この世界が終わるまで 勇者の僕は恋をする

すなぎ もりこ

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はじめての口付け

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「ぼっ……き、君な!」
 セルジュはニヤリと笑う。
「人間はそんなに簡単に欲情すんのか? そりゃあ、魔族の餌になるのも当たり前だなぁ。俺たちを恐れるのは、己の脆弱さゆえというわけだ」
「魔族は気持ちの隙間に入り込むのがお得意だと聞いている。魔力を使って不安を煽ったり、快楽堕ちをそそのかすそうじゃないか。君たちが卑怯なだけだろう」
 とはいえ実際にその現場を見たことはないし、すべて聞いた話だ。セルジュと接するうちに僕の魔族に対する印象は変わっていた。
 セルジュの話から推測するに、魔族は人間と何ら変わらない。生活も思考も。
 実力主義で、魔力の高い者が上位に立つが弱者を守る法律もあるらしい。
 だとしたら、むしろ人間の方が·····
 ふいに考え込む僕を、セルジュが急かす。
「だけど、お前は弱くないだろ? なんたって勇者だものな。精神も鍛えられているし、魔力が効かないから魔族の魅了にも耐性がある」
 挑発するセルジュを僕は無言で睨んだ。
「舌を絡めたくらいで欲情しないよなぁ」
「先日協力してやっただろう。これ以上君の好奇心に付き合う義理はない。僕も練習する必要を感じないしね。お互いの気持ちが盛り上がれば、自然と上手くやれるものだと思う」
「先に気持ちよくなれば気分も盛り上がるだろ」
「俗な考え方だな。悪いが、僕は気持ちを優先したい方だ」
「お前が付き合ってくれなければ、俺は一生舌を絡める口付けができないんだぞ!」
「たいしたことか。魔族にとっては当たり前のことで必要不可欠な行為じゃない。君が不満を感じてどうする。模範となるべき立場の君が受け入れなくては国民が可哀想だ」
「屁理屈はいい!」
 セルジュは踵を瓦に打ち付けた。
「チューしたい! ベロを絡ませなければ気が済まない! 公務が手につかない!」
 子供のように駄々をこねるセルジュを見て、僕は呆れた。
 人の気も知らないで。自覚のないクソガキめ。
 魔族の成長は早いのか、同い年だというセルジュの見た目は立派な大人のそれだ。体格も僕より一回り大きい。威圧感を伴った濃厚な色気は周囲の空気を歪ませるほど。そればかりか始終甘く刺激的な匂いを放っている。
 それなのに、セルジュの中身は年齢相応、いや、もっと幼い。
 いつまでも子供のように好奇心旺盛で、純粋だ。
 本人は僕の兄貴分を気取っているようだが、精神的な成長は明らかに僕の方が勝っている。
 僕は聞こえるようにため息をつくと、セルジュの説得に乗り出した。
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