【完結】愛しくない、あなた

野村にれ

文字の大きさ
67 / 344

【アイルーン】三人の妃

しおりを挟む
「後見人に、自白剤の許可も得ているのだぞ?どうせ知っているのだろう?」
「っ」

 ハウニーは父親から知らされており、自白剤なんてと動揺していた。だからこそ、犯人が拘束されたと聞き、ホッとしていた。

「陛下は私どもに、自白剤をお使いになるなんて思っておりませんわ」
「やはり知っていたのだな?全員に口止めしたのに、皆、口が軽いことだな」
「お父様は、私のためを思って伝えてくれただけでございます」

 ロウスも覚悟して置くようにという意味で、知らされていたが、ディオエルはそんなことするはずないと思っていた。

「皇帝が口止めしたのにか?」
「っ」

 さすがにそう言われてはロウスも返す言葉がなく、黙るしかなかった。

「エオナは?」
「はい、私も知らされてはおりました。ですが、潔白が証明できるのであれば、私は受けたいと思っております」

 妃たちの実家は誰も口が軽かったが、エオナだけは潔白が証明が出来るなら、使えばいいと思っていたところである。

「な!」
「エオナ?」

 裏切られたような感覚になったのは、ハウニーとロウスであった。

「自白剤であれば、これ以上の証明はなるのではありませんか?」
「でも」
「前のように廃人になるわけでもなく、寝込むだけで、薬も効くというではありませんか。何の問題があるというのです?」
「でも、疑われて、自白剤を使われたなんて!」
「番が殺されたのならば、妃が疑われるのは、当然ではありませんか?」

 エオナはハウニーやロウスとは違って、疑われることに理解を示していた。

「そんなことないわ!」
「なぜです?」
「私は番に、関わっていないからよ」
「それは証明にはならないのではありませんか?だから、自白剤という手法が使われているのでしょう?皇帝宮には権力が渦巻いているではありませんか?誰も不利益なことを洩らさなかっただけかもしれません」

 エオナの言うことが、全てだとディオエルも実感していた。何か知っていても、誰も危険を犯してまで、訴える者がいなかっただけではないか。

「でも、犯人はもう拘束されているのよ?それなのに、自白剤なんて」

 ハウニーはあまりに必死になっており、エオナには何かあるのかと感じるほどであった。

「そんなに否定していると、疑われるかもしれませんよ?」
「な!そんなはずないでしょう!」
「ハウニー様、落ち着いてください。先程、犯人は拘束されているとおっしゃられていたではありませんか。私たちではありませんわ」

 ロウスは落ち着きを取り戻した様で、冷静に諭した。

「関与している者も、拘束している」
「ほら、私たちではございませんでしょう?殺す理由がありませんもの」
「そうなのですね」

 ロウスは自信満々に言い、ハウニーもまたホッとした様子を見せた。

 エオナは表情を変えなかったが、ディオエルはその様子に疑似番のことを聞こうかと思ったが、それは3人一緒ではない時の方がいいだろうと、今は聞かない方がいいと判断した。

「まだ裏付けが取れていない部分がある。もしも何か分かれば、そなたたちにも自白剤を使うことになる」
「…え」
「陛下、それは」
「承知いたしました」
「下がっていい」

 エオナは頭を下げ出て行こうとしたが、ハウニーとロウスは納得いかない様子で残っていた。

「下がっていい」
「っはい、失礼いたします」
「…失礼します」

 渋々という形ではあったが、2人も出て行き、ディオエルは少し緊張しながら、テイラーの方を向いた。

「テイラー嬢、何か分かっただろうか?」
「ええ、再度呼んで貰いたい方がおります」
「誰だ?」
「名前が分からないのですが、ふわっとしたブロンドの髪を、肩のところで斜めに結んでいた女性です」
「ライシード、分かるか?」

 ディオエルには、全く記憶にない女性であった。

 そして、その言葉にルーベルトはテイラーの横で、唇をグッと噛み締めた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。

沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。 すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。 だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。 イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。 変わり果てた現実を前に、 夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。 深い後悔と悲しみに苛まれながら、 失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。 しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。 贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。 そして、母の心を知っていく子供たち。 イネスが求める愛とは、 そして、幸せとは――。

