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第3章
17話
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後日。
王選の結果が正式に発表される。
大方の予想どおり、ゲントがぶっちぎりの1位を獲得し、ロザリア王位継承権を得ることに。
対するバヌーは最下位へと転落した。
レモンの話によれば、エンペルト領は次期領主を巡って揉めに揉めているらしい。
というのも領民たちによる批判や報復を恐れ、バヌーは父親とともに夜逃げしたようなのだ。
ジョネスとアウラも姿をくらませ、国外へ逃げたという噂がある。
恩を仇で返すような結果となり、彼らに悪いことをしたと思うゲントだったが、レモンは「当然の報いだよ」とぜんぜん気にも留めていなかった。
***
そして本日。
婚礼の儀のリハーサルをするため、ゲントは改めてロザリア城へと招かれていた。
控室で静かにその時を待っている。
「大丈夫でしょうかぁ、マスター・・・? お顔があまりよくありませんっ~~!」
「平気だよ。ちょっと緊張してるだけだから。はじめてのことだしね」
ルルムが心配そうに覗き込んでくるもゲントは笑顔で応える。
(リハーサルでこんなビビってちゃダメだよな。本番は大観衆の前で式を挙げることになるわけだし)
ゲントは今、ロザリア王位継承者専用の正装服に身を包んでいた。
黄金の王冠も頭につけ、煌々としたマントを背中にかけている。
(なんか変な感じだ)
鏡に映るその姿を見て、まるで自分じゃないみたいだとゲントは思った。
けれど、ルルムにはなぜか大好評だったようで。
「こんなにもかっこいいマスターを皆さんにお見せするのはイヤですぅぅ~~!! ルルムだけのものがいいーんですよぉぉ~~!!」とよくわからない興奮状態で、さっきまできゃーきゃーと騒がれていた。
とにかく、今日のリハーサルは本番と同じ恰好で行うようだ。
また、式の流れもひととおり予行することになっている。
(誓いのキスもプログラムには含まれてるわけだけど・・・。さすがに実際するわけじゃないよな?)
少しだけ心配になっていると。
バタン。
その時、メイクをばっちり決めたレモンがドアを開けて控室に入ってくる。
今日の彼女は普段と違い、ライトベージュのノースリーブドレスに羽織物といった恰好だった。
「ゲント。そっちの準備はどう?」
「問題ないですよ」
「そっか。ふ~ん。なるほどね。なかなか決まってるじゃん♪ あーあ、羨ましいなぁ、マルシルさま。ゲントと結婚できるなんて」
「あの、一応疑似婚だってことを忘れないでくださいね?」
「わかってるけど・・・こっちはけっこう複雑だよ。本音を言えばさ」
「はい?」
「ルルムもぜひマスターと婚礼の儀をしたいですっ!! だって今日のマスター、いつにも増してかっこよすぎるんですぅぅ~~!!」
とルルムは鼻息が荒い。
レモンもなぜかしおらしくなってしまう。
なんとなく話の流れがおかしくなりそうだったので、ゲントはすぐさま話題を変えた。
「それでマルシルさまの様子はどうですか?」
「え? あ、そーだった! もうばっちだよ。うぅ~このあとすぐにリハーサルだと思うとなんかウチまで緊張してきたよ」
当日もレモンには、婚礼の儀を手伝ってもらうことになっている。
本当に面倒見のいい子だなとゲントは思った。
きっと弟と妹にも同じように優しく接しているのだと思うと、なんだか微笑ましく感じられる。
「じゃリハーサルでね。ゲントも覚悟しておいてよー? お姫さま、相当気合い入ってるんだから♪ またあとで」
ひらひらと手を振りながら、レモンは控室から出ていく。
彼女を見送ってしまうと急にゲントの緊張感は高まった。
(リハーサルだってのに心臓がバクバクしてヤバいな・・・)
早く終えて楽になりたいというのが本音だ。
と、そんなことを考えていると。
パゥパゥパゥ!
突然、ゲントの目の前に光のパネルが立ち上がる。
これはチャンネルに交信が入った時の合図だった。
(ん? こんな時に誰だろう?)
