愚痴聞きのカーライル ~女神に捧ぐ誓い~

チョコレ

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第二章 魔匠を継ぐ者

(23)結合を断つ刃

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作戦開始の合図が響き渡る。

アルマが再び氷獄牢フロストプリズンを唱えると、その声とともに凍てつく白い霧が彼女の手から広がり始めた。冷気はまるで生き物のようにゴーレムへと伸び、瞬く間にその巨体を包み込む。冷たい結界が形作られ、ゴーレムの表面は再び凍りついていく。立ち上がろうとする動きが鈍り、ついには完全に封じられる。「今よ!」アルマの鋭い声が冷気の中を貫いた。

その声を受けて、カーライルは迷いなく動き出す。一瞬の躊躇もない。その動きは正確で、無駄がなかった。ゴーレムの右足へと滑り込みながら、双剣を一閃させる。剣は冷気に弱まった結合部分を鋭く捉え、深々と食い込む。「バキィンッ!」と響き渡る音とともに、マナの束が砕け散る。ゴーレムの巨大な体が不安定に傾き、戦場全体が緊張の波に包まれる。

「ほな、次はウチの番や!」フィオラが活気に満ちた声をあげると、勢いよくゴーレムの体へ駆け上がった。軽やかに跳躍し、まるで舞うようにして右腕の付け根に狙いを定める。リュックから引き出したアルカナカノンを手に持つ彼女の目は真剣そのもので、戦いへの集中と興奮がその表情に表れていた。

「いっくでぇえええ!」フィオラが叫びながら、アルカナカノンにメタルベアの鋭利な爪を投入する。その爪は鉱石さえ切り裂く強度を持つ、冷たく硬質な素材だ。フィオラの手が器用に動き、爪を正確にセットすると、鋭い金属音とともにアルカナカノンが火を噴いた。

強烈な衝撃波が筒から放たれ、高速で回転する刃のような軌跡を描きながらゴーレムの右腕の付け根を直撃する。冷気で脆くなっていた結合部分は一撃で滑らかに切断され、「バキィイインッ!」という破裂音を伴ってゴーレムの右腕がもぎ取られた。巨大な腕が地面に激突し、轟音と共に広間全体が揺れる。砕け散ったクリスタルの破片がきらめきながら四方へ飛び散り、光の粒がまるで星屑のように舞い落ちた。

「やったで!」フィオラが勝ち誇った声を上げる間もなく、カーライルが再び動き出す。ゴーレムの傾いた巨体を冷静に観察し、その左足へと素早く跳び移る。狙うのは、またも冷気で弱った結合部。剣を振り上げた彼の動きには、一瞬の迷いもなかった。

十年のブランクがあろうとも、カーライルの冒険者としての研ぎ澄まされた感覚が宿る双剣は、迷いなく結合部を捉えた。「バギィンッ!」と鋭い破裂音が広間に響き、冷気で脆くなった繋ぎ目が断ち切られる。ゴーレムの左足は支えを失い、巨体はバランスを崩して床に沈む。地響きが戦場全体に広がり、重々しい振動が三人の足元を揺らした。

「次は首や!」フィオラは冷静さを保ちながらも、闘志を燃やした声で叫び、鋭い視線をゴーレムの首元に向けた。彼女は即座にアルカナカノンを構え、その引き金を引く。高速で放たれた刃が首の結合部へと一直線に飛び込み、冷気で脆くなったマナの束へ深々と食い込む。鈍い光が裂け目から漏れ出し、ひび割れが放射状に広がり始めた。

「こりゃ手強いわ!さすがコアに近いだけある!」フィオラは息を整えつつ、自信に満ちた笑みを浮かべながら次の素材をリュックから取り出す。「ほな、これでトドメ刺したる!」彼女はメタルベアの鋼鉄の牙を慎重にカノンにセットし、その動きには無駄が一切ない。

放たれた衝撃波は、鋭く回転しながら冷気に覆われた結合部へ到達。刃が氷のような繊細さで結合部を削り取るたび、冷たい輝きが散り、崩壊の兆しを示していた。

「ドガァンッ!」という破裂音とともに、ゴーレムの首がその巨体から切り離される。首が地面に落下した瞬間、大地が激しく揺れ、広間全体に轟音が響き渡る。散り散りに舞う光の粒が宝石のように輝きながら地面に降り注ぎ、戦場には静寂が訪れた。

カーライルは荒い息を吐き、疲労に震える手でゆっくりと双剣を鞘に収めた。汗にまみれた顔に浮かぶのは、激闘を乗り越えた者の静かな達成感。その瞳には確かな勝利の光が宿り、長きにわたる戦いが終わったことを実感していた。

「これで決まりやな!」フィオラは喜びを抑えきれない笑顔で声を弾ませた。その明るい声には、ただの安堵ではなく、仲間とともに危機を乗り越えた誇りが滲んでいた。「最高の連携やったわ、ほんま!」

アルマは深い息をつき、肩の緊張をゆっくりと解きほぐした。その顔には安堵の表情が広がり、緊張感に包まれていた体全体がようやく解放されていく。冷や汗で濡れた額を手で拭いながら、小さく微笑む。「みんな、お疲れさま。これで終わりね…」

戦いが終わった余韻の中で、三人は互いに視線を交わした。その中には言葉を超えた信頼と絆が確かに宿っていた。
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