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第十四話 9
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まだ動かない……何も言わない彼に…そっと
「…リッキー?」
小さく声を掛けると
「うん…うん……」
彼はふたつ声に出して首を縦に振った後、くるっと体ごとこちらを向き、そっと遠慮がちに両腕で私を包みこんだ。
そして頭の後ろから囁き声がする。
「ちょっとだけ…」
私は体をカウンターの正面に向けたまま、首元に回る彼の腕を擦り
「着けてくれるかな…?」
「もちろん…嬉しくて言葉が出なくて自分でびっくりした……」
彼はそう言い、ゆっくりと腕を放して箱の中のブレスレットを指に掛ける。
「見て、田嶋さん。俺に似合うやつだ」
「力哉にはゴールドだよな」
「私もそう思って選んだの。ここ‘R’入ってるよ」
カーブチェーンの間の球を指差すと、リッキーは顔をくしゃっと崩し
「ありがとう、綸ちゃん。大切にする」
気に入ってもらえて良かった。そう思いつつ、すぐに二度目の溢れる海鮮にモグモグモグ……頬を膨らませ目を細めていると田嶋さんが
「綸ちゃん、前も綺麗だったけど表情がいろいろ出るようになって、更に綺麗になったね」
とそこへ、ドンドン…暖簾が内側に掛かった表の引き戸が、遠慮なく叩かれた。
「迷惑な奴だな」
笑いながら田嶋さんが、カチャカチャっと解錠すると同時に表から引き戸が開かれた。
頬いっぱいにご飯を頬張ったまま振り返ると
「綸」
モグモグして返事が出来ないがいいか…さすがに無礼な行動よね、準備中となっているのに表から来て、田嶋さんに挨拶もしないで…あっ…いまの貝、美味しい。
正宗はリッキーと反対側の隣に座り、私の膨れた頬を人差し指の背で撫でる。
「おいっ、お前デートの邪魔しに来るなよっ」
「あっ、リッキーそれ俺たちとお揃いか?」
リッキーの叫びに負けない駿の大きな声がして堪らず
「少し静かにして欲しい。いま美味しいもの堪能中なの」
くくっ……と笑った田嶋さんが
「お前らは昼、食ったのか?」
「はい、正宗はここでと言ったけど、あまりに誕生日のリッキーに悪いと思って済ませて来ました」
潤が答えると、リッキーがいたずらっ子のような顔で言う。
「正宗、さっき田嶋さんが綸ちゃんを口説いてた」
「…リッキー?」
小さく声を掛けると
「うん…うん……」
彼はふたつ声に出して首を縦に振った後、くるっと体ごとこちらを向き、そっと遠慮がちに両腕で私を包みこんだ。
そして頭の後ろから囁き声がする。
「ちょっとだけ…」
私は体をカウンターの正面に向けたまま、首元に回る彼の腕を擦り
「着けてくれるかな…?」
「もちろん…嬉しくて言葉が出なくて自分でびっくりした……」
彼はそう言い、ゆっくりと腕を放して箱の中のブレスレットを指に掛ける。
「見て、田嶋さん。俺に似合うやつだ」
「力哉にはゴールドだよな」
「私もそう思って選んだの。ここ‘R’入ってるよ」
カーブチェーンの間の球を指差すと、リッキーは顔をくしゃっと崩し
「ありがとう、綸ちゃん。大切にする」
気に入ってもらえて良かった。そう思いつつ、すぐに二度目の溢れる海鮮にモグモグモグ……頬を膨らませ目を細めていると田嶋さんが
「綸ちゃん、前も綺麗だったけど表情がいろいろ出るようになって、更に綺麗になったね」
とそこへ、ドンドン…暖簾が内側に掛かった表の引き戸が、遠慮なく叩かれた。
「迷惑な奴だな」
笑いながら田嶋さんが、カチャカチャっと解錠すると同時に表から引き戸が開かれた。
頬いっぱいにご飯を頬張ったまま振り返ると
「綸」
モグモグして返事が出来ないがいいか…さすがに無礼な行動よね、準備中となっているのに表から来て、田嶋さんに挨拶もしないで…あっ…いまの貝、美味しい。
正宗はリッキーと反対側の隣に座り、私の膨れた頬を人差し指の背で撫でる。
「おいっ、お前デートの邪魔しに来るなよっ」
「あっ、リッキーそれ俺たちとお揃いか?」
リッキーの叫びに負けない駿の大きな声がして堪らず
「少し静かにして欲しい。いま美味しいもの堪能中なの」
くくっ……と笑った田嶋さんが
「お前らは昼、食ったのか?」
「はい、正宗はここでと言ったけど、あまりに誕生日のリッキーに悪いと思って済ませて来ました」
潤が答えると、リッキーがいたずらっ子のような顔で言う。
「正宗、さっき田嶋さんが綸ちゃんを口説いてた」
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