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俺の飼い主さまを探してる

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「あれ、ワンコ書記じゃん。何してんのこんな所で」

「……転入生、くん?」


中庭の茂みの中を移動していたら大きな木の近くで転入生くんとぶつかった。


「えと、今、逃げてる。転入生くん、は?」

「逃げ? 何か大変そうだな。ところで俺が転入したのは一年以上前だろ。いつまで転入生呼びすんの」

「あっ、ごめ……」


去年この学園にやって来た転入生くん。
理事長の甥らしく「学園に慣れるまでの間、生徒会が面倒をみるように」と校長先生から直々に指示を受けた。
会長は最初不機嫌そうにしてたけど、呼び出された生徒会室でそれを聞いた転入生くん本人が

「面倒臭いし必要ない」と断ると
「なかなか話の分かる奴じゃねぇか。気に入った」

と褒めて頭を撫で――ようとして何故か喧嘩になった。
それを皆で止めた後。副会長が理由を聞くと、転入生くんはチビッ子扱いされるのが大嫌いらしい。
会長の胸辺りよりちょっと下くらいの身長だった転入生くん。女の子みたいに可愛くて幼い感じの彼を、つい小さな弟のように(同い年だけど)思った会長が頭を撫でようとしても変じゃないのに。

だって俺も、背は大きいけど時々撫でてもらうよ?
お使いがちゃんと出来た時とか、よく頑張ったな偉いぞワンコロ、って。すごく嬉しくて胸がぽかぽかして気持ち良いのに勿体ないなぁ。

……て言った途端に、耳を赤くした会長に怒鳴られた。俺、何かいけないことしたのかな。
すごく悲しくなってグスッて鼻が鳴る。そしたら急に転入生くんが俺を椅子に座らせて

「こんなの、今まで誰にもしたことないから。撫でるの下手かもしんねーけど!」

と言いながら優しく頭を撫でてくれた。
少しびっくり。そのおかげか悲しくなくなり、でも何故かちょっとだけ涙が出て、嬉しいけど恥ずかしくて。

「……俺も、撫でて、良い?」
「えっ、し、しょうがないな。一回だけだぞ」


こうして俺から見ても小さな弟のように可愛らしい転入生くんの頭を、俺だけが特別に撫でらせてもらえたのだった。ふふふ。




「まあ、と言っても俺の名前なんか覚えてないよな」

「……な、まえ」


去年のことを思い出しながら転入生くんを見上げる。
この一年で彼は大変身をしていた。俺よりずっと小さかった身長は会長と同じくらいにまで伸び、女の子みたいだった顔は誰が見ても力強い男に。
かっこいい、って皆が言う筈だと思う。会長や風紀委員長と並んでも大丈夫、多分負けてないよ。


「頭に葉っぱついてるし」

「あ、ありが、と……!」

「うん、いい手触り。ワンコ書記は変わらないなぁ」


葉っぱを取るついでなのか俺の頭を撫でながら、しみじみと言う転入生くん。
そうかな、ちょっとくらいは俺も大きくなってるよ?
転入生くんは手も大きくなっていて前より撫でる力がちょっと強い。

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