神の甲虫は魔法少女になって恩返しします

中七七三

文字の大きさ
9 / 10

9.魔法少女は空を飛ぶ その2

しおりを挟む
「ちりょう魔法をかける? サシス」

 イタがっているサシスを見て、魔法少女ロガシーはいいました。

「ちりょう魔法? ロガシーは、そんなことまでできるのかい?」
簡単かんたんさ! ボクの魔法で、あの――」

 そういってロガシーは泥沼どろぬまをゆびさしました。

「あの泥沼どろぬまとおなじどろ背中せなかにべっちょりとぬればいいんだよ」
「え?」
「あまりの、くささに、いたいのなんかかんじなくなるんだよ。もう、くさい以外の感覚かんかくはマヒしちゃうんだ! なにもかんじなくなるよ!」

 サシスはかんがえました。「う~ん」とかなり本気ほんきかんがえこんでてしまったのです。
 サシスは「それは、もしかしたら、ではないのじゃないか?」と思ったのです。
 親切しんせつでいってくれる魔法少女ロガシーですが、ここまで、におってくるあのくさくて正体不明しょうたいふめいルビ背中せなかにぬられるのはいやでした。

 とっても、とっても、とってもいやだったのです。
 たとえ、ロガシーがどんなにかわいく、きれいでも、それだけは勘弁かんべんしてほしかったのです。
 
 
(まるで、うんこをあつめて、くさらせみたいなにおいだよ…… それはむりだよロガシー)

 サシスはそう思いましたが、口にだすことはできません。
 だって、それはせっかく親切で言ってくれたロガシーをきずつけることになるかもしれないからです。
 サシスはロガシーをきずつけて、かなししい気持ちにさせるのは、とっても、とっても、とってもいやだったのです。

 そして、それでロガシーにきらわれてしまうのは、もっといやでした。
 でも、背中にくさい泥を塗られるのもいやなのです。


大丈夫だいじょうぶ! いけるさ! なんかきゅう背中せなかがイタくなくなったぞ! すごい不思議ふしぎだ!」
 
 サシスは、そういって、すさまじくいたい背中をガマンして立ち上がったのです。
 もう、そうするしかなかったのです。

 あのうんこくさいどろをせなかにぬられたらたまりません。
 でも、「いやだ」といってロガシーをかなししませたり、ロガシーにきらわれるのもいやなのです。

 それなら、痛いのをガマンして走った方がマシだとサシスは思ったのです。

 そんなサシスを魔法少女ロガシーはジッとみつめていました。
 大きな目が半開はんびらきになっていたのは、なぜなのかサシスにはよく分かりませんでした。

「サシスは、要塞にいきたいんだよね」

 まるで、気分きぶんをいれかえたかのような元気げんきな声でロガシーはいいました。

「そうだよ。大丈夫。背中せなかはもう大丈夫だいじょうぶ! あはははは!!」
「ボクもサシスといっしょにいきたいなぁ。要塞ようさいってどんなことなの? すごくみたなぁ~」
「え? でも……」

 魔法少女といっても、ロガシーは女の子です。
 道なき岩山いわやまをいくのはむずかしいでしょう。
 それに、軍隊に関係かんけいない人間にんげんに「秘密ひみつの門」を知られるわけにはいきません。
 しかも、そこは戦争せんそうをするとてもあぶないところなのです。

「そうだ!! んでいけば、はしるよりはやくつくよね!」
「え? ロガシー、飛ぶって……」

 サシスはそういえば、魔女まじょとかホウキでぶなぁと思いました。
 魔法少女もほうきで飛ぶのでしょうか?
 しかし、ロガシーはホウキなんかもっていません。手ぶらです。
 
「ボクは呪文じゅもん変身へんしんして魔法のちからぶのさ!」

 そういうとロガシーは呪文をとなえはじめました。

「にゅる にゅる にゅる ぷりぷる ぬるぬる ぷぷぷ ぬゅるりん ぬゅるりん ぷりぷり にゅるりん」

 目をつぶっています。大きな黒いひとみがかくれて、長いまつ毛がかぜにゆれます。
 なんて長いまつ毛なんだとサシスは思いました。

「あッ!!」

 サシスはおもわず声を上げていました。
 まえと同じです。

 こんどはロガシーのスカートの中からにゅるにゅるとぶっとい黄土色おうどいろのものが出てきたのです。それはすごく太いヘビか、ロープのようでした。ただ、色だけがへんてこで、どこかで見覚えがあるのような黄土色おうどいろをしているのです。

(まさか…… でもあんなにちぎれないで、長いのはありえないし…… くさくもないし……)

 サシスはそれと同じ色をしたモノを思いうかべましたが、まさか、同じものなはずがありません。
 だって、ロガシーは魔法少女なのですから!!

