上 下
87 / 107
第一章 誘惑

86話

しおりを挟む
 「そうだ」とは、言えなかった。

 目の前で泣きながら言われたからである。
 
 「卓也さん。奥さんとは離婚する気ですよね」

 「・・・そうだけど」

 「じゃあ、良いじゃないですか。このデートが最後とは言わず、次は回数なんて決めないで、何度も、何度だってデートしましょうよ!!私は、本気で卓也さんの事が好きなんです」

 「これで最後のデートって約束だろ」 
 
 俺は必死に想いを伝えてくれた、少女に対して冷たく突き放した。

 「・・・そう・・・ですよね。脅しまでして、デートを強要させてくる女なんて嫌われるに決まってますよね」
 
 緩奈は、一息だけついて、泣くのを止めた。
 
 「はい。お疲れ様でした。ゴンドラから降りてください」
 
 観覧車のスタッフがゴンドラの鍵を開けて降りるようにと案内する。
 気づけば、ゴンドラは観覧車を一周して戻っていた。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

BUZZER OF YOUTH

青春 / 連載中 24h.ポイント:56pt お気に入り:53

ボクに構わないで

BL / 連載中 24h.ポイント:149pt お気に入り:17

あきらめきれない恋をした

ライト文芸 / 完結 24h.ポイント:28pt お気に入り:21

おにぎりが結ぶもの ~ポジティブ店主とネガティブ娘~

ライト文芸 / 完結 24h.ポイント:56pt お気に入り:9

タイトル[異世界なのに何故こんなものがあるのか]

現代文学 / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:0

俺だけレベルアップが止まらない

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:7pt お気に入り:34

猫だけに吐く弱音 ~余命3か月を宣告された家族の軌跡~

ライト文芸 / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:23

処理中です...