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第3章
21話
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〝魔法の効力は1000年しかもたない〟ということだ。
グレン王が禁書である『時空の書』が使えたのも。
ロザリアの威力偵察隊が外壁を越えて外へ出られたのも。
すべてこれに起因する。
つまり、クロノの放った魔法の効力は、ほとんどが切れているということになる。
当然、〈氷絶界完全掌握〉の効力もすでに失われている。
氷土の大地に氷漬けにされていた魔王も今は自由の身というわけだ。
1000年周期論の1000年ごとに良いことと悪いことが交互に訪れるというのは、〝魔法の効力は1000年しかもたない〟ということを暗に示していたのである。
そこでゲントは先ほどのフェルンの話を思い出した。
(待てよ。ひょっとすると・・・)
ザンブレクの城壁には今、いびつな二重結界が張られているという話だ。
またフェルンによれば、グレン王は本来人命を弄ぶような暴君ではないのだという。
これらのことと現状を組み合わせて考えると。
ある結論がゲントの頭の中に浮かぶ。
(自由の身となった魔王がグレン王に乗り移ってたと考えられるんじゃないか?)
1000年周期論を信じ、賢者を呼び出そうとしていたグレン王を魔王が利用した。
クロノとして20年。
この異世界で過ごしてきた経験のあるゲントにとって、それは考えられないことではなかった。
もしもだ。
魔王がグレン王に乗り移っているのだとしたら、事態は一刻を争うと言えた。
(聖剣はザンブレク城の中にある・・・)
聖剣という加護があったからこそ、これまで魔王は直接人々に手出しできなかったという経緯をゲントは知っていた。
仮にそれが破壊されるようなことになれば・・・。
想像するのも恐ろしい阿鼻叫喚の世界へと瞬く間に変貌を遂げることだろう、とゲントは思う。
ひょっとすると、魔王は召喚した賢者に乗り移って聖剣を壊そうとしているのかもしれなかった。
***
ここまで回想を終えると、ゲントは一度こめかみに指を当てる。
今ゲントは、大理石の上で片手をつけてひざまづいていた。
「大丈夫ですか!? ゲントさま・・・!」
マルシルが心配そうに声をかけている。
意識を戻せば、大勢の者たちがまわりを取り囲んでいた。
「マスタぁぁー!? どうしちゃったんですかぁぁ~~!?」
「ゲントっ!」
ルルムもレモンも。
心配そうに声を張り上げている。
そんな彼女たちに向けて手を挙げて問題ないことをアピールすると、ゲントはゆっくりとその場から立ち上がった。
ぐるりとまわりを見渡して頭を下げる。
「皆さん、ご心配をおかけしてすみませんでした」
そして、「一度リハーサルを中断してもよろしいでしょうか?」と、まわりの者たちに声をかけた。
「ご気分が優れないのでしたら、今すぐ『治癒の書』を・・・」
「いえ。大丈夫ですマルシルさま。そういうわけではないので」
「ではどうしたのでしょう、ゲントさま?」
「内々ですぐにお話したいことがあるんです」
芯の強いその声を耳にしてマルシルもなにか感じ取ったのだろう。
彼女は頷くと、まわりの者たちへリハーサルの中断を告げる。
外へ出て行ってもらい、しばらくすると広間にはゲントたちだけが残された。
***
「ウチはこのままここにいてもいいの?」
「はい。レモンさんにも聞いてもらいたいんです」
「それでゲントさま。いったいなにがあったのでしょう? 『烈火の書』に触れてから、どこか気分が悪くなったようにお見受けしましたが・・・」