 みるみるうちに、黄土色おうどいろのヘビのような長いものが、グルグルと、ロガシーの体にまきついていきます。細くきれいなあしにも、おれれそうなほどほそい胴体どうたいにも、そしてうでにもまきついていくのです。

 前に岩を砕いた時と同じような色をしたぶにゅぶにゅ、にゅるにゅるにみえて、ミドリ色のブツブツもまじっています。
 にゅるにゅるぬるぬると、スカートからはいでてきた「それ」はロガシーの全身ぜんしん顔以外かおいがいをつつみこんでしまいました。

 まるで、黄土色おうどいろのドロドロのどろの中にロガシーがいるようでした。

   !!」

 ロガシーがさけびました。

 魔力をおびた呪文じゅもんとともに魔法少女ロガシーはひかりにつつまれたのです。
 あまりのまぶしさに、サシスは目をとじてしまいました。
 
 そして、だんだんとひかりがよわくなっていくのを、サシスはまぶたのうらでかんじたのです。

 ゆっくりとサシスは目をあけました……

「あ! ロガシー! その姿すがたはいったい!」
「神の甲虫こうちゅうよろいだよ! これでボクはべるんだよ!」

 その姿はキラキラとしたひかり反射はんしゃする黒でつつまれています。
 ロガシーのうつくしいひとみのような色です。
 あたまだけ出して、くびから下は黒いヨロイでつつまれていたのです。
 それも、すごく強そうなヨロイなのです。

 細くてかわいらしく、きれいなロガシーに、そのヨロイがよく似合にあっています。



「さあ、ボクにつかまって、ボクもサシスをつかまえておくから」

 そういって、サシスとロガシーはきあうようなかたちになりました。
 サシスは、なんだかてれれくさいようなはずずかしいよう、それでいて、たのしいような不思議ふしぎ気持きもちになりました。

「ふふ、ボクとサシスは恋人同士こいびとどうしみたいだね」
「え? こい…… なんだって?」
「なんでもないさ、もう! さあ行くよ!」

 魔法少女ロガシーが、そういうとヨロイの背中せなかがぱっと二つにわれはねのようになりました。
 そして、ふたりは空にび立ったのです。アイウエ王国のカキクケとうげ要塞ようさいまで、ひとっととびです。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

悪魔さまの言うとおり~わたし、執事になります⁉︎~

橘花やよい
児童書・童話
女子中学生・リリイが、入学することになったのは、お嬢さま学校。でもそこは「悪魔」の学校で、「執事として入学してちょうだい」……って、どういうことなの⁉待ち構えるのは、きれいでいじわるな悪魔たち! 友情と魔法と、胸キュンもありの学園ファンタジー。 第2回きずな児童書大賞参加作です。

『ラーメン屋の店主が異世界転生して最高の出汁探すってよ』

髙橋彼方
児童書・童話
一ノ瀬龍拓は新宿で行列の出来るラーメン屋『龍昇』を経営していた。 新たなラーメンを求めているある日、従業員に夢が叶うと有名な神社を教えてもらう。 龍拓は神頼みでもするかと神社に行くと、御祭神に異世界にある王国ロイアルワへ飛ばされてしまう。 果たして、ここには龍拓が求めるラーメンの食材はあるのだろうか……。

生まれたばかりですが、早速赤ちゃんセラピー?始めます!

mabu
児童書・童話
超ラッキーな環境での転生と思っていたのにママさんの体調が危ないんじゃぁないの? ママさんが大好きそうなパパさんを闇落ちさせない様に赤ちゃんセラピーで頑張ります。 力を使って魔力を増やして大きくなったらチートになる! ちょっと赤ちゃん系に挑戦してみたくてチャレンジしてみました。 読みにくいかもしれませんが宜しくお願いします。 誤字や意味がわからない時は皆様の感性で受け捉えてもらえると助かります。 流れでどうなるかは未定なので一応R15にしております。 現在投稿中の作品と共に地道にマイペースで進めていきますので宜しくお願いします🙇 此方でも感想やご指摘等への返答は致しませんので宜しくお願いします。

【もふもふ手芸部】あみぐるみ作ってみる、だけのはずが勇者ってなんなの!?

