婚約者曰く、私は『誰にも必要とされない人間』らしいので、公爵令嬢をやめて好きに生きさせてもらいます

皇 翼

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14.妖精の鉤爪①

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その日は一カ月に一回のギルド専用倉庫の掃除の日だった。
このギルドの倉庫には依頼の対価として貰った物や厚意で渡された物……そしてこれはごく少数だが、一般の人間には扱いきれない故にここに置いている物などがあるらしい。後者は如何せん呪術に近いものだ。この倉庫に入る前に、危険だから指示外のものは基本触らないようにと言われた。

しかしそんな危険な場所でも整理は必要である。
倉庫は広大であり、収められている物も毎日のように増え続けているために、それなりに量があるからだ。今回が初めてだという事で当番に組み込まれた私とレオンは、ロイに倉庫内の道具の扱いや注意するべき物について教わっていた。

因みにロイは再会した日以降、就寝時以外は私にほぼついて回って世話を焼き続けるという徹底ぶりだったために、クレティアに呆れられながら今回も教える側として無理矢理ついてきたという経緯がある。教員役として時間を空けてくれていた先輩を差し置いて、だ。
しかし副団長サブマスターという事もあり、詳しいのも事実であったために先程から私達姉弟二人は感心しっぱなしだった。けれど、私には一つ不満点があった。

「~なので、レオンはこの棚に置いてある魔書は表面を軽く拭くだけでここに置いておいてください。それでこっちの腕輪は表に従って毎月場所を移動させているので、今日は……倉庫の北B1の棚に移動ですね」
「あの……ロイ。さっきから私には何も触らせてくれないけど、どうして?」
「危ない物もそれなりにあるからです。お嬢様は触らないでくださいね」

そうなのだ。先程からロイはレオンには道具の手入れや移動をするように指示する癖に、私がレオンと一緒に作業をしようとすると止め、それでも仕事だからと無理矢理に引き受けようとすると私の分まで全てこなしてしまう始末。
再会してからというものロイは昔よりも明らかに過保護になっていると感じていた。

「これじゃあ、仕事にならないでしょう!?」
「いいえ。お嬢様の分まで私がやるので問題ありません!」
「……問題しかないけど?」
「お嬢様はこちらの――もう既に掃除が終わったところに居てください」

そしてまた無理矢理、既に綺麗にされた場所で休まされる。ここまでが最近のパターン。
今までも何度か反抗しようとしてみたが、毎回上手くかわされて仕事から遠ざけられる。それが何度も続けば無駄な努力なのかとすら思うようになってきてしまう……抵抗をやめる気はないが。

ロイには基本的に抜け目がない。武術や魔法、学問と言ったこともそうだが、何よりも洞察力が高いのだ。私がやろうとしたこと、行動の一歩前を進んでいるイメージである。だからきっと今日もこのままいくと私が仕事をしたいと言ってもさせてはくれないだろう。
溜息を吐きながらロイに指定された場所へ移動する。

どうやって彼に自分が仕事をすることを認めさせようかと考えながら、何気なく目の前の棚に目を向ける。すると妙な感覚に囚われた。何かに見つめられているような感覚――。
その方向に視線を向けてみるとキラリと光る物が目に入った。

銀色の鉤爪の様な指輪タイプのアクセサリー……アーマーリング。

先程までこんなものはここにあっただろうか。そう疑問に思い、自身の記憶をひっくり返してみるが、こんな印象的且つ美しい物を見た覚えはない。じっとそれを見つめていると『声』が聞こえて来た。

『こっちに来て――私を、貴女に……貴女の一部に――』

頭に直接響くか細い声。慌てて周りを見回してみるが、少し遠くに行っているロイとレオンの様子は変わらないことから、この声は私にしか聞こえていないことが分かる。
明らかに怪しいと普段であればそう思う状況。しかし私の身体はその声にまるで導かれるようにソレに近づき、そして……装着していた。
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