実は家事万能な伯爵令嬢、婚約破棄されても全く問題ありません ~追放された先で洗濯した男は、伝説の天使様でした~

空色蜻蛉
恋愛
「令嬢であるお前は、身の周りのことは従者なしに何もできまい」 氷薔薇姫の異名で知られるネーヴェは、王子に婚約破棄され、辺境の地モンタルチーノに追放された。 「私が何も出来ない箱入り娘だと、勘違いしているのね。私から見れば、聖女様の方がよっぽど箱入りだけど」 ネーヴェは自分で屋敷を掃除したり美味しい料理を作ったり、自由な生活を満喫する。 成り行きで、葡萄畑作りで泥だらけになっている男と仲良くなるが、実は彼の正体は伝説の・・であった。

私は既にフラれましたので。

椎茸
恋愛
子爵令嬢ルフェルニア・シラーは、国一番の美貌を持つ幼馴染の公爵令息ユリウス・ミネルウァへの想いを断ち切るため、告白をする。ルフェルニアは、予想どおりフラれると、元来の深く悩まない性格ゆえか、気持ちを切り替えて、仕事と婚活に邁進しようとする。一方、仕事一筋で自身の感情にも恋愛事情にも疎かったユリウスは、ずっと一緒に居てくれたルフェルニアに距離を置かれたことで、感情の蓋が外れてルフェルニアの言動に一喜一憂するように…? ※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。

【完結】愛も信頼も壊れて消えた

miniko
恋愛
「悪女だって噂はどうやら本当だったようね」 王女殿下は私の婚約者の腕にベッタリと絡み付き、嘲笑を浮かべながら私を貶めた。 無表情で吊り目がちな私は、子供の頃から他人に誤解される事が多かった。 だからと言って、悪女呼ばわりされる筋合いなどないのだが・・・。 婚約者は私を庇う事も、王女殿下を振り払うこともせず、困った様な顔をしている。 私は彼の事が好きだった。 優しい人だと思っていた。 だけど───。 彼の態度を見ている内に、私の心の奥で何か大切な物が音を立てて壊れた気がした。 ※感想欄はネタバレ配慮しておりません。ご注意下さい。

間違えられた番様は、消えました。

夕立悠理
恋愛
※小説家になろう様でも投稿を始めました!お好きなサイトでお読みください※ 竜王の治める国ソフームには、運命の番という存在がある。 運命の番――前世で深く愛しあい、来世も恋人になろうと誓い合った相手のことをさす。特に竜王にとっての「運命の番」は特別で、国に繁栄を与える存在でもある。 「ロイゼ、君は私の運命の番じゃない。だから、選べない」 ずっと慕っていた竜王にそう告げられた、ロイゼ・イーデン。しかし、ロイゼは、知っていた。 ロイゼこそが、竜王の『運命の番』だと。 「エルマ、私の愛しい番」 けれどそれを知らない竜王は、今日もロイゼの親友に愛を囁く。 いつの間にか、ロイゼの呼び名は、ロイゼから番の親友、そして最後は嘘つきに変わっていた。 名前を失くしたロイゼは、消えることにした。

絶対に間違えないから

mahiro
恋愛
あれは事故だった。 けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。 だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。 何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。 どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。 私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。

元侯爵令嬢は冷遇を満喫する

cyaru
恋愛
第三王子の不貞による婚約解消で王様に拝み倒され、渋々嫁いだ侯爵令嬢のエレイン。 しかし教会で結婚式を挙げた後、夫の口から開口一番に出た言葉は 「王命だから君を娶っただけだ。愛してもらえるとは思わないでくれ」 夫となったパトリックの側には長年の恋人であるリリシア。 自分もだけど、向こうだってわたくしの事は見たくも無いはず!っと早々の別居宣言。 お互いで交わす契約書にほっとするパトリックとエレイン。ほくそ笑む愛人リリシア。 本宅からは屋根すら見えない別邸に引きこもりお1人様生活を満喫する予定が・・。 ※専門用語は出来るだけ注釈をつけますが、作者が専門用語だと思ってない専門用語がある場合があります ※作者都合のご都合主義です。 ※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。 ※架空のお話です。現実世界の話ではありません。 ※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります) ※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。

妹がいなくなった

アズやっこ
恋愛
妹が突然家から居なくなった。 メイドが慌ててバタバタと騒いでいる。 お父様とお母様の泣き声が聞こえる。 「うるさくて寝ていられないわ」 妹は我が家の宝。 お父様とお母様は妹しか見えない。ドレスも宝石も妹にだけ買い与える。 妹を探しに出掛けたけど…。見つかるかしら?

処理中です...