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告白

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 それなのに、僕はいまだに呪縛に囚われていた。
 こうやって期待に胸を膨らませながらも、もう一人の自分が内側から囁く。
 
 セルジュがお前を恋愛的な意味で好きになるわけがない。
 勘違いしてはいけない。浮かれたら傷付くだけだ。
 だって、お前はずっと誰にも愛されてこなかった人間だ。
 セルジュが友達になってくれたのは奇跡のようなもので、それ以上を望むのは身に過ぎること。
 その想いを口に出そうすれば、きっと天罰が下る。
 
 ――大司教に腹を刺された時のようにね。
 
 僕は染み出した額の汗を拭い、浅い呼吸を繰り返した。
 勇者を名乗りながらも臆病な僕は、いつだってその声に従い、なるべく傷付かない方法を選んできた。

 けれど、それは本当に正しかったのだろうか。
 素直な心を告げることは、そんなにいけないことだったのだろうか。
 誰にも理解されなかったのは、僕が心を閉ざしていたせい。
 誰にも愛されなかったのは、僕が誰も愛そうとしなかったせい。
 諦めずに手を伸ばし続ければ、欲しいと口にすれば、掴めるものだったんじゃないだろうか。
 
 僕は呼吸を整え、勇気を振り絞り、声を発した。
「魔聖対戦が終わればセルジュとは会えなくなると思ってた。だから僕は、ラフラ王女の依頼を受けることを決めたんだ。そうしたら、何らかのかたちで君に関わっていける。君はいずれアリシアさんを妃に迎えるだろうけど、想うくらいなら許されると思っていた」

 僕は震える手でセルジュの服を掴み、唇を噛みしめた。
 遠い昔に忘れた筈の感覚が蘇る。
 鼻の奥がツンとして、下瞼が熱くなる。
 ずっと、言いたくても言えなかった言葉がこみ上げるけれど、喉が詰まって出てこない。
 大きな手が、優しく僕の背中を撫でた。
 僕は小刻みに息を吸い込み、何度も言いかけては止める。
 そんな僕を、セルジュは黙って待っていてくれていた。
 目を閉じ、大きく息を吸い込んで、僕は声を絞り出す。

「君のっ、君のことが好きだ、セルジュッ……」

 吐き出した途端、僕の目から涙が溢れ出た。
 僕はセルジュに縋りつき、声を上げて泣いた。
 セルジュは僕を抱きとめ、ずっと背中をさすってくれていた。
 その優しさに触れ、更に涙腺が緩む。
 涙はなかなか止まってはくれなかった。
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