ハニトラしかけてこいと敵国に贈られましたが、よく考えればクソブラックな故国より、寵愛してくれる彼のがいいので、寝返らせていただきます。

 ――これはキミにしかできないことなんだ、里珠。
 ――朱煌国の皇帝を籠絡して、国を混乱させてほしい。

 親に売られたわたしに、知識と教養(と性技)を授けて、一流の女に育ててくださった慈恩さま。

 ――事を成し終えたら、里珠、私の妻になってくれないか。

 そんなふうにね、言われたらね。わたし、頑張っちゃうじゃない。
 ってことで、敵国の少年皇帝のもとに、贈られたわたし、陽里珠。
 容姿だけじゃない。その声の美しさに、鳥もさえずりをやめてしまう「噤鳥美人」が二つ名のわたし。年下皇帝なんて、アッサリノックアウトよ! ――って思ってたんだけど。
 ぜんっぜんお渡りがない。皇帝来ない。来なきゃ、どれだけきれいな声持ってても意味ないじゃん!

 (もしかして、皇帝ってBL?)

 男にしか興味持てないってやつ――って。〝びぃえる〟ってナニ? わたし、なんでそんな言葉を知ってるの?
 そこで思い出す、自分が転生者であることを。
 そして。何があったのか。突然の皇帝お渡り。だけど。
 「臭いな」
 (ちょっと)焚きしめすぎたお香のせいで、皇帝にはそっぽ向かれ、また放置。
 いいわよ。いいわよ。別にいいわよ、コンチクショウ!
 前世の人生短かったぶん、ここで人生謳歌するわよ!
 って思ってたんだけど。なんだかんだでよくわからない政争に巻き込まれちゃって。命も狙われちゃって。

 「俺の子を孕め」

 ――は? ナニイッチャッテンノ、このクソガキ皇帝。
 ものには順序ってもんがあるでしょうが!
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