この世界が終わるまで 勇者の僕は恋をする

すなぎ もりこ

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魔国との契約

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 アリシアは迷いなくセルジュの角に刃を当て、ギコギコと削り始めた。セルジュも大人しくされるがままになっている。
「ちなみにこれは刑罰用の角切です。普段は法を犯した者に用います」
「俺の場合、角片方でも十分事足りるんだ。まあ、切られるのは頭に響くからあまり気持ちのいいものじゃないけど。それにしたって一瞬のことだからたいしたことはねえ」
「セルジュ様は慣れていらっしゃいますものね」
「セルジュ、魔王のくせに法を破ったのか?」
「そうやって罪人となった者の気持ちを学ぶことも時に君主として必要な見識を深めるに必要なことであってだな……」
「取れました。はいどうぞ、オリバー様」
 アリシアから角を受け取り、僕は手に握らされたそれをまじまじと見つめた。セルジュに視線をやれば、ご高説を無視されてムスッとして腕を組んでいる姿があった。
 こうやって見る限りは、なんの支障もなさそうである。
 その後、アリシアの機転で契約書に保護の魔力が施された。
「火や水を弾くし、力を加えられても破けません」
 何者かが無いものにしようとしても無駄ってわけです。と、得意げに胸を張るアリシアに礼を言い、僕は二人を前に宣言する。
「必ず王の署名をもらってきます。魔族への誤解を解いてズーガリアの間違いを正してもらう。魔国が他国と有効な関係を築けるように力を尽くしたいと思います」
 セルジュが一歩前に踏み出し僕の両腕を掴んだ。アリシアの前であるというのに、心配そうに歪めた顔をいつもの距離感で近づける。
「無理するなよ。もし駄目でも俺たちはお前を責めたりしない。ズーガリアにいづらくなったらここへ戻って来い。お前は瘴気にも影響を受けない体質だから、この国でも快適に過ごせるはずだ」
「成約したら契約書を届けるよ」
「あんまり遅いようなら攫いに行く」
 セルジュは僕を抱きしめた。両手が塞がっている僕は為す術もなく、セルジュの肩越しにアリシアへと目をやる。アリシアは腰に手を当ててニコニコとほほ笑んでいた。
「俺はまだ諦めてないからな!」
 何のことを言っているのだろうと戸惑う僕を見て、アリシアはさらに笑みを深くする。
「はいはい。そちらの方は私もお力になりますから。未練がましいですよ、セルジュ様。そろそろ行かせておあげなさい」
「ちっ、わかったよ」
 渋々身体を離したセルジュだったが、あろうことか僕の顎に指をかけて顔を寄せた。僕は慌てて横を向こうとするが、顎を掴まれて引き戻される。
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