるような、そんな何かを得られるように頑張らなければならない……。
漠然としすぎている目標に眩暈を覚えて思わず遠い目になった。
「マクシミリアン」
サイトーサン伯爵の元から別邸に戻り、お嬢様のお部屋でお茶の準備をしていると。
お嬢様が私の名前を呼びながら駆け寄ってきた。
「なんです?お嬢様」
「マクシミリアン……元気、ない?」
彼女は胸の前で白い小さな手を組み、心配そうな顔でこちらを見つめてくる。
……なんてお可愛らしいのだろう。
ああ、それにしても。隠しているつもりだったのに……気落ちが顔に出ていたとは。
「……お嬢様とサイトーサン伯爵の関係に、つい嫉妬をしてしまいました。そしてお嬢様が彼を選んでしまったら、私には勝ち目がないと思い落ち込みました」
情けなさにお嬢様から目を逸らしつつも、息を吐いて正直に言う。
嘘をついて虚勢を張っても仕方ないと思ったのだ。
するとお嬢様は、大きく目を見開いて頬を染めた。
「……マクシミリアン。くっ……推しがあざと可愛いわ……」
お嬢様が何かを呟きながら両手で顔を覆って身悶えしている。
お加減がどこか悪いのだろうか、心配だ。
そう思いお嬢様に声をかけようとすると……お嬢様は顔を赤くしながら私に向かって両手を差し出してきた。
「……お嬢様?」
「マクシミリアン。ユウ君とは確かに仲良しだけど、ハグや唇以外へのキスを許可しているのは貴方だけよ?」
そう言ってお嬢様は、こてん、と可愛く首を傾げた。
…………天使か。お嬢様は天使なのか。
お誘いに甘えて小さな体に腕を回しぎゅっと抱きしめると、お嬢様はくすぐったそうに小さく笑いながら胸に顔を押し当ててきた。
腕の中に閉じ込めたお嬢様からは、ふわり、と優しい花の香りが漂ってくる……女性の強い香水は苦手なのだがお嬢様のものは上品で控えめでとても良い香りだと思う。
「元気を出してね?マクシミリアン」
腕の中の彼女が顔を上げて、可愛い顔で上目遣いにそう言うものだから。
――――思わず唇にキスをしてしまいそうになり、気合いで踏みとどまってその額に唇を落とした。
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