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俺の飼い主さまを探してる
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じゃあ俺も。腕を伸ばして頭を撫でてあげる。背は負けちゃったけど、弟を可愛がるお兄ちゃんになった気分。ふふふ。
「いーこ、いーこ、よしよし」
「……っ」
目を見開き真っ赤な顔の転入生くん。
あれ?
と思ったけど、追手が近付く気配を感じて逃げ出した。
後ろから「待っ、空牙!」と転入生くんの声が聞こえた気がする。でも、勘違いだよね。
一年前に生徒会室で会っただけだから俺も転入生くんの名前は覚えてない。あの日、頭を撫であいっこしていたら急に皆が騒ぎ出して
『それではあなたの希望通り今後、生徒会は一切関わりを持ちません。当然あなたも接触して来ないようにお願いします』
『えっ、いやそれ……』
『はいはい、ダメでーす。文句は受け付けません。転入生は絶対くうちゃんに近付かないでくださーい!』
『話の分かる奴で本当に助かるぜ。じゃあな、二度とここへは現れるなよ!』
『はあ!? くそ、ふざけ――』
ベリッと引き剥がされた俺。
そのままドアの外に押し出される転入生くんの姿。
チャラ会計に耳を塞がれて、皆がどんな話をしたのかは分からない。ただ、副会長が
「やはり彼は撫でられたくなかったようです。顔を合わせると不愉快な思いをさせてしまいますし、空牙も彼を避けて二度と口をきかないでくださいね。ああ、名前を覚える必要も全くありませんから」
と教えてくれた。
……あ。どうしよう、忘れてた。
俺たった今、転入生くんと口きいちゃったし頭もなでなでした。ごめんなさい。
会長にも「約束しろよワンコロ。破ったらお仕置きするからな」って言われてた。会長に怒られるとすごく悲しくなるから嫌なのに。
だ、黙ってたらバレないかな?
***
「どうぞ書記さま、こちらから逃げてください」
「ありが、と!」
俺の親衛隊の一員だという人に手をふって校舎の中を駆け抜ける。
時々誰かとぶつかりそうになって「うわっ!?」と驚く生徒や「こらー! 廊下を走るんじゃない、ワンコ書記!」と怒る先生もいた。ごめんなさい。
でも生徒会の皆と、風紀委員のトップ二人が追いかけて来てるから止まれないんだよ。さっき助けてくれた風紀の人が言ってたけど、風紀委員長が笑いながら競歩してるって。走ってないのに物凄い速さで校舎内を移動しているらしい。……怖い。
放課後の学校の怪談、とかに数えられてもおかしくないよね。
「書記さま、とりあえずの避難場所を確保しました。こちらへ!」
「た、いちょさん、あり……がと」
しばらくすると親衛隊の隊長さんが並走して声をかけてくれた。良かった、そろそろ疲れてきてたから休めるのは嬉しい。後をついて行くとそこは空き教室の一つで、中には顔を知ってる親衛隊の人達が沢山いた。
.
「いーこ、いーこ、よしよし」
「……っ」
目を見開き真っ赤な顔の転入生くん。
あれ?
と思ったけど、追手が近付く気配を感じて逃げ出した。
後ろから「待っ、空牙!」と転入生くんの声が聞こえた気がする。でも、勘違いだよね。
一年前に生徒会室で会っただけだから俺も転入生くんの名前は覚えてない。あの日、頭を撫であいっこしていたら急に皆が騒ぎ出して
『それではあなたの希望通り今後、生徒会は一切関わりを持ちません。当然あなたも接触して来ないようにお願いします』
『えっ、いやそれ……』
『はいはい、ダメでーす。文句は受け付けません。転入生は絶対くうちゃんに近付かないでくださーい!』
『話の分かる奴で本当に助かるぜ。じゃあな、二度とここへは現れるなよ!』
『はあ!? くそ、ふざけ――』
ベリッと引き剥がされた俺。
そのままドアの外に押し出される転入生くんの姿。
チャラ会計に耳を塞がれて、皆がどんな話をしたのかは分からない。ただ、副会長が
「やはり彼は撫でられたくなかったようです。顔を合わせると不愉快な思いをさせてしまいますし、空牙も彼を避けて二度と口をきかないでくださいね。ああ、名前を覚える必要も全くありませんから」
と教えてくれた。
……あ。どうしよう、忘れてた。
俺たった今、転入生くんと口きいちゃったし頭もなでなでした。ごめんなさい。
会長にも「約束しろよワンコロ。破ったらお仕置きするからな」って言われてた。会長に怒られるとすごく悲しくなるから嫌なのに。
だ、黙ってたらバレないかな?
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「どうぞ書記さま、こちらから逃げてください」
「ありが、と!」
俺の親衛隊の一員だという人に手をふって校舎の中を駆け抜ける。
時々誰かとぶつかりそうになって「うわっ!?」と驚く生徒や「こらー! 廊下を走るんじゃない、ワンコ書記!」と怒る先生もいた。ごめんなさい。
でも生徒会の皆と、風紀委員のトップ二人が追いかけて来てるから止まれないんだよ。さっき助けてくれた風紀の人が言ってたけど、風紀委員長が笑いながら競歩してるって。走ってないのに物凄い速さで校舎内を移動しているらしい。……怖い。
放課後の学校の怪談、とかに数えられてもおかしくないよね。
「書記さま、とりあえずの避難場所を確保しました。こちらへ!」
「た、いちょさん、あり……がと」
しばらくすると親衛隊の隊長さんが並走して声をかけてくれた。良かった、そろそろ疲れてきてたから休めるのは嬉しい。後をついて行くとそこは空き教室の一つで、中には顔を知ってる親衛隊の人達が沢山いた。
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