迷宮に捨てられた俺、魔導ガチャを駆使して世界最強の大賢者へと至る〜

サイダーボウイ

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1章

第13話

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 ゼノは、【狂悪の凱旋トライアンフキラー】一行と順調にワイド山を登っていた。

 1人での登頂とは違い、他の者たちと一緒に登ると、気持ちにだいぶ余裕が生まれる。
 ジェシカもコナーも話好きのようで、単調な山道もゼノは退屈することなく、登ることができていた。
 
 その後も、所々で出現するレイバーロックを、宣言通りジェシカが〈体術〉を使って倒していった。
 頼もしいその姿は、圧巻の一言だ。

 寸分の狂いもないその攻撃は、術式を深くまで理解していないと成し得ない技である。

 コナーやヨハンも負けていない。

 話に夢中になっているようで、コナーはその最中にあっても索敵を怠らなかった。
 魔獣をいち早く見つけて、それをジェシカに報告する。

 ヨハンは、魔獣と遭遇した戦況を独自の視点で分析し、情報として素早くジェシカへ伝達していた。

 その流れるような連携は、長年培われてきた信頼の上に成り立っているように、ゼノの目には映った。
 そんな3人の熟練された動きを目の当たりにして、ゼノは大きく感動する。

「皆さん、本当にすごいですね」

「そうかぁ? オレっちたちはこれが普通だけどな!」

「こんな風に、流れるような連携が取れていて、パーティーとしてすごく羨ましいです」

「ジェシカさんにたっぷり仕込まれましたから」

「そうッス! ジェシカさん、怖い時もあるッスけど、とても優秀な格闘家なんッスよ!」

「オレっちはべつに怖くなんかねーさ。何事も真剣ってだけだ。ワッハハハ!」

 それからさらに登っていくと、しばらくしたところでワイド山の景色ががらりと変わる。
 これまで続いていた岩場は途中で途絶え、頭上には霧氷の付着した針葉樹林が大きく広がっていた。

(そろそろ、ベリー草の分布地点も近そうだな)

