私のバラ色ではない人生

野村にれ

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批評1

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 アンセムは何度か側近たちに様子を伺わせに行ったが、重厚なドアから声は聞こえなかった。怒鳴り付けていたりすれば、僅かに聞こえてくるので、安心していた。

「何と話したのだ?」

 とは言っても、きちんと聞いて置かなければならない。

「いえね、私が被害を被ったわけではないでしょう?被ったのはミレスゴート公爵家じゃない?」
「ああ」
「だから、なぜ教育をしてきたはずサブリナ王妃陛下が、あんな王女を野放しにしたのかと思って、その理由を聞いて、終わらせようと思ったのだけど」
「だけど?」

 アンセムはソアリスの見送りの良い笑顔に、若干の嫌な予感を感じていた。

「サブリナ王妃陛下の侍女がね、私に向かって言ったの。『王妃陛下は、側妃様のせいで辛い思いをされているのです!側妃のいらっしゃらない、ソアリス王妃陛下に分かりません』と」
「それは」

 アンセムは遠い記憶で、ソアリスに側妃を娶ると言った時のことが思い出されて、言葉が続かなかった。

「だからね、お話をしながら想像してみたの。私がサブリナ王妃陛下だったらと、ブリブリーヌが乳房丸出しドレスを着て、王女なのよと男漁りをして、公爵家の夜会を乱したと想像してみたの」
「一応、聞くがその名は誰だ?」

 大体、想像は付くが、聞いたこともない名前が出て来た。

「想像上の鼻クソ妃の娘よ?」
「そ、そうか。酷い名前だな」

 いくら鼻クソ妃でも、アンセムの側妃となるのならば、自分の娘となり、さすがに付ける名前ではない。

 だが、アンセムもソアリスの影響で、鼻クソ妃はすっかり受け入れている。

「鼻クソ妃がブーリンなの」

 ソアリスが話をしながら、頭の中で登場したブーリン鼻クソ妃と、ブリブリーヌ王女である。二人とも、顔に大きな黒子がある。

「その名も酷いな」
「実際にいれば、身を持って分かったけど、実はいなかったんだから仕方ないじゃない!仮名よ!」
「あ、ああ…」

 アンセムはソアリスが侍女たちに、『側妃いなかったのね』と何の感情もなく、言っていたことを知っている。ということは、居ると思われていたことに驚いたが、自分のせいだと思い、何も触れずにいた。

 ゆえに何とも言えない気持ちになったが、ソアリスは気にする様子もない。

「それでね、私がサブリナ王妃陛下だったら、鼻クソ妃に母親だと言うのならお前が行って、チクビーラ王女、いえ乳房丸出し娘に代わって、頭をこすりつけて謝罪して来いと言うなと思いまして」
「っ!言い直しても、またも酷い名前が聞こえたが?」

 メディナとポーリアは、なるほどフローラ王女からチクビーラかと、うんうんと納得している。

「いえ、だってあのドレス。ペロンってやれば乳首が出るようなドレスだったよ?何度か、試してやりたい衝動に駆られたもの」

 実はミレスゴート公爵家で、ちょっとやってみようかしらと何度か考えていた。

「やらなくて良かったよ」
「私の前にあんな餌をぶら下げられたら、やってくれと言っているのではないかと思ったくらいよ?」

 確かにソアリスの前に出していいものではない。誰よりも出した相手が悪い。

「確かにそのようなドレスを選んだ王女が悪いが…」
「ケイトが内緒で着ていたら、陛下だってケイトを抱えて撤収するでしょう?」
「それは、まあそうだな」

 ソアリスにそっくりなケイトが、そんなドレスは絶対に着ないとは思うが、冗談でもさせるわけにはいかない。

「でしょう?まあ、それはいいのだけど、サブリナ王妃陛下は情けないとは思っているようだったけど、側妃の娘だからとは認めないの」
「思っていたとしても、そんな言い訳は通用しない。王妃として、謝罪をと思ったのではないか?」
「ええ、でも普通、乳房丸出し娘の母親だったら、私が謝罪に行く。もしくは一緒に行きますって言うのではないかと思ったの」
「確かにそうだな」

 誰が謝罪をするべきかという点では、王妃も立場上、問題はないが、母親である側妃だろうと、アンセムも思った。
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