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はじめての口付け
⑤
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それから暫く後の夜のことだ。
「あれは絶対そうだ」
真剣な顔をして詰め寄るセルジュの胸を押し、僕は顔を逸らした。
「もう、わかったよ」
「舌を入れて、こう、絡ませているんだ」
「わかったってば」
「隙間から見えたし、音も聞いた。あれはそういう音だ!」
目を輝かせて己の舌を指すセルジュを、僕はたしなめた。
「君さ、しょっちゅう人間国に来すぎだろう。しかも恋人の逢い引きを覗くなんて。魔王ともあろうものが品性を疑われるぞ」
しかし、セルジュは反省するどころか盛大に鼻から息を吐き、胸を張る。
「俺は探究心が旺盛だ。自分のいいところだと思っている! 古い理ばかりに囚われていては進歩がないからな。色々見て学ばないと革新的な政策は打ち出せない」
「立派なことを言っているようだけど、結局は僕に勝ちたいだけだよね?」
「口付けの上達はお前にとっても悪いことじゃないだろうが。俺はお前とあれをやってみたいぞ!」
僕は顔を覆う。
無邪気にディープキスを所望するセルジュの鈍感さが憎い。僕がどうなってしまうのかなんて考えもしないのだろう。
僕はセルジュに不埒な欲を向けている。激しい口付けをして自制心を保てる自信がない。
「何度も唇を食み合わせてもいたな。こう、角度を変えてクチュクチュと……」
その言葉だけでもれなく滾ってしまう。僕の意思は、脆く危うい。
「……やらないぞ」
「なんで?!」
セルジュは僕の両肩を掴んで揺らす。
「減るもんじゃなし! やりたいやりたいやりたい……やろうぜ!な!」
まるで子供が缶蹴りにでも誘うかのような言い草である。
「·····あのな、君は忘れているかもしれないが、人間にとっての口付けは恋愛感情の延長線上にあるものであって……」
「その先にあるのは情欲だよな」
セルジュは言い淀む僕の言葉の先をケロリと告げた。
「わ、わかっているなら、僕と君でやるのは不適切だってこともわかるだろ?」
「お前、口付けで興奮するの? 勃起する?」
「あれは絶対そうだ」
真剣な顔をして詰め寄るセルジュの胸を押し、僕は顔を逸らした。
「もう、わかったよ」
「舌を入れて、こう、絡ませているんだ」
「わかったってば」
「隙間から見えたし、音も聞いた。あれはそういう音だ!」
目を輝かせて己の舌を指すセルジュを、僕はたしなめた。
「君さ、しょっちゅう人間国に来すぎだろう。しかも恋人の逢い引きを覗くなんて。魔王ともあろうものが品性を疑われるぞ」
しかし、セルジュは反省するどころか盛大に鼻から息を吐き、胸を張る。
「俺は探究心が旺盛だ。自分のいいところだと思っている! 古い理ばかりに囚われていては進歩がないからな。色々見て学ばないと革新的な政策は打ち出せない」
「立派なことを言っているようだけど、結局は僕に勝ちたいだけだよね?」
「口付けの上達はお前にとっても悪いことじゃないだろうが。俺はお前とあれをやってみたいぞ!」
僕は顔を覆う。
無邪気にディープキスを所望するセルジュの鈍感さが憎い。僕がどうなってしまうのかなんて考えもしないのだろう。
僕はセルジュに不埒な欲を向けている。激しい口付けをして自制心を保てる自信がない。
「何度も唇を食み合わせてもいたな。こう、角度を変えてクチュクチュと……」
その言葉だけでもれなく滾ってしまう。僕の意思は、脆く危うい。
「……やらないぞ」
「なんで?!」
セルジュは僕の両肩を掴んで揺らす。
「減るもんじゃなし! やりたいやりたいやりたい……やろうぜ!な!」
まるで子供が缶蹴りにでも誘うかのような言い草である。
「·····あのな、君は忘れているかもしれないが、人間にとっての口付けは恋愛感情の延長線上にあるものであって……」
「その先にあるのは情欲だよな」
セルジュは言い淀む僕の言葉の先をケロリと告げた。
「わ、わかっているなら、僕と君でやるのは不適切だってこともわかるだろ?」
「お前、口付けで興奮するの? 勃起する?」
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