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双子
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リオードとジュリを迎えに行く日がやって来た。父・イサードよりも、母・マイルダの方がいいだろうと、二人で行くことになった。
イサードとパウラは、準備は任せて置きなさいと留守番となった。手続きは既にイサードが済ませている。
「ルイフォード様」
すっかり産後から回復したベルーナは、二人を連れて現れた。
「見て…二人とも、ベルアンジュに似ているの…」
そう言ってベルーナは泣き出してしまい、離れるのが辛いのもあるのではないかと思ったが、リオードとジュリの顔はそっくりではないのだが、面差しが二人ともベルアンジュに似ていた。
「ああ…」
「本当だわ…ベルアンジュが笑っているみたい…」
ルイフォードは言葉を失い、マイルダはキャッキャとはしゃぐ二人に、ベルアンジュを強く思い出した。
「顔立ちがハッキリして来たら、ベルアンジュがいて…心から産んで良かったと思ったのです。ベルアンジュはお腹を痛めるのはあなただから、母親は私ではなくていいと書いていましたが、私はベルアンジュの子どもを、出来れば似ている子を産みたかった…だからとても嬉しくて…」
ベルーナはぽろぽろと涙を流して、微笑んだ。
「ルイフォード様の顔を見たら、堪らない気持ちになってしまって、産後で感情が大きく出やすくなっているみたいの、ごめんなさい」
「いや、ありがとう。本当に…私もとても嬉しい」
「命を繋ぐことが全てではないのかもしれません。幸せになれるなんて、とても曖昧ですよね、でも皆に生まれて来て良かったと思って欲しいのです。二人をどうか、よろしくお願いいたします」
ベルーナは深く頭を下げた。ベルアンジュの子どもだと育んで来たが、きっと二人もベルーナは子どもだと思っているのだろう。
それは子どもを愛する、紛れもない母親の姿だった。
「承知いたしました」
「偉そうに申し訳ありません」
「いや、当たり前だと思う。幸せの基準は人それぞれだが、生まれて来て良かったと、思える人生を歩ませたいと思っている」
「はい…」
「ベルーナ嬢、いや、もうベルーナ夫人かな?結婚おめでとう」
「あ、ありがとうございます」
ベルーナは思いもよらなかった言葉に、急に恐縮した。
「バスチャン伯爵家は大丈夫そうか?」
「思った通りの展開になりました、父はプライドが高いですから。籍も抜いたと手紙まで届いたので、結婚しました。もう関係ありませんから」
「何かあれば力になるからな」
「ありがとうございます。いずれ結婚したと手紙を送ろうとは思っていますが、今はこれでいいと思っています。これからはエリーと必死で勉強をするつもりです」
「そうか」
ルイフォードも乳母であるエリーのことは既に聞いていた。
上手くいかなければ、二人がこちらで暮らせるように手配もするはずだったが、バスチャン伯爵はベルーナが想像していた展開を起こした。
オーラスとリンダと、ベルーナも笑顔でリオードとジュリを見送り、パウラが手配した面倒を看て貰っていた乳母と一緒に母国に戻った。
ルイフォードは、すやすや眠る二人の顔を見て、これからは父親として、生きていく思いを強くした。
二人は鼻は二人ともルイフォードに似ていたが、リオードは口元、ジュリは目がベルアンジュに特に似ており、さらに心から愛おしいと思えた。
ベルアンジュはベルーナに書かれていた通り、私が母親でなくていいと思うかもしれないが、ベルーナはベルアンジュに似ていることを本当に嬉しく思っていた。
見た目でなくても良かったが、見た目なら分かり易い。二人には複雑な環境となるが、ベルアンジュを感じながら生きて欲しい。
邸に着くと、父と叔母が待ち構えており、熱烈歓迎を受けた。
イサードとパウラは、準備は任せて置きなさいと留守番となった。手続きは既にイサードが済ませている。
「ルイフォード様」
すっかり産後から回復したベルーナは、二人を連れて現れた。
「見て…二人とも、ベルアンジュに似ているの…」
そう言ってベルーナは泣き出してしまい、離れるのが辛いのもあるのではないかと思ったが、リオードとジュリの顔はそっくりではないのだが、面差しが二人ともベルアンジュに似ていた。
「ああ…」
「本当だわ…ベルアンジュが笑っているみたい…」
ルイフォードは言葉を失い、マイルダはキャッキャとはしゃぐ二人に、ベルアンジュを強く思い出した。
「顔立ちがハッキリして来たら、ベルアンジュがいて…心から産んで良かったと思ったのです。ベルアンジュはお腹を痛めるのはあなただから、母親は私ではなくていいと書いていましたが、私はベルアンジュの子どもを、出来れば似ている子を産みたかった…だからとても嬉しくて…」
ベルーナはぽろぽろと涙を流して、微笑んだ。
「ルイフォード様の顔を見たら、堪らない気持ちになってしまって、産後で感情が大きく出やすくなっているみたいの、ごめんなさい」
「いや、ありがとう。本当に…私もとても嬉しい」
「命を繋ぐことが全てではないのかもしれません。幸せになれるなんて、とても曖昧ですよね、でも皆に生まれて来て良かったと思って欲しいのです。二人をどうか、よろしくお願いいたします」
ベルーナは深く頭を下げた。ベルアンジュの子どもだと育んで来たが、きっと二人もベルーナは子どもだと思っているのだろう。
それは子どもを愛する、紛れもない母親の姿だった。
「承知いたしました」
「偉そうに申し訳ありません」
「いや、当たり前だと思う。幸せの基準は人それぞれだが、生まれて来て良かったと、思える人生を歩ませたいと思っている」
「はい…」
「ベルーナ嬢、いや、もうベルーナ夫人かな?結婚おめでとう」
「あ、ありがとうございます」
ベルーナは思いもよらなかった言葉に、急に恐縮した。
「バスチャン伯爵家は大丈夫そうか?」
「思った通りの展開になりました、父はプライドが高いですから。籍も抜いたと手紙まで届いたので、結婚しました。もう関係ありませんから」
「何かあれば力になるからな」
「ありがとうございます。いずれ結婚したと手紙を送ろうとは思っていますが、今はこれでいいと思っています。これからはエリーと必死で勉強をするつもりです」
「そうか」
ルイフォードも乳母であるエリーのことは既に聞いていた。
上手くいかなければ、二人がこちらで暮らせるように手配もするはずだったが、バスチャン伯爵はベルーナが想像していた展開を起こした。
オーラスとリンダと、ベルーナも笑顔でリオードとジュリを見送り、パウラが手配した面倒を看て貰っていた乳母と一緒に母国に戻った。
ルイフォードは、すやすや眠る二人の顔を見て、これからは父親として、生きていく思いを強くした。
二人は鼻は二人ともルイフォードに似ていたが、リオードは口元、ジュリは目がベルアンジュに特に似ており、さらに心から愛おしいと思えた。
ベルアンジュはベルーナに書かれていた通り、私が母親でなくていいと思うかもしれないが、ベルーナはベルアンジュに似ていることを本当に嬉しく思っていた。
見た目でなくても良かったが、見た目なら分かり易い。二人には複雑な環境となるが、ベルアンジュを感じながら生きて欲しい。
邸に着くと、父と叔母が待ち構えており、熱烈歓迎を受けた。
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