異世界デスゲーム? 優勝は俺で決まりだな……と思ったらクラス単位のチーム戦なのかよ! ぼっちの俺には辛すぎるんですけど!

真名川正志

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予選28

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 女子4人が楽屋でメイクを落とし、翌日は昼過ぎから女性スタッフ達に演歌を教える約束をして、裏口から『エンジェルズ』の外に出た。

「すっごく楽しかった!」

 七海はまだ興奮冷めやらぬ様子でそう言った。

「それはよかった。とりあえず、帰ろうか」

 俺はずっしりと重い楽器ケースを抱えながらそう言った。いかにも金貨が入っています、という感じの袋を持ち歩くのは危険だと思ったので、浅生律子の弦楽器のケースの中に入れさせてもらったのだ。それ以外にも、女子4人のポケットに分散して金貨を入れてもらっていた。

「帰るって、どこに? もう宿をとったの?」

 七海は不思議そうに訊いた。

「あ、そう言えば伝え忘れてたけど、孤児院の空き室に泊めてもらうことになったんだ。料理を作っているときに『これくらいしかお礼ができないから』って院長さんに言われて。俺と青山は孤児の男の子2人と同じ部屋で、七海達は4人で1部屋ってことになった。宿代を節約するのはいいことだし、七海達には事後承諾になっちゃうけど、好意に甘えることにしたから」
「そうなんだ。別にいいよ」

 俺と同じで、よく言えば金銭感覚が普通、悪く言えばケチ臭い七海は何の不満もない様子だったが、浅生律子は何か言いたそうな顔をしていた。きっと、浅生律子はちゃんとした宿に泊まりたかったのだろう。

「夜道は危険ですし、孤児院まで送っていきますよ」

 ヘンリーがそう申し出てくれたので、お願いした。
 夜道が本当に暗かったからだ。少し繁華街から離れると、街灯もなくて、数メートル先は闇に包まれていたのだ。電気がない世界っていうのは、夜はこんなに暗いんだな、と新鮮に感じられた。

 ヘンリーには、翌日は昼の鐘が鳴る頃に『エンジェルズ』の楽屋で待ち合わせる約束をしておいた。

 孤児院に着くと、青山が夜食を作ってくれていたので、有り難くいただいた。予定より帰宅が遅くなったのを心配されたが、ファーストライブが大成功だったことを伝えると、青山は自分のことのように喜んでくれた。

「結局、料理の方は全然手伝えなくて悪かったな」

 俺はそう謝った。
 青山は、煮沸消毒した清潔な布でゼラチン液の不純物を取り除いているところだった。

「いや、孤児の子達が協力してくれたから、そっちの方は大丈夫だ」

 青山はこともなげにそう言った。いい奴だよな、と思った。
 青山は夜中まで料理をするらしいが、今日は本当に疲れたので、俺達は先に休ませてもらうことにした。

 女子4人を風呂に入らせ、俺は最後に入った。それよりもっと前に子供達や職員達が入浴した後だったので、湯船から上がるときには冷たい綺麗な水を被っておいた。

 ちなみに孤児院では入浴は3日に1回だけらしい。入浴がない日は1人につき洗面器1杯のお湯が配られ、それで身体を拭くのだという。
 俺はそれでも何とか耐えられるけど、現代日本を生きる女子高校生達にはキツいだろう。そう思って職員に相談すると、近くの銭湯を紹介してもらえたので、助かった。

 俺と青山に用意された部屋に行くと、同室となる孤児の男の子2人はすでに寝ていた。

 俺は音を立てないようにそっとドアを閉め、2段ベッドの上の段に上がり、横になった。

 今日は本当に長い1日だった……と思いながら、ウィンドウ画面を確認する。

【10位 230番 コロイレム星代表チーム   :36500ゼン
 11位 227番 ソロガリオ星代表チーム   :0ゼン
 11位 228番 レイレイレオ星代表チーム  :0ゼン
 11位 231番 ワーメウス星代表チーム   :0ゼン
 11位 236番 アッサリーム星代表チーム  :0ゼン
 15位 239番 地球代表チーム       :-95645525ゼン
 16位 225番 サイジェリアス星代表チーム :-100000000ゼン】

