私のバラ色ではない人生

野村にれ

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ロンド王国王妃4

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「ドレスのことも、侍女から伺いました。あのようなドレスを王女が着るなど、私は馬鹿だと言っているようなものなのに」

 侍女から事情を聞いて、何てことをしてくれたのだと思った。側妃は似合っていればいいじゃないと、国王の横で笑っていたが、そんなわけがない。

「似合っているから、着ているだけだとおっしゃっていましたよ」
「なんてことを…情けない」
「私はとても危険なドレスをよく着るものだと思いましてね」
「危険?」
「ペロンとしたら乳首が、ベロンをすれば乳房が出るドレスですよ?サブリナ王妃陛下、着れますか?」

 ソアリスはペロンの際は親指と人差し指で摘まむ仕草をし、ベロンの際には片手を上下に素早く動かす仕草を行った。

「え…」
「私はとてもではありませんが、着れないと思っていたのですよ?ですからね、フローラ王女にロンド王国の女性はそれが当たり前なのかと思ったのです」
「そのようなことは、あり得ません」

 サブリナはソアリスの発言に、どういう意図なのか分からず、動揺していた。

「お国柄ということで、胸部を出すことが正装ということであれば、そんなことも気にならないのかもしれませんけど」
「はい」

 ソアリスは乳房丸出しドレスを着るような国に、嫁がせたらどうかという意味も込めて言ったのである。

「フローラ王女、どうされるおつもりですか?」
「はい、現在まだ検討中ではありますが、早急に国内の貴族に嫁がそうと思っております」

 それで失敗したのではないかと思ったが、今は口を出すことではないと、ソアリスも口を噤んだ。

「そうですか」
「はい」

 サブリナは不安そうに答えたが、ソアリスはにっこりと微笑んだ。

「サブリナ王妃陛下の謝罪だけは、受け取りました」
「…え、それは」
「側妃は足腰が悪いのでしょうか?」
「え?」

 サブリナはソアリスがどういう意図で、言っているのか理解が追い付かなかった。

「それとも、国外には出られないのでしょうか?」
「えっと…」
「それとも、私はぁ、陛下のぉ、お側にぃ、いないとぉ、いけませんからぁ、なんて言ったりするのかしら?」

 サブリナとクーナ、サブリナについて来た護衛も今日、一番の驚きを見せた。それでも、大袈裟に驚いたりはしない。

「私の元へやって来た、側妃希望の令嬢の口調ですわ。後ろ手に捕獲して、投げ捨ててやりましたけど」

 メディナとポーリアは、深く頷き、ソアリスの護衛は微動だにしない。

「そうなのですか?」
「煩わしいだけですからね、陛下に放り投げたのです。あのような者を相手にするのが、私はこの世で一番嫌いですの」

 サブリナは強く見せるためでもなく、大袈裟に言っているのではなく、この前の若々しい王妃は、本当にやったのではないかと思えていた。

「サブリナ王妃陛下が謝罪をということも、理解しています。側妃のいない私が頭の中で考えただけですが、親だと言うのなら、謝罪に行かせてくださいというのではないかと思えて来たのです」
「…それは」
「側妃は母親なのだから、私が行きます。私も一緒に行かせてくださいなどと言いましたか?」
「それは」
「おっしゃっておりません!」
「クーナ…」

 サブリナは叱りつけることはせずに、絞り出すような声で言った。

「サブリナ王妃陛下は、私の言ったことを伝えてくださればいいと思います。お叱りを受けてしまうかしら?」
「いえ、それは大丈夫です」
「では、そのように伝えてくださいませ。失礼ですが、ご子息は優秀なのでしょうか?」
「はい、とは母親の私は言い辛いところですが」
「いえ、ご子息はお二人とも優秀でらっしゃいます」

 クーナが三度目の声を上げた。

「仲も良いかしら?」
「はい、仲の良いご兄弟です」
「それはとってもよろしいわね、お見送りいたしましょう」
「ですが」

 ソアリスは再び、にっこりと微笑み、そのままアンセムも呼んで、どこか不安そうなサブリナを見送った。
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