お嬢様は納得できない! 〜番外編〜

花宮

文字の大きさ
12 / 30
〜番外編〜

『石田京介という男⑤』

しおりを挟む
あれから数ヶ月が経った。娘も落ち着き、反論しなくなった。……しなくなったというより諦めたという方が正しいか。


時折、カナの担任である成宮茜に近況報告をしている。彼女はカナをとても心配しており、カナが透に依存していることに薄々勘付いている節があった。


それについては自分のせいでもあるので何とも言えないのだが……だが、最近のカナは友達も増えてとても楽しそうだと言われていた。


だから安心していた。今日、この日までは……


『私、松崎透さんと結婚します!』


とんでもないことを口走った。だって何もかもが間違っている。まず、カナが結婚する相手は鈴木春人だ。急にそんなことを言われたら婚約者だって――!と思っていたが、


『ねぇ。お父様、私……ずっと不満だったんです。私や春人くんの意思を無視して無理矢理婚約させようとしていることも腹が立ったし、私の好きな人を馬鹿にすることも許せなかった。よって私は鈴木春人と婚約破棄します!』


婚約破棄。その言葉を聞いて、目の前が真っ暗になった。まさかこんなことになるとは思わなかったのだ。しかも、相手もノリノリで婚約破棄を受け入れた。
もうどうしようもない状況に追い込まれてしまった。


「……何だこれ」


今まで思い通りの人生だった。欲しいものは何でも手に入った。金も地位も女も全て手に入れた。なのに何故だろう?今になって、人生で初めて挫折したような気がしてならない。


上手くいった……と思ったものは上手くいってなかった。そう思うと全てが虚しく感じた。そして――。


「………はっ」


バカバカしい。何もかもがもうどうでもよく見えてきた。


「は、春人!おま、お前どういうことだ!」


そんな男の声が聞こえてくるが、そんなもの今更気にする必要などない。京介はただ、ため息を吐いた。



△▼△▼


そして今、カナは完全に鈴木春人と婚約破棄をして透と愛し合っている。


そして透もまたカナと愛し合っている。つまり、これは共依存なのだ。お互いに依存し合うことでしか生きていけないようになっていった。


最初は茜とカナがお互いのことを公認し三人で付き合っていたが、いつの間にか、茜はこの家に来なくなった。原因なんて言わなくても分かってる。でも、京介は黙認することにした。


それに、カナのお陰で会社は更に大きくなった。だからもうどうでもよくなってしまった。実際、カナも透も幸せそうだし、これ以上自分が口を挟むのも野暮というものだろう。


それに――。


「………俺に何かを言う権利なんて、ない」


だから今日もまたこっそりため息を吐くことしか出来なかったのだった――。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


今回の話で京介編は終わりです。次回の話は和馬と春香の話をする予定です。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

ヤンデレにデレてみた

果桃しろくろ
恋愛
母が、ヤンデレな義父と再婚した。 もれなく、ヤンデレな義弟がついてきた。

靴屋の娘と三人のお兄様

こじまき
恋愛
靴屋の看板娘だったデイジーは、母親の再婚によってホークボロー伯爵令嬢になった。ホークボロー伯爵家の三兄弟、長男でいかにも堅物な軍人のアレン、次男でほとんど喋らない魔法使いのイーライ、三男でチャラい画家のカラバスはいずれ劣らぬキラッキラのイケメン揃い。平民出身のにわか伯爵令嬢とお兄様たちとのひとつ屋根の下生活。何も起こらないはずがない!? ※小説家になろうにも投稿しています。

お言葉を返すようですが、私それ程暇人ではありませんので

結城芙由奈@コミカライズ3巻7/30発売
恋愛
<あなた方を相手にするだけ、時間の無駄です> 【私に濡れ衣を着せるなんて、皆さん本当に暇人ですね】 今日も私は許婚に身に覚えの無い嫌がらせを彼の幼馴染に働いたと言われて叱責される。そして彼の腕の中には怯えたふりをする彼女の姿。しかも2人を取り巻く人々までもがこぞって私を悪者よばわりしてくる有様。私がいつどこで嫌がらせを?あなた方が思う程、私暇人ではありませんけど?

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。 毎日19時に更新予定です。

処理中です...