【完結】愛しくない、あなた

野村にれ

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【テイラー】さようなら

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「お姉様がそうしたいなら、いいんじゃない?」
「ラオナッ!」
「だって、お姉様の希望なんでしょう?婚約解消は可哀想だけど、そうしたいなら叶えてあげてもいいじゃない」

 テイラーはその言葉に思った通りだと、ふっと笑った。

「では決まりですわね、次期子爵もこうおっしゃっているのですから」
「え?次期子爵?」

 そう呼ばれて、ラオナは嬉しそうにしており、両親はその様子に怪訝な表情を浮かべた。

 その後、メルトの有責で婚約は解消になり、慰謝料が支払われた。ミニーのことも話していたので、男爵家からも慰謝料が支払われることになった。

「本当に出て行くのか?」
「ええ」
「出て行くことなんてないわ」

 学園にも通わなくなっていたのだが、両親はラオナに不安を感じたのか、止めようとしている。だが、16歳になっているテイラーは既に許可なく、除籍の届けを出すことも出来る。

「いいえ、婚約を解消された子爵令嬢など価値もありませんし、私は自分の力で暮らしてみたいのです。色々、メイドにも教えて貰いましたから」
「仕事は見付かったのか?」
「それは、探していただいておりますので、大丈夫だと思いますわ」

 時間が出来たので、メイドに仕事を教わったり、市井で仕事を探して貰うように登録もしている。

「テイラーは、ラオナが認めると分かっていたのか?」
「ええ、おそらくミニー嬢を唆したのも、あの子でしょうね」
「何ですって」

 フアナは、目を吊り上げた。

「認めないでしょうけど、認めたところで恥ですし、慰謝料も貰ってしまいましたからね。黙って置けばいいのです」
「だが」
「ラオナは子爵家を継ぎたかったのでしょうから、いいではありませんか」
「そんなこと…」
「しっかり学ばせればいいのです」
「メルト殿はどうするつもりなんだろうか…」

 メルトは子爵家の次男で、ミニーの男爵家も嫡男がおり、継ぐような家はない。それでもミニーは構わないのだろうから、とてもお似合いだと思っていた。

「文官でも騎士にでもなれば良いのではありませんか」
「まあ、考えることはないな。銀行に全ての慰謝料はテイラーの名前で預けてある。あれはテイラーのお金だから、困ったら使いさない」
「ええ、ありがとうございます」

 婚約解消のおかげで、余裕のための軍資金も手に入り、テイラーは幸運だったとすら思っている。

「困ったら、迷わず言いなさい」
「ありがとうございます」

 両親は悪い人ではない、受け入れられなかっただけで、テイラーも歩み寄らなかった責任はある。だが、自分を偽ってまで、娘でいたいとも思えなかった。

 そして、五日後にはエイク子爵家からも除籍する手続きをして、テイラーはエイク子爵家を出て行った。

 両親とラオナも見送ったが、ラオナはすぐに邸に戻り、両親はテイラーの後姿を子どもでありながら、自分たちの元から離れていくことが決まっていたかのように感じていた。

 学園でも目立つ存在ではなかったが、テイラーが退学したことが知れ渡り、メルトとミニーはまだ婚約はしていなかったが、悪い噂となっていた。

 ローリーもミニーの側から離れて行った。

「ローリー!どうして、最近一緒にいてくれないのよ」
「友人の婚約者を奪うような人と一緒にいたくないだけよ」
「っな!そんな風に思っていたの?」
「当たり前じゃない」
「でも、テイラーだって納得していたの」
「納得していても、婚約を壊したのは事実じゃない」

 ローリーは何となく、テイラーとミニーと一緒にいたが、一緒にいたかったのはテイラーだった。テイラーはお喋りではないが、所作は美しく、側にいるのが心地よかった。

 テイラーがいなくなった今、ミニーと一緒にいる理由がない。

 ミニーはもういいわと、メルトと一緒にいるようになったが、メルトも終始一緒にいるよりも、友人たちともいたかったので、煩わしく感じるようになっていった。


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本日もお読みいただきありがとうございます。

本日も1日2話、投稿させていただきます。
17時にもう1話、投稿します。

どうぞよろしくお願いいたします。
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