 そんなことを思いながら、ゼノはさらに【狂悪の凱旋トライアンフキラー】一行の後について山道を登っていく。





 そのまま登頂を続けること、30分。
 心なしか気温も下がっているように感じられた。

 そんな中に突如――。

「……っ、おぉ……!」

 思わず声が漏れてしまうほどの幻想的な光景が目の前に現れた。
 まるで、その場所だけ別世界のように、ぽっかりと空いた空間に、広大な草地が出現したのだ。

 高い木々が草地を取り囲むようにして立ち並び、葉の間からは陽の光がわずかに零れ落ちていた。

「ゼノさん! 多分、この辺りにベリー草は生えてるはずッスよ!」

「んっ? そーなのかぁ?」

「たしかにそうですね。コナーさんの言う通り、ここがベリー草の生育地になります」

 珍しいものでも見るように、辺りをぐるっと見渡しているジェシカに対して、ヨハンが冷静にそう付け加える。

「んじゃ、ゼノとはここでお別れか」

「ここまでお世話になりました。いろいろと助けていただき、本当にありがとうございます」

「なーに。んなことは気にすんなって! 冒険者同士は助け合ってなんぼよ!」

 パンパンと、ゼノはジェシカに背中を叩かれる。

「ゼノさんと話せて楽しかったッス! ベリー草の採取、がんばってくださいッス!」

「それでは、我々はこれで失礼させていただきます。これから先もお気をつけて」

「はい。皆さんのご武運を祈ってます」

「じゃーなぁ!」

 ゼノは、笑顔で手を振りながら登っていく3人に別れを告げる。

 【狂悪の凱旋トライアンフキラー】一行の背中が、木々の影に隠れて完全に見えなくなってしまうと、目の前に広がった草地にゼノは視線を向けた。

「……さてと」

 これまで賑やかだったせいか、急に孤独感のようなものが押し寄せてくる。
 
「いい人たちだったな。冒険者同士は助け合ってなんぼ、か」

 今後、自分もその教えを守っていきたい、とゼノは思う。

「よし。それじゃ、ベリー草を集めるとしよう」

 気持ちを切り替えると、ゼノはさっそくベリー草の採取に取りかかる。
 日没までにマスクスへ戻るなら、今は感傷に浸っている時ではなかった。

「えっと……それで、ベリー草ってどういう形をしてるんだっけ?」

 一応、紙にベリー草の簡易的なイラストをティナに描いてもらっていた。
 それを取り出して確認するも……。

「……全然、特徴がないな。これじゃ、他の草と区別がつかないぞ」

 たとえ、コナーかヨハンにベリー草の1本を見つけてもらっていたとしても、自分では他の草との違いは分からないはず、とゼノは思った。
 
 こういう時こそ、魔法の出番である。

「たしか、《発見》とかいう魔石を手に入れてたよな? それで何とかならないかな?」

 光のディスプレイをその場に出現させてステータスを開くと、ゼノは《発見》の項目をタップしてみる。

----------

☆1《発見》 
内容:対象物を瞬時に発見することができる/1回

----------

「対象物を瞬時に発見する……か。うん、おそらくこれでいけそうだな」

 時間の短縮にも、もってこいの魔法と言えた。
 躊躇することなく、ゼノは《発見》の魔石を使ってみることに。

 聖剣クレイモアの鍔部分に《発見》の魔石をはめると、ゼノは光を帯びた剣身ブレイドに手を当てながら唱えた。

「対象物ベリー草――《発見》」

 すると、大きく開けた草地の所々に、光の点が浮かび上がる。

「……っ? もしかして、この光ってる場所にベリー草があるのか……?」
 
 半信半疑のまま、1つの地点へ足を向けると、たしかに1本の草が輝きをもって発光していた。
 イラストに描かれた草とも似ている。

「とりあえず、この魔法を信じて光っている草は全部集めておこうかな」

 ゼノは、光った草をむしり取って魔導袋の中へしまうと、続けて別の草の採取に取りかかった。



 ◆



「……ふぅ。こんなもんでいいかな」

 ティナから言われていた依頼の数は10本だったが、念のために50本近く、ゼノは光った草を採取していた。
 もし、これで間違っていたとしたら、それはそれで仕方がない。
 
 その時は、別の冒険者ギルドを探して、そこでまた一からスタートするつもりでいた。
 
 そんな潔さが幸いしたのか。
 思っていたよりも早く、ゼノは採取を終えることができた。

(そろそろ下山しよう。あまり長居しても、マスクスへ着くのが遅くなるだけだからな)

 陽はまだ高く、日没には余裕があったが、途中で何かイレギュラーが起きないとも限らない。
 
 こういう時は素早く行動するのが基本だ。
 何事も瞬時に選択せよ、というのがエメラルドの教えでもあった。

 広大な草地を後にすると、ゼノは針葉樹林の中を足早に降っていく。

(……今頃、ジェシカさんたちは、山頂でボス魔獣と戦っているのかな)

 少しだけ頂上の様子が気になるも、3人なら特に心配はないはず、とゼノは思う。
 ここへ辿り着くまでに、レイバーロックを50体以上も倒してきたのだから。
 
 今度、機会を見つけてラヴニカまで行ったら、今日のお礼をちゃんと伝えよう。
 そんなことを考えながら、下山していくゼノであったが……。

 ドオオオォォォォーーーンッ!!

「!?」

 突如、巨大な爆音が鳴り響いてくる。
 音は山の頂上付近から聞えてきたようだ。

(まさか……ボス魔獣の攻撃っ……!?)

 ゼノは後ろを振り返って見上げながら、嫌な予感を抱く。

 これまでジェシカが使ってきた〈体術〉には、このような爆音を炸裂させる術式はなかった。
 おそらく、コナーやヨハンの術式でもないだろう。

「っ!」

 気付いた時には、体が反応していた。
 ゼノは、全力で針葉樹林の斜面を駆け登り始めていた。
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