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SUV車は駐車場のスロープに設置されたバリケードの前で止まった。エンジンはかかったままだ。
有紀が車を降りる。「AK-47」を背負っていた。
――相変わらずか。
噛んでたガムを吐き捨てた。
涼しげな目のまま、ゾンビを見やる。
ゾンビどもはまだこちらに気づいてないのだろう。
相変わらず規則性のない徘徊を続けていた。
「車を出すにはまずこいつをどかさないと」
呟くように、これからの作業のことを口にする。
有紀の目の前には、バリケードがある。有刺鉄線がグルグル巻きになっている物だ。
こいつをどかす作業に取り掛かからなければならない。
「ゾンビを気をつけて」
車の中から一郎が声をかける。
「はい」
当然、ゾンビの動きには気をつけている。
――掃討しておいて方がいいか?
バリケードを開ける前に、「AK-47」で連射してゾンビとの距離を大きく空けるというのもひとつの方法だ。
一番、ちかいゾンビで二〇メートルくらい。
動きが鈍いので、安全な距離といえばいえるかもしれない。
――念のためか……。
有紀は「AK-47」を構えた。
モードは「連射」にする。
一番、近いゾンビに照準を合わせ、引き金を絞り込む。
ダダダッ――、ダダダッ――、ダダダッ――!
7.62×39ミリの銃弾をばら撒く。パラパラと空薬莢が排出され、コンクリートのスロープの上を転がっていく。
ゾンビの頭部が叩き割られ、腐った肉と脳漿を撒き散らし、斃れる。
銃弾を喰らったゾンビ三体が吹っ飛ばされ、腐肉を引き千切られた。
有紀はバリケードを引きずって開ける。
そして、SUV車に乗り込み前へ出る。
――面倒くさいんだよな~
次はバリケードを閉めなければいけない。
開けっ放しにしておくとゾンビが侵入してくる。
有刺鉄線のバリケードさえあれば、とりあえずそれを突破してくる物はいない。
ずるずると引きずってバリケードを閉めた。
SUV車に乗り込み、アクセルを踏む。
滅亡したかもしれない文明の音を奏で車は発進する。
スロープを降り、車道に出る。
「すごいね。こうやって出るんだ」
感心の声を一郎が上げた。
少年らしい朗らかな笑みを浮かべていた。
「邪魔だな! ゾンビ」
車でゾンビを跳ねないようにステアリングしていく。
「跳ねちゃえばいいのに」
「車が傷つくし、速度が落ちるからダメ」
「そうだね。分った」
ゾンビを跳ね飛ばした場合、こちらにも衝撃が伝わる。下手なことをして車の故障の原因になったら目も当てられない。
有紀は冷静に、ゾンビをかわしていった。
中には突っ込んでくる「当たり屋」のようなゾンビもいた。
殆どは、車とは関係なく、うろうろしているだけなのだが。
それでも、邪魔は邪魔だった。
(バイクの方が便利なのかもしれない)
と、一瞬思うが、転倒するリスクを考えると、車の方が安全だろうという結論になる。
街道に出た。
ここを道なりに行けば、河にたどり着く。日本で屈指の大河のひとつ。その河口付近だった。
「雑草がすごいな」
「誰も手入れしないからね」
街道のアスファルトを突き破って、ごっつい草が生えている。
沿道沿いの家などは、緑に覆われている。
春に入ったばかりでこれなのだから、夏になったら、もっと酷いことになるのだろう。
道を進み、市街を抜けると、ゾンビの数が目に見えて減ってきた。
有紀はアクセルを踏み込み、スピードを上げる。その方がガソリンを食わない。
「あッ!」
一郎が声を上げた。
「なに?」
「人だ! あのマンションに人がいる!」
一郎は左前方を指差した。
天空に突き立つようなタワーマンションがあった。
有紀が車を降りる。「AK-47」を背負っていた。
――相変わらずか。
噛んでたガムを吐き捨てた。
涼しげな目のまま、ゾンビを見やる。
ゾンビどもはまだこちらに気づいてないのだろう。
相変わらず規則性のない徘徊を続けていた。
「車を出すにはまずこいつをどかさないと」
呟くように、これからの作業のことを口にする。
有紀の目の前には、バリケードがある。有刺鉄線がグルグル巻きになっている物だ。
こいつをどかす作業に取り掛かからなければならない。
「ゾンビを気をつけて」
車の中から一郎が声をかける。
「はい」
当然、ゾンビの動きには気をつけている。
――掃討しておいて方がいいか?
バリケードを開ける前に、「AK-47」で連射してゾンビとの距離を大きく空けるというのもひとつの方法だ。
一番、ちかいゾンビで二〇メートルくらい。
動きが鈍いので、安全な距離といえばいえるかもしれない。
――念のためか……。
有紀は「AK-47」を構えた。
モードは「連射」にする。
一番、近いゾンビに照準を合わせ、引き金を絞り込む。
ダダダッ――、ダダダッ――、ダダダッ――!
7.62×39ミリの銃弾をばら撒く。パラパラと空薬莢が排出され、コンクリートのスロープの上を転がっていく。
ゾンビの頭部が叩き割られ、腐った肉と脳漿を撒き散らし、斃れる。
銃弾を喰らったゾンビ三体が吹っ飛ばされ、腐肉を引き千切られた。
有紀はバリケードを引きずって開ける。
そして、SUV車に乗り込み前へ出る。
――面倒くさいんだよな~
次はバリケードを閉めなければいけない。
開けっ放しにしておくとゾンビが侵入してくる。
有刺鉄線のバリケードさえあれば、とりあえずそれを突破してくる物はいない。
ずるずると引きずってバリケードを閉めた。
SUV車に乗り込み、アクセルを踏む。
滅亡したかもしれない文明の音を奏で車は発進する。
スロープを降り、車道に出る。
「すごいね。こうやって出るんだ」
感心の声を一郎が上げた。
少年らしい朗らかな笑みを浮かべていた。
「邪魔だな! ゾンビ」
車でゾンビを跳ねないようにステアリングしていく。
「跳ねちゃえばいいのに」
「車が傷つくし、速度が落ちるからダメ」
「そうだね。分った」
ゾンビを跳ね飛ばした場合、こちらにも衝撃が伝わる。下手なことをして車の故障の原因になったら目も当てられない。
有紀は冷静に、ゾンビをかわしていった。
中には突っ込んでくる「当たり屋」のようなゾンビもいた。
殆どは、車とは関係なく、うろうろしているだけなのだが。
それでも、邪魔は邪魔だった。
(バイクの方が便利なのかもしれない)
と、一瞬思うが、転倒するリスクを考えると、車の方が安全だろうという結論になる。
街道に出た。
ここを道なりに行けば、河にたどり着く。日本で屈指の大河のひとつ。その河口付近だった。
「雑草がすごいな」
「誰も手入れしないからね」
街道のアスファルトを突き破って、ごっつい草が生えている。
沿道沿いの家などは、緑に覆われている。
春に入ったばかりでこれなのだから、夏になったら、もっと酷いことになるのだろう。
道を進み、市街を抜けると、ゾンビの数が目に見えて減ってきた。
有紀はアクセルを踏み込み、スピードを上げる。その方がガソリンを食わない。
「あッ!」
一郎が声を上げた。
「なに?」
「人だ! あのマンションに人がいる!」
一郎は左前方を指差した。
天空に突き立つようなタワーマンションがあった。
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