ゲントのチャンネルを知っている者は限られている。
誰とも連絡する予定は入れていなかったので不思議に思いながらゲントがパネルを覗くと、そこには懐かしい顔があった。
「え・・・フェルンさん?」
「ああ、よかった。ゲント君。久しぶり」
「ふぇぇっ!? フェルンさんからの交信ですかぁ~~??」
ルルムも光のパネルに顔を寄せてくる。
そこには以前と変わらない姿のフェルンが映し出されていた。
「お久しぶりです、フェルンさん。お変わりないようで安心しました」
「まだあれからそんなに経ってないしね。逆にキミにはすごい変化があったようだ。その恰好は・・・」
「あ、えっと・・・これにはいろいろと事情がありまして」
「大丈夫、噂は聞いてるよ。なんでもロザリアの王女さまとご婚約したそうじゃないか。お祝いの言葉が遅くなって申し訳ない。ゲント君、おめでとう」
「ありがとうございます。ご存じだったんですね」
「今じゃロザリア以外の国でも次期国王であるゲント君についての話題で持ち切りだからね。 いつの間にかすごい有名人になってて驚いたよ」
「正直、自分もまだ受け入れられてない部分があります。俺が国王さまになってもいいのかなって」
「ふふっ。あいかわらず、キミは謙虚だね。国民が王選を通してゲント君のことを選んだんだ。もっと自分を誇ってくれ」
フェルンにそう励まされると、ゲントは不思議と自分に自信が持てるようになる。
(その歳で本当にしっかりしてる子だよな)
彼女にはレモンとは違ったまたべつの魅力があった。
王選の結果が正式に発表される。
大方の予想どおり、ゲントがぶっちぎりの1位を獲得し、ロザリア王位継承権を得ることに。
対するバヌーは最下位へと転落した。
レモンの話によれば、エンペルト領は次期領主を巡って揉めに揉めているらしい。
というのも領民たちによる批判や報復を恐れ、バヌーは父親とともに夜逃げしたようなのだ。
ジョネスとアウラも姿をくらませ、国外へ逃げたという噂がある。
恩を仇で返すような結果となり、彼らに悪いことをしたと思うゲントだったが、レモンは「当然の報いだよ」とぜんぜん気にも留めていなかった。
***
そして本日。
婚礼の儀のリハーサルをするため、ゲントは改めてロザリア城へと招かれていた。
控室で静かにその時を待っている。
「大丈夫でしょうかぁ、マスター・・・? お顔があまりよくありませんっ~~!」
「平気だよ。ちょっと緊張してるだけだから。はじめてのことだしね」
ルルムが心配そうに覗き込んでくるもゲントは笑顔で応える。
(リハーサルでこんなビビってちゃダメだよな。本番は大観衆の前で式を挙げることになるわけだし)
ゲントは今、ロザリア王位継承者専用の正装服に身を包んでいた。
黄金の王冠も頭につけ、煌々としたマントを背中にかけている。
(なんか変な感じだ)
鏡に映るその姿を見て、まるで自分じゃないみたいだとゲントは思った。
けれど、ルルムにはなぜか大好評だったようで。
「こんなにもかっこいいマスターを皆さんにお見せするのはイヤですぅぅ~~!! ルルムだけのものがいいーんですよぉぉ~~!!」とよくわからない興奮状態で、さっきまできゃーきゃーと騒がれていた。
とにかく、今日のリハーサルは本番と同じ恰好で行うようだ。
また、式の流れもひととおり予行することになっている。
(誓いのキスもプログラムには含まれてるわけだけど・・・。さすがに実際するわけじゃないよな?)
少しだけ心配になっていると。
バタン。
その時、メイクをばっちり決めたレモンがドアを開けて控室に入ってくる。
今日の彼女は普段と違い、ライトベージュのノースリーブドレスに羽織物といった恰好だった。
「ゲント。そっちの準備はどう?」
「問題ないですよ」
「そっか。ふ~ん。なるほどね。なかなか決まってるじゃん♪ あーあ、羨ましいなぁ、マルシルさま。ゲントと結婚できるなんて」
「あの、一応疑似婚だってことを忘れないでくださいね?」
「わかってるけど・・・こっちはけっこう複雑だよ。本音を言えばさ」
「はい?」
「ルルムもぜひマスターと婚礼の儀をしたいですっ!! だって今日のマスター、いつにも増してかっこよすぎるんですぅぅ~~!!」
とルルムは鼻息が荒い。
レモンもなぜかしおらしくなってしまう。
なんとなく話の流れがおかしくなりそうだったので、ゲントはすぐさま話題を変えた。
「それでマルシルさまの様子はどうですか?」
「え? あ、そーだった! もうばっちだよ。うぅ~このあとすぐにリハーサルだと思うとなんかウチまで緊張してきたよ」
当日もレモンには、婚礼の儀を手伝ってもらうことになっている。
本当に面倒見のいい子だなとゲントは思った。
きっと弟と妹にも同じように優しく接しているのだと思うと、なんだか微笑ましく感じられる。
「じゃリハーサルでね。ゲントも覚悟しておいてよー? お姫さま、相当気合い入ってるんだから♪ またあとで」
ひらひらと手を振りながら、レモンは控室から出ていく。
彼女を見送ってしまうと急にゲントの緊張感は高まった。
(リハーサルだってのに心臓がバクバクしてヤバいな・・・)
早く終えて楽になりたいというのが本音だ。
と、そんなことを考えていると。
パゥパゥパゥ!
突然、ゲントの目の前に光のパネルが立ち上がる。
これはチャンネルに交信が入った時の合図だった。
(ん? こんな時に誰だろう?)
ゲントのチャンネルを知っている者は限られている。
誰とも連絡する予定は入れていなかったので不思議に思いながらゲントがパネルを覗くと、そこには懐かしい顔があった。
「え・・・フェルンさん?」
「ああ、よかった。ゲント君。久しぶり」
「ふぇぇっ!? フェルンさんからの交信ですかぁ~~??」
ルルムも光のパネルに顔を寄せてくる。
そこには以前と変わらない姿のフェルンが映し出されていた。
「お久しぶりです、フェルンさん。お変わりないようで安心しました」
「まだあれからそんなに経ってないしね。逆にキミにはすごい変化があったようだ。その恰好は・・・」
「あ、えっと・・・これにはいろいろと事情がありまして」
「大丈夫、噂は聞いてるよ。なんでもロザリアの王女さまとご婚約したそうじゃないか。お祝いの言葉が遅くなって申し訳ない。ゲント君、おめでとう」
「ありがとうございます。ご存じだったんですね」
「今じゃロザリア以外の国でも次期国王であるゲント君についての話題で持ち切りだからね。 いつの間にかすごい有名人になってて驚いたよ」
「正直、自分もまだ受け入れられてない部分があります。俺が国王さまになってもいいのかなって」
「ふふっ。あいかわらず、キミは謙虚だね。国民が王選を通してゲント君のことを選んだんだ。もっと自分を誇ってくれ」
フェルンにそう励まされると、ゲントは不思議と自分に自信が持てるようになる。
(その歳で本当にしっかりしてる子だよな)
彼女にはレモンとは違ったまたべつの魅力があった。
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