「体調はまったく問題ありませんので、その点は心配なさらないでください」
「ゲントの前に光のパネルがいくつも立ち上がってたよね? なんかいろいろ映し出されてたみたいだったけど」
「このあと、まとめて説明したいと思います。すべて思い出しましたので」
「思い出したんですかぁ・・・??」
ルルムの言葉にゲントは静かに頷く。
一度息を吸い込んで呼吸を整えると、ゲントは意を決してそのことを皆に打ち明ける。
かつての自分がクロノとして、この異世界に召喚されたという事実を。
「???」
「嘘でしょっ・・・」
「ひええぇぇ~~~!?」
すべての話を聞き終えた3人の反応はさまざまだった。
全員に共通しているのはやはり〝驚き〟だ。
「召喚されてやって来たって聞いた時もかなり驚いたけど・・・。これはちょっと次元が違うって。まさかゲントがあの英雄神クロノだったなんて・・・」
レモンは続く言葉が出てこないようだ。
突然〝1000年前の賢者は実は自分だった〟なんて打ち明けられたら、誰でもこんな反応となることだろうとゲントは思う。
むしろ信じてもらえていることが奇跡に近い。
ふつうはバカにされるか、呆れられるかして終わりだ。
それくらい今のゲントは、とんでもなくぶっ飛んだ話をしていた。
が。
マルシルはどこか納得したような表情でこう口にする。
「・・・なるほど、ゲントさまは賢者クロノだったのですね?」
「信じていただけるんですか?」
「もちろんです。ゲントさまが嘘をつくはずがありませんから。むしろそれを聞いて疑問が解けました」
「疑問が解けた?」
「はい。実はゲントさまをはじめて配信で目にした時、とても懐かしい気持ちがしたのです。そのことがずっと引っかかっていたのですが・・・今わかりました。それはゲントさまがわたくしのご祖先さまだったからなんですね」
「言われてみれば、そういうことになりますね」
1000年後。
子孫の王女とこうして婚礼の儀を執り行うことになるとは、なんとも不思議な巡り合わせだとゲントは思った。
またマルシルは、ゲントが口にした〝クロノとしてやり残したこと〟についても理解を示す。
人々の中から魔素を消し去れなかったこと。
魔素が尽きると死んでしまう体質となったヒト族の現状に、マルシルもまた疑問を抱いていたようだ。
「それは変えられるのでしたら、わたくしも変えたいと思いますが・・・。そんなこと果たして可能なのでしょうか?」
「はい。魔王を倒すことができれば」
ゲントは話しながらも少し焦っていた。
魔王がグレン王に乗り移っているという仮説が正しいのなら。
悠長にしている時間はない。
可能性の話と前置きをしてから、ゲントはこのことも3人に伝えた。
グレン王が禁書である『時空の書』が使えたのも。
ロザリアの威力偵察隊が外壁を越えて外へ出られたのも。
すべてこれに起因する。
つまり、クロノの放った魔法の効力は、ほとんどが切れているということになる。
当然、〈氷絶界完全掌握〉の効力もすでに失われている。
氷土の大地に氷漬けにされていた魔王も今は自由の身というわけだ。
1000年周期論の1000年ごとに良いことと悪いことが交互に訪れるというのは、〝魔法の効力は1000年しかもたない〟ということを暗に示していたのである。
そこでゲントは先ほどのフェルンの話を思い出した。
(待てよ。ひょっとすると・・・)
ザンブレクの城壁には今、いびつな二重結界が張られているという話だ。
またフェルンによれば、グレン王は本来人命を弄ぶような暴君ではないのだという。
これらのことと現状を組み合わせて考えると。
ある結論がゲントの頭の中に浮かぶ。
(自由の身となった魔王がグレン王に乗り移ってたと考えられるんじゃないか?)
