この世界が終わるまで 勇者の僕は恋をする

すなぎ もりこ

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残酷な好奇心

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 いつものように激しい口付けを交わしたあと、セルジュは僕の耳元に囁いた。
「オリバー、勃ってるのか?」
「……いちいち訊くな」
 僕はセルジュから身体を離し、股間を隠すように膝を立てた。
「いつものごとくの生理現象だ」
 僕の股間が反応することは、すでにバレていた。深い口付けにより快感が引き起こされ、自然とそうなってしまうのだと僕は説明した。相手に関わらず。
 それからセルジュは行為のあとに必ず確かめるようになっていた。
 いつものごとくの単なる好奇心だ。
 セルジュはニマニマと嬉しそうに笑う。
「お前を勃起させるほど、俺は口付けが上達した。やっぱり俺様は万能だな」
「僕にしか通用しないんだから、その能力は宝の持ち腐れだよ。どうせ直ぐに必要なくなる」
 僕は深呼吸をして滾るものを落ち着かせた。今夜の記憶もあとで散々オカズにさせてもらうが、今は耐えなければならない。
「ちょっと触らせてくれ」
 僕はギョッとして、こちらに伸ばされる手を掴んだ。
「バカを言うな」
「人間のはどんな風なのか知りたい」
「知らなくていいだろう、そんなこと」
「こう、先っぽが少し膨らんでいて二つに割れているのか? 裏に筋があって……」
「そんな感じだよっ!」
 僕はセルジュの言葉を遮ると、掴んでいた手を乱暴に押し戻した。
「ふぅん、やっぱり同じなのか。自慰は毎日か? 一日に何回抜くんだ?」
 あからさまに嫌がる態度をとっているにも関わらず、セルジュは更に質問を続けた。
「話したくない」
 僕はセルジュとは反対側を向き、口を引き結んだ。
「知りたい。教えてくれ。誰でどんな想像をして抜くんだ?」
 言えるわけがない。
 褐色の肌に組み敷かれ大きく足を開かれ、そそり立つ陰茎で後蕾を突かれるなど。
 僕がそんな想像をしていると知れば、セルジュは怒り狂うだろう。
 時には四つん這いになり獣のように後ろから犯されて、腹の上で淫らに腰を振り快感に喘がされて。
 たとえ妄想の中でも自分がそんな扱いを受けていると聞けば、セルジュは僕を責めるだろう。僕に激しい嫌悪を感じるはずだ。

 ――あと一年。

 僕がこの恋に没頭できる時間は限られている。
 だから、なんとしても守りたい。
 セルジュから淫らな気を摂取しながら、それを糧に創り上げた愛欲の世界。
 そこで過ごす幸せを失いたくはなかった。
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