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3.決意

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「私はもう母様にも父様にも、ましてやジブリールにも縛られたくない!だってこれは私の人生だから」

初めてだった。ここまではっきりと自分の気持ちを吐き出したのは――。
この女性が根気強く話を聞き続けてくれたのも私の感情が表に出てくるのを手伝い、ずっと背負っていた重荷が下りたような。今までにない程に気持ちはスッキリしていた。だからすぐに次の行動も決めることができた。

「私、一度家に帰ります。それで母様達と話してきます。……私の話、聞いてくれて有難うございました!」

正直この後両親と話したとして、どうなるかは分からない。でももう何の反論も行動せずに自分自身を抑圧されて、勝手に未来が決まっていくのは嫌だった。本当の自分を否定したくない。
私は生まれて初めて、事を決めたのだ。

「ちょっと待ちな!」

そうして頭を下げた後、そのまま宿屋から出ていこうとすると、何故か女性に肩を掴まれ静止させられる。

「これ」
「……カード?」

机の上で何かを探し出し書きつける。そうして手渡されたのは黒いカードの様なものだった。よく見てみると獅子の紋様と細かな装飾、そして白い小さな文字で『アルカード傭兵ギルド』と書かれている。

「うちのギルドの許可証ライセンスさ。アンタ、今いるここが王都の何処かすらよく分かってないだろう?」
「あ――」

格好悪すぎる!!と心の中で叫ぶ。私は自分の家に帰る手段を完全に失念していた。実際ここが何処だかもよく分かってないし、もし分かっていたとしても街から貴族街……カルカーン公爵家のあるタウンハウスの場所まではそれなりに距離があったはずだ。
普通にこのままここから出て行っても、辿り着ける気がしなかった。自分の無計画さに頭を抱える。

「その許可証をこの宿屋の主人に見せれば馬車クーペを無料で動かしてもらえる……だからアンタにやるよ」
「えっと……でも良いんですか?」

女性の話が事実なら確かに有難いことこの上ないが、私にはそんな物を貰えるような理由がない。だって私は先ほどまで迷惑をかけていた自覚はあれど、この人に対して恩を売るようなことはしていない。

「なに、一枚余ってたからやるだけさ。精々上手く使いな。まあなんだその――アンタのこと、アタシは応援してる」
「……ではお言葉に甘えて頂いておきます。本当に有難うございました」
「ああ」

きっと彼女は本当に親切な人間なのだろう。今の追い詰められていた私にとっては、まるで神様のような存在だとすら思えた。
だから私は女性からの応援を受け取り、大人しく厚意に甘えることにした……前に進むためにも。

女性は短い返事の後、此方に背を向けながら軽く手を振る。
出来るだけ感謝が伝わるように部屋を出る前にもう一度誠意を込めてお礼とお辞儀をすると、目的地に向かった。
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