1000年周期論を信じ、賢者を呼び出そうとしていたグレン王を魔王が利用した。
クロノとして20年。
この異世界で過ごしてきた経験のあるゲントにとって、それは考えられないことではなかった。
もしもだ。
魔王がグレン王に乗り移っているのだとしたら、事態は一刻を争うと言えた。
(聖剣はザンブレク城の中にある・・・)
聖剣という加護があったからこそ、これまで魔王は直接人々に手出しできなかったという経緯をゲントは知っていた。
仮にそれが破壊されるようなことになれば・・・。
想像するのも恐ろしい阿鼻叫喚の世界へと瞬く間に変貌を遂げることだろう、とゲントは思う。
ひょっとすると、魔王は召喚した賢者に乗り移って聖剣を壊そうとしているのかもしれなかった。
***
ここまで回想を終えると、ゲントは一度こめかみに指を当てる。
今ゲントは、大理石の上で片手をつけてひざまづいていた。
「大丈夫ですか!? ゲントさま・・・!」
マルシルが心配そうに声をかけている。
意識を戻せば、大勢の者たちがまわりを取り囲んでいた。
「マスタぁぁー!? どうしちゃったんですかぁぁ~~!?」
「ゲントっ!」
ルルムもレモンも。
心配そうに声を張り上げている。
そんな彼女たちに向けて手を挙げて問題ないことをアピールすると、ゲントはゆっくりとその場から立ち上がった。
ぐるりとまわりを見渡して頭を下げる。
「皆さん、ご心配をおかけしてすみませんでした」
そして、「一度リハーサルを中断してもよろしいでしょうか?」と、まわりの者たちに声をかけた。
「ご気分が優れないのでしたら、今すぐ『治癒の書』を・・・」
「いえ。大丈夫ですマルシルさま。そういうわけではないので」
「ではどうしたのでしょう、ゲントさま?」
「内々ですぐにお話したいことがあるんです」
芯の強いその声を耳にしてマルシルもなにか感じ取ったのだろう。
彼女は頷くと、まわりの者たちへリハーサルの中断を告げる。
外へ出て行ってもらい、しばらくすると広間にはゲントたちだけが残された。
***
「ウチはこのままここにいてもいいの?」
「はい。レモンさんにも聞いてもらいたいんです」
「それでゲントさま。いったいなにがあったのでしょう? 『烈火の書』に触れてから、どこか気分が悪くなったようにお見受けしましたが・・・」
「体調はまったく問題ありませんので、その点は心配なさらないでください」
「ゲントの前に光のパネルがいくつも立ち上がってたよね? なんかいろいろ映し出されてたみたいだったけど」
「このあと、まとめて説明したいと思います。すべて思い出しましたので」
「思い出したんですかぁ・・・??」
ルルムの言葉にゲントは静かに頷く。
一度息を吸い込んで呼吸を整えると、ゲントは意を決してそのことを皆に打ち明ける。
かつての自分がクロノとして、この異世界に召喚されたという事実を。
「???」
「嘘でしょっ・・・」
「ひええぇぇ~~~!?」
すべての話を聞き終えた3人の反応はさまざまだった。
全員に共通しているのはやはり〝驚き〟だ。
「召喚されてやって来たって聞いた時もかなり驚いたけど・・・。これはちょっと次元が違うって。まさかゲントがあの英雄神クロノだったなんて・・・」
レモンは続く言葉が出てこないようだ。
突然〝1000年前の賢者は実は自分だった〟なんて打ち明けられたら、誰でもこんな反応となることだろうとゲントは思う。
むしろ信じてもらえていることが奇跡に近い。
ふつうはバカにされるか、呆れられるかして終わりだ。
それくらい今のゲントは、とんでもなくぶっ飛んだ話をしていた。
が。
マルシルはどこか納得したような表情でこう口にする。
「・・・なるほど、ゲントさまは賢者クロノだったのですね?」
「信じていただけるんですか?」
「もちろんです。ゲントさまが嘘をつくはずがありませんから。むしろそれを聞いて疑問が解けました」
「疑問が解けた?」
「はい。実はゲントさまをはじめて配信で目にした時、とても懐かしい気持ちがしたのです。そのことがずっと引っかかっていたのですが・・・今わかりました。それはゲントさまがわたくしのご祖先さまだったからなんですね」
「言われてみれば、そういうことになりますね」
1000年後。
子孫の王女とこうして婚礼の儀を執り行うことになるとは、なんとも不思議な巡り合わせだとゲントは思った。
またマルシルは、ゲントが口にした〝クロノとしてやり残したこと〟についても理解を示す。
人々の中から魔素を消し去れなかったこと。
魔素が尽きると死んでしまう体質となったヒト族の現状に、マルシルもまた疑問を抱いていたようだ。
「それは変えられるのでしたら、わたくしも変えたいと思いますが・・・。そんなこと果たして可能なのでしょうか?」
「はい。魔王を倒すことができれば」
ゲントは話しながらも少し焦っていた。
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