釈 余白(しやく)
児童書・童話
 網浜ナオは勉強もスポーツも中の下で無難にこなす平凡な少年だ。今年はいよいよ最高学年になったのだが過去5年間で100点を取ったことも運動会で1等を取ったこともない。もちろん習字や美術で賞をもらったこともなかった。  しかしそんなナオでも一つだけ特技を持っていた。それは編み物、それもあみぐるみを作らせたらおそらく学校で一番、もちろん家庭科の先生よりもうまく作れることだった。友達がいないわけではないが、人に合わせるのが苦手なナオにとっては一人でできる趣味としてもいい気晴らしになっていた。  そんなナオがあみぐるみのメイキング動画を動画サイトへ投稿したり動画配信を始めたりしているうちに奇妙な場所へ迷い込んだ夢を見る。それは現実とは思えないが夢と言うには不思議な感覚で、沢山のぬいぐるみが暮らす『もふもふの国』という場所だった。  そのもふもふの国で、元同級生の丸川亜矢と出会いもふもふの国が滅亡の危機にあると聞かされる。実はその国の王女だと言う亜美の願いにより、もふもふの国を救うべく、ナオは立ち上がった。

9日間

柏木みのり
児童書・童話
 サマーキャンプから友達の健太と一緒に隣の世界に迷い込んだ竜(リョウ)は文武両道の11歳。魔法との出会い。人々との出会い。初めて経験する様々な気持ち。そして究極の選択——夢か友情か。  大事なのは最後まで諦めないこと——and take a chance! (also @ なろう)

美少女仮面とその愉快な仲間たち(一般作)

ヒロイン小説研究所
児童書・童話
未来からやってきた高校生の白鳥希望は、変身して美少女仮面エスポワールとなり、3人の子ども達と事件を解決していく。未来からきて現代感覚が分からない望みにいたずらっ子の3人組が絡んで、ややコミカルな一面をもった年齢指定のない作品です。

14歳で定年ってマジ!? 世界を変えた少年漫画家、再起のノート

谷川 雅
児童書・童話
この世界、子どもがエリート。 “スーパーチャイルド制度”によって、能力のピークは12歳。 そして14歳で、まさかの《定年》。 6歳の星野幸弘は、将来の夢「世界を笑顔にする漫画家」を目指して全力疾走する。 だけど、定年まで残された時間はわずか8年……! ――そして14歳。夢は叶わぬまま、制度に押し流されるように“退場”を迎える。 だが、そんな幸弘の前に現れたのは、 「まちがえた人間」のノートが集まる、不思議な図書室だった。 これは、間違えたままじゃ終われなかった少年たちの“再スタート”の物語。 描けなかった物語の“つづき”は、きっと君の手の中にある。

星降る夜に落ちた子

千東風子
児童書・童話
 あたしは、いらなかった?  ねえ、お父さん、お母さん。  ずっと心で泣いている女の子がいました。  名前は世羅。  いつもいつも弟ばかり。  何か買うのも出かけるのも、弟の言うことを聞いて。  ハイキングなんて、来たくなかった!  世羅が怒りながら歩いていると、急に体が浮きました。足を滑らせたのです。その先は、とても急な坂。  世羅は滑るように落ち、気を失いました。  そして、目が覚めたらそこは。  住んでいた所とはまるで違う、見知らぬ世界だったのです。  気が強いけれど寂しがり屋の女の子と、ワケ有りでいつも諦めることに慣れてしまった綺麗な男の子。  二人がお互いの心に寄り添い、成長するお話です。  全年齢ですが、けがをしたり、命を狙われたりする描写と「死」の表現があります。  苦手な方は回れ右をお願いいたします。  よろしくお願いいたします。  私が子どもの頃から温めてきたお話のひとつで、小説家になろうの冬の童話際2022に参加した作品です。  石河 翠さまが開催されている個人アワード『石河翠プレゼンツ勝手に冬童話大賞2022』で大賞をいただきまして、イラストはその副賞に相内 充希さまよりいただいたファンアートです。ありがとうございます(^-^)!  こちらは他サイトにも掲載しています。

処理中です...