 そんな風に表示されていた。

 0ゼンのチームが4つもある……。

 予選開始から1日近く経っても金額の上下がないというのは考えにくい。というか、ボス猿くんが死んだのを確認したときには、0ゼンのチームは1つもなかったはずだ。ということは、何らかの事情で所持金を全て失ったと考えた方がいいだろう。
 ボス猿くんの班と殺し合いになったと思われるサイジェリアス星代表チームも、マイナス1億ゼンというキリのいい数字になっているのを見ると、敵国のスパイじゃないかと疑われて、憲兵に所持金を全て没収されたと推測した方がいいだろう。

 焼け石に水のような気もするが、地球代表チームも頑張って所持金を増やしていた。ボス猿くんが作った借金を考えないようにすると、440万ゼンくらい稼いだことになる。

 ちなみに地球代表チームのプレイヤー別の所持金を見ると、唯一100万ゼンを超えていた青山が1位だった。制服を売ったお金の大部分を青山に預けていたから、それが青山の所持金としてカウントされたのだろう。

 そんなことを確認しているうちに、俺は寝落ちしてしまった。

 翌朝、トイレに行きたくなって目を覚ましたときには、すでに同室の孤児の男の子2人はいなくなっていた。2段ベッドの下の段は、使った形跡はあるが、青山の姿もなかった。みんな早起きだな、と思いながらウィンドウ画面を呼び出して確認すると、午前7時過ぎだった。

 外にある汲み取り式のトイレで用を足し、手を洗って食堂に行くと、すでに朝食の時間は終わっていた。

 青山が俺のために手早く料理を出してくれたスープパスタを食べる。昨日の夕食と全く同じメニューだったが、有り難くいただいた。青山の作る料理は本当に美味しいし、何の不満もなかった。

「今日はデザートもあるぞ」

 青山はそう言って、俺の前にオレンジ色のゼリーとグミを出した。
 
「おおっ、完成したのか。ちゃんと固まってるみたいだな」

 俺は感動してそう言った。
 まずは紙コップに入ったゼリーから食べさせてもらうと、プルンとした食感で、喉越しが爽やかだった。果肉も入っていて、いいアクセントになっていた。

「美味しいっ。ジュースとゼラチン液を混ぜたら味が薄くなるんじゃないかと思ってたけど、むしろ濃く感じるな」

 俺はそう感想を述べた。

「ああ。そこらへんは工夫したんだ。ミックスジュースを煮詰めて濃縮したものを使ったんだ」

 なるほど、と思いながら、グミの方も食べる。グミは大きな器に入れて固めたものを、包丁で1口サイズに切ってあった。グミ用の容器がないから、そういう方式にしたのだろう。形はグミっぽくないが、食べてみると適度に硬くて弾力があって、フルーツ感たっぷりでジューシーだった。

「グミの方も美味しいな。皮とか骨とか鱗を煮てるのを見たときはどうなることかと思ったけど、俺が知っているゼリーとグミの味がして、ホッとするよ。うん、これは間違いなく売れると思う」
「よかった。ゼリーとグミもアイス商会で売ってもらおうと思ってるんだけど、それでいいか?」
「待て。どうせなら、まずは路上販売してみないか? そしたらみんな、作り方を知りたがるだろう? でも、すぐには教えずデスゲーム最終日まで引っ張ることにするんだ。最終日にグミとゼリーのレシピをオークションにかけて、最も高値をつけた人にだけ製法を教える、ということにすれば、最大限儲けることができるんじゃないかな」
「なるほどな。よし、その作戦で行くか」
「ついでに、『1の3』のライブでもゼリーとグミを宣伝して、それが七海達の大好物だってことにしておけば、ファンの人達が路上販売されたものを買い争って、貢いでくれそうだな」
「いいな。夢が膨らむぜ」

 売れれば何でもいいのか、青山はにやりと笑ってそう言った。
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