スキルが【アイテムボックス】だけってどうなのよ?

山ノ内虎之助

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33 邪龍襲来3

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 幸也は大きな洞窟に連れて来られる。
中はとても広い。薄く明かりが差しているようだが壁は厚そうだ。

「ここで最終訓練を行う。食料は必要な分を用意してある」
「最終訓練って?」
「・・殺し合いだ」
「殺し合い!?」

二者択一の結界オルタナティブバリヤー

 オルゴルが結界の魔法を唱える。

「この結界は1人しか出られん。つまりどちらか片方しか出られん」
「なんでそんなことを・・・」
「まぁ2人でも出る方法がある。結界が消えるのを待てばよい」
「それなら・・」
「結界が消えるのは7日後だ。邪龍には間に合わないな。ワシか仲間か好きな方を選べ!」

 オルゴルが剣を抜いて突っ込んでくる。
 幸也はあわてて回避する。オルゴルは全力で剣を振るう。さすがにこれを回避し続けるのは不可能。幸也も不知火を抜く。
 そして、殺し合いが始まった・・。


 王都周辺諸国の冒険者を集めた連合軍の会議が始まった。敵が敵なので慎重に会議が進められる。
 しかし王都の勇者は参加していない。連合は勇者抜きの作戦も立てなければならない。
 だが、さすが高ランク冒険者や兵士の集まりスムーズに計画を練っていく。
 問題は相手の戦力だ。野良龍と戦った者はいても邪龍と戦った者はいないのだ。
 未知の相手、未知の戦力が冒険者達の不安をかきたてる。


 柳田達は苛立っていた。まだ、この王都から出してもらえないからだ。すでに連合軍は会議を始めているはず。
 このままだと自分達だけ会議にも出れない。いきなり戦場では役に立てるとは思えない。

「柳田君、どうしよう?」
「俺がもう一度掛け合ってくる。みんなはいつでも出れるように準備しておいてくれ」
「分かった」

 柳田は苛立ちもあらわに王女のもとに向かう。

「王女様、もう俺達を行かせてくれ!」
「分かりました。これを持って行ってください」
「これは?」
 緊急脱出ベイルアウトの魔道具です。危なくなる前に逃げて下さい」
「危なくなったら俺達だけ逃げろと?!」
「そうです。あなたは勇者ですよ?邪龍ごときで死んでもらっては困ります」
「ちょっと待て!今回はそんなにヤバい相手なのか!?」
「当然です。邪龍ですよ?」

 柳田は、魔道具を乱雑につかみ取ると部屋をあとにした。その表情は怒りに満ちている。

「ヤバい奴ならなぜ全員で戦わない。しかも俺達だけ逃げろだと!ふざけるな!」

 みんなのもとに戻り事情を説明するとすぐに王都を出た。そこには壊された魔道具が残されていた。


 幸也とオルゴルの殺し合いは続いている。
 全力で剣を振るうオルゴルからは殺気が伝わってくる。しかし、幸也の方は殺気を込めることができない。

「どうした?そんなことでは間に合わんぞ?」
「しかし・・」
「なら仲間を捨てろ!」
「それは・・」
「ハッキリせん奴だな」

 幸也はそれでも本気で攻撃ができない。ただ時間だけが過ぎていく。なぜ、こんなことになった?また雑念がわいてくる。無駄な思考は剣に伝わる。

「元に戻ったな。なら、」

 オルゴルが幸也を斬りつけた。ギリギリかわした、いやかわせた。
 こんなことをしていたら本当に死んでしまう。左腕から流れ落ちる血をみて幸也は集中していく。
 今まで自分は集中力が高いと思っていたが修業を通じて、その甘さを痛感させられた。そんな自分の甘さが恥ずかしくなる。
 集中していく幸也。そして生命エネルギーが見え出す。集中力の高まった全く違う斬撃をオルゴルに向けて放つ。
 オルゴルも『さぁ、こい』と言わんばかりに待ち構える。殺し合いの第2ラウンドが、今始まった。

 
 柳田達はすぐに連合軍の所に向かった。
 着いたら遅れたことに対する謝罪をする。柳田達のその真摯な態度に連合軍側の方が驚いた。
 王都はダメでもこの勇者達なら期待できるそう感じさせられたのだ。
 柳田達は作戦の概要を教えてもらう。予想していた通り邪龍が相手になるという。だがその対応策はすでに練ってある。万全の構えだ。
 柳田は幸也が来ていないのか尋ねた。魔術師の格好をした女性がギルドの仕事中で遅れていると教えてくれた。
 こんな時まで仕事かと呆れ顔の柳田に

「柳田君。宮原君は来てないけど?」
「ギルドの仕事中だそうだ」
「仕事中?!宮原はそんなに生活が厳しいのか!」
「そうじゃないでしょ。たぶん理由があるんだよ」
「あいつのヒーロー体質はどうにかならんのかね?いつも良いところを最後に持っていくんだよな」
「いるよね、そういう人」

 
 そしていよいよ始まる。未知の邪龍戦が。

 
 研ぎ澄まされた幸也の斬撃がオルゴルを襲う。
 幸也もオルゴルもすでに傷だらけだ。どのくらいの時間が経った?時間の感覚も分からないまま、ただただ剣を振るう。

「そろそろ終わりにしようかね?」
「・・・」
「まだ、迷いかあるようだ」
「しかし・・」
「仲間の元に行くんだろう?」
「はい・・・」
「全力でこい!」

 オルゴルが集中していく。幸也にはまだ迷いが・・いや、すでに覚悟は決めていた。幸也も集中していく。
 そしてオルゴルが 先に斬りかかった。
 幸也はそれをいなし返す刀でオルゴルを斬りつけた・・・。
 切口から血を吹き出し倒れるオルゴル。
 幸也は倒れたオルゴルに駆け寄る。

「早く治療を!」
「いや、このままでいい・・」
「何を言ってるんですか!」
「今から、おまえに渡す物がある」
「そんなことより治療を!」
「治療は無駄になる。だからかまわない」
「無駄って・ ・」
「今から【スキルの譲渡】を行う」
「譲渡?!」
「そうだ。この世界でスキルを増やす唯一の方法だ」
「俺のアイテムボックスなら、そんなことをしなくても・・」
「借り物の力に限界を感じていたんだろう?」
「【スキルの譲渡】は借り物ではない。おのれの正式なスキルになる」
「しかし・・なぜ、治療をしないことと・・」
「これは自分の命をスキルに変換する」
「命って・・」
「気にするな。魔王を倒して以来、退屈な人生を送ってきた。このまま無駄に生き続けるのなら誰かの役に立ちたい」
「十分です・・十分役に立ってます・・」
「もういい・・ユキヤ・・持っていけ」

 オルゴルの身体が金色に光りだす。光りは1点に収束し、やがて光りの玉になった。光りの玉が幸也の手のひらから体に吸い込まれる。全身が一瞬光ったあとすぐに光りは消えた。
 
 だが幸也はしばらくその場から動けなかった。


  
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