婚約者曰く、私は『誰にも必要とされない人間』らしいので、公爵令嬢をやめて好きに生きさせてもらいます

皇 翼

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11.ロイの経緯①

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※ロイの過去部分だけ3人称です。編集ミスなどではありません。

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ロイがアリアと出会う前の人生を語る時、必ず『色の付いていない風景画のようだった』と答える。
しかしながら、彼にとってそれは誇張でもなんでもない表現だった。アリアに出会って彼の人生は確かに変わったのだ――。

そもそもアリアとロイが出会ったのは、ロイの生まれ故だ。
彼は今でこそアルカード傭兵団に所属しているが、元はフォーレンハイト伯爵家の次男である。しかしながら、彼はその家では、家族と馴染めていなかった……否、ずっとロイは自身を異物だと思っていたのだ。それはロイの何かに執着を持てなく、何かしらの目的のために努力を出来ないという生来の性格のせいだった。
両親はロイの事を『穀潰し』と称し、優秀な兄は『お前は次男なのだから、きちんと婿入り先を見つける努力なり、騎士になる勉強なりをしろ』といつも怒ってくる。姉は両親や兄を諫めてくれるが、ロイの生き方に賛成しているわけでもなかった。

けれどそんな言葉達はいつもロイにとってどこ吹く風だった。当時16歳だったロイは特に人生に対する目的もなく、他の人間達が面白おかしく生き甲斐にしている酒、煙草、女遊び、賭け事など片っ端から試してみる日々だったが、それらにも全く興味や執着が生まれることはなかった。ただただ虚しい日々を過ごしていたそんな時の事だ。彼に転機が訪れる。それは『公爵家の使用人として、ロイを送る』という兄の言葉だった。

これも天賦の才とも言えた剣の腕以外はからっきし、勉強も嫌い、貴族として最低限の礼儀作法も身に着けていないロイに対する兄の愛情とも言えるものであった。
流石にこのままでは一生プラプラして婿入りもせずに終わりかねんから、せめて同年代の他者と交流を持った上で刺激を貰ってこいと直接ロイも言われたからだ。ロイとしては、面倒だな程度にしか感じていなかったが。

そうして男にも関わらず、公爵家に使用人として送られたロイ。これが転機だった。
彼は本来であれば、公爵家にいる同年代――アリアの兄達に仕えるはずだった彼。しかしその仕えるはずだった者達は、ロイが到着した頃には公爵家から出て行ってしまっていた。だから急遽宛がわれたのだ。他の使用人たちも手を焼く『お転婆お嬢様の世話係』という役職に。

出会った当初のアリアの印象は特にない。なにせどんなことにも興味を持てない男だ。仕えることになったといえど、その主もその辺の有象無象と変わらなかった。しかし、その印象はすぐに覆されることになる。
世話係になってからは毎日のように、公爵家の裏にある山の探索に行きたい、魔物が出るらしい森に魔物を見に行きたい、図書館で調べたいものがある、珍しい植物が生えているという公園へのピクニックへ行きたい、などなどもう嫌という程に色んな場所に色んな目的で連れ出された。

無理矢理引き回されていれば、嫌でもその引き回している人間の顔が目に入る。そして気付いたのだ。自身が仕えているこの子供――アリアはいつでもその大きな瞳をキラキラさせていて楽しそうだ。そして思った。彼女には自分とは別の景色が見えているのかもしれない。こんなにも瞳を輝かせる景色というのはどんなものなのだろう。知りたくなった。そうしてロイは産まれて初めて、という体験をしたのだ。

実は、ロイが他の使用人から聞いていたほど、アリアは聞かん坊の暴れん坊ではない。
好奇心が強すぎて、少しでも興味を持って物があれば突っ走ってしまう……暴走しやすいだけだ。だから、きちんと話そうと思えば話は出来た。
そうしてロイはアリアの世界の見方、何がそんなに面白いのかを聞いていく。
実のところ、聞いても何がそこまで面白いのかというのは一部理解できないものもあったが、いつからかロイが聞く前から楽しそうに自分が好きな事や物、今興味を持っている事柄についてを語ってくれるアリアのキラキラとした瞳を見るのがロイの楽しみになっていた。それにロイ自身も、アリアの好奇心に触発されて前よりは周囲のものに興味を持ち始めていた。彼は確実に変わっていたのだ。

今までどんな事柄にも興味を持てなかった男が、何かに大きな興味を持つとどうなるか。ロイの答えは、異常な執着だった。
いつからかアリアの楽しそうな顔や瞳を見るためだけに、きっと実家の兄や姉が見たら目を丸くするであろう有能さを発揮するようになる。
アリアの好奇心を自分でも満たせるようにと勉強を始め、アリアに恥をかかせて邪魔をしないようにとマナーもすぐに完璧になった。そしてアリアが希望すれば、他の使用人やアリアの両親の目を上手く誤魔化してその願いを叶える。それがいつからかロイの楽しみ、そして生き甲斐になっていた。アリアと共にいると、
これから一生、彼女に仕えて生きたい。そう考え始めた頃だった。突然前触れや手紙もなしに、アリアの両親が公爵家に帰って来たのだ。そしてロイの希望はその両親の『お前はアリアの害にしかならない。彼女の未来のために消えろ』という言葉によって、叩き潰された。
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