【完結】言いたくてしかたない

野村にれ

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いいわけ

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「ココのところは…大丈夫よね?」
「どうでしょう?スッキリしないとは言いましたわ」
「え?それは、そうですわよね…無理もないとは思いますけど」
「ち…ブルゾン嬢のことが分からないと、はいそうですかとは言えませんわ」

 〇えみと呼びそうになるのも、もはや侯爵令嬢としては、末期症状が近いのではないかと思っておりますの。

「気になることは、しっかり話し合ってね」
「ええ、そうですわね」

 それよりも理解して貰えない大問題を抱えているなどと言えるはずもなく、曖昧にほほ笑むしかなかった。

 レオナルドはキシリを手伝いで、忙しくしているようで、両親も私が何も言わないことで、婚約解消とは思っていないと思う。

 正直、小山持ちに嫁ぎたいからと、婚約解消が出来るとも思えない。

 ココは久し振りにレオナルドから手紙を貰って、邸に行くと応接室にはレオナルドと一緒にキシリがいた。

「あら?キシリ様。私、お邪魔ではないかしら?」
「いいや、邪魔なのは私の方だろうが、説明をしたいと思って来たんだ」
「説明ですか?」
「レオを巻き込んだのは私だからな、それでココ嬢が悩んでいると聞いて同席させて貰ったんだ」

 悩みはそこではないのだがと思いながら、話を聞くことにした。

「ブルゾン嬢のことは、私が無理に言って頼んだんだ」
「そう伺っています。ですが、すぐに拘束すれば良かったのではありませんか?」
「証拠がなかったんだ」
「既に被害者がいたのでしょう?」
「だが、魅了眼などとは思わないだろう?」
「そういうことですか、キシリ様ならすぐに分かったのかと思っておりましたわ」

 優秀な魔術師であるキシリなら、すぐに〇えみが魅了眼だと、気付いたのだと思っていた。それなのにハーレムを築く理由が必要だったのかとは思っていた。

「いや、おかしいことに気付いてはいたが、分からなかった」
「私がすぐに分かったような言い方をしてしまったから。伝え方が良くなかったな…すまない」
「鑑定の魔術に優れたものが見ても、信じられないという状況だったんだ」
「ほう」

 魅了眼という眉唾ものに、皆が混乱していたのかもしれない。

「それで、授けられたというのはどうなったのですか?」
「あれはそう言っている。誰かに施されたのだろうが、相手は分からない。神様と言っていて、誰が行ったのかは分からない」

 おや?何だか乙女ゲームのような展開っぽいのではないか?

「神様?」
「ああ、だが自身が使ったことは紛れもない事実だから、禁術使用で裁かれることになる。レオは不誠実な真似は一切していない」

 うんうんと言わんばかりにレオナルドは横で頷いているが、親友なのだから説得力に欠ける。ギター〇の『〇念っ!』を思い出していた。『お前ら親友ですから!〇念っ!心の友〇り!』だろうか、いやもっといいチャッチーな〇りがありそう。

 ギターは売っているかもしれないが、楽譜もないのに、かき鳴らせるだろうか。

「ココ、信じて貰えないだろうか…?」

 〇田〇区のことを考えて、何も答えないココに、不安になったのはレオナルドは、恐る恐る聞いた。

「私が実際に見ていたのはハーレム?未来の一妻多夫だけですからね、はいそうですかと、信じるとは言えませんわね」
「キシリの証言でも駄目か?」
「あなたの親友ではありませんか、ココが誤解しているんだよ~説得してくれよ~頼むよ~なんて言われたら、絶対証言するでしょう?」
「それはそうだが…」
「わざわざお二人が時間を割いて、説明しようと思ったのは、クリネック嬢が婚約解消に動いているからですか?」

 まだブルゾン嬢のことで、忙しいはずの二人がわざわざそろって説明しているのは、解消になるかもしれない婚約があるからだろう。

 相手の方はしたくないと言っているようだが、クリネック嬢は潔癖であるため、婚約解消したいと訴えている。潔癖というところも、らしいとココは思っていた。


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本日もお読みいただきありがとうございます。

11話で終わりとなりますので、
あと3話となります。

最後までどうぞよろしくお願